レオポルド・ブログ3
いよいよ毎日モーツァルト(アマデウス・ブログ参照)も大詰めになり,今週は今日「クラリネット協奏曲 K.622」をやって,明日からは最後の曲「レクイエムニ短調 K.626」となる(「フリーメイスンのための小カンタータ K.623」は省略されるらしい 泣).レクイエムに入ってしまうとしんみりしてしまい,とてもレオポルド・ブログなんて言っていられなくなるため,本記事は12月18日中にアップすることにします.レオポルド・ブログ完結篇です.
レオポルド・ブログ
1785年3月28日
ウィーンにて
息子のヴォルフガングから,是非一度来てくれとの誘いがあったものですからやってきたわけです.あの子の結婚には反対しましたが,私にとってはたった一人の息子だし,私も年ですから旅ができる体力があるうちにあの子に会っておきたかったんです.1月下旬にザルツブルグの家を発って,ミュンヘンに一週間滞在した後,先月11日にウィーンに着きました.
息子の家は町の中心,シュテファン教会の近くという一等地にあります.部屋数も多く,家具も立派なのが揃っていました.なんでも家賃が460フローリンというから驚くじゃありませんか,ザルツブルグの私の家の家賃が90フローリンなのに.あの子の羽振りがかなりいいらしいことはよくわかりました.
着いたその日の夜には,早速あの子の予約演奏会があり,私も出かけてきました.新作のピアノ協奏曲やアリアなどが演奏されたのですが,演奏は素晴らしいし,会場は超満員!しかも参加した面々はみな有力な貴族ばかりです.演奏が終わった後には,それらの人たちが私のところにやって来て口々に息子のことを褒め称えるのです.とても嬉しかったのですが,反面ちょっと恥ずかしい感じもしました.
でもね,もっと嬉しかったのは翌12日のことですよ.この日の夕方に,有名なヨゼフ・ハイドン氏が訪ねてきて,私と一緒に息子の新しい弦楽四重奏曲を鑑賞したんですが,その席上ハイドン氏が「誠実な人間として神の御前に誓って申し上げますが,ご子息は,私が名実ともども知っているもっとも偉大な作曲家です」と言ってくれたんです.社交辞令半分としても,天下のハイドン氏にこんな風に言ってもらえるなんて,父親として涙が出るくらい嬉しかったです.
ザルツブルグ時代と違って,ここでのあの子はとても生き生きしていて,本当に人生を楽しんでいるという感じがします.嫁のコンスタンツェも結構いい娘だし,夫婦仲はとてもうまく行っているようです.昔は私も息子がウィーンに出ることや,結婚することに反対しましたが,今にして思えばこれで良かったのかもしれません.
ただ,心配なこともあります.あの子は今,ここウィーンでフリーの作曲家として活躍していますが,それが出来るのはウィーンが自由な街で,特にハプスブルグの皇帝ヨゼフ2世陛下が寛容な方だからです.でも陛下に万一のことがあったり,政治的な混乱が起これば,フリーの音楽家なんて真っ先に吹き飛ばされてしまう存在です.現に隣国のフランスではなにやらきな臭いウワサも聞こえてきますし,出来ることなら,どこかに定職を見つけて腰を落ち着けて欲しいものです.
私も年をとったせいか,最近すっかり愚痴っぽくなってしまいました(笑).来月にはザルツブルグに戻るつもりです.この記事を読んでくれた皆さん.これからも息子ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトを末永く応援してあげて下さい.
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