2026年2月18日 (水)

当地の防蚊スプレー

 今日は当地のドラッグストアで防蚊スプレーを購入しに行ってきました。

 ナミビアは国土の大半が砂漠で、基本的には非常に乾燥している国です。ですから蚊や蠅などの有害昆虫が少なく、こうした虫に媒介される感染症(マラリアやデング熱など)も少ないというありがたい土地柄です。ただ、雨季にはある程度まとまった雨が降ることと、近年の異常気象の影響もあって降水量も増えており、北部を中心とした地域では蚊の発生もそれなりにみられるようになってきました。そうした地域に出かけることがあるのと、首都でも蚊が増えている現状から、防蚊スプレーを購入しようとなったものです。

Img_7503  日本ではKINCHOやアース製薬のものが有名ですが、残念ながら当地にはないため、南アフリカ製の同様成分のものを購入しました。人体にかけて虫よけに使うもの(主成分はDEET)、部屋にプッシュするものがあるのは日本と同じです。

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2026年2月10日 (火)

子宮頸がんのイベント

Shikyugan  先日、当地の国立図書館で開催された子宮頸がんイベントに参加する機会を得ました。

 アフリカ南部に位置するナミビアはもともとHIV感染率の高い国で、従来はHIV関連によって多くの国民が死亡していました。そのほか結核などの蔓延もあって平均寿命が60年未満と、日本とは比較にならない短命な国でした。しかし近年HIV抑制キャンペーンが展開されたことや、治療薬の入手が容易になってきたこともあって国民の平均寿命が延び、特に女性のそれは60代後半にまで達しています。

 その結果何が起こったかというと、死因に占めるがん等悪性新生物の症例数が無視できない数になってきたのです(がんは年齢が上がれば上がるほど頻度が増えるため)。当地の女性のがんの1位が乳がんで2位が子宮頸がんとなっており、近年はナミビア政府もこれらの対策に力を入れるようになっています。今回参加した子宮頸がんイベントには当地の医療関係者やWHOなど国際機関関係者等120人以上が参加しました(多くはオンラインで現地参加は30人強)。

 内容としては予防と早期発見、早期治療の重要性が強調されていました。子宮頸がんは性成熟前のHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種による予防効果が知られており、まずはこれを広めて周知することが重要です。ただワクチン忌避の考えをする人はこの国にも多く、「娘がワクチン接種を受けると不妊になる」、「アフリカ人の人口抑制をもくろむ陰謀だ」などの噂を信じる大人がいる現状です(日本でも2010年代に一部医療関係者とマスコミによる科学的根拠に基づかない反ワクチンキャンペーンにより、接種が停滞したという過去があるので人のことは言えません。おまけに当時反ワクをあおっていたメディアが、しれっと”日本におけるHPVワクチンの接種は欧米立ち遅れている”などとおまゆう状態なのは怒りを通りこして呆れるしかありません)。

 早期発見についてはVIAと呼ばれる酢酸を局所に塗布することで簡易的に早期発見を目指す方法があり、これは当地でも広く行われていますが、WHOなどではより高精度な検査法の普及を求めている状態です(当たり前ですが高精度の検査法は専門的な人員と費用も余計にかかります)。一方で疾患に対する偏見や羞恥心などから検診に消極的な国民も多く、ナミビア国内の子宮頸がんの40%は進行がんの状態で発見されるため、予後が悪いのが現実です。子宮頸がんに限りませんが、がんは発見が遅れれば遅れるほど治療にかかる人的経済的負担が大きくなる一方で、生存率は低くなります。このため早期発見(さらに可能なら予防)が大切になるわけですが、それには人々への啓もう活動が第一というわけです。

 非常に興味深いイベントでした。

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2026年2月 3日 (火)

2026年節分

 今日2月3日は節分です。二十四節気の一つである立春の前日という節目の日ということでその名があります。なので本当なら立春以外の立夏、立秋、立冬の前日も全て節分なんですが、世間で言う節分はもっぱら立春前日のものを指しています。

 節分といえば豆まきが有名ですが、これは季節の変わり目には邪気(鬼)が生じるため、これを退治する目的で行われるものとされています(「鬼は外、福は内」など)。今でも各地の神社やお寺などで節分には豆を撒く習慣があります。現実社会でも立春前の時期は1年で最も寒く、インフルエンザなどの感染症が流行する時期なので、この「邪気を払う」というのは理にかなっていると言えます。

 日本とは四季が逆になる南半球では、この日は立秋の節分となるわけですが、当地の保健省からマラリア流行のメディアリリースが出ました。ナミビアは基本乾燥した国なので、周辺諸国に比べるとマラリアは少ないと言われるのですが、雨季にあたるこの時期は特に北部地方で蚊(ハマダラカ)が発生するためそれなりに流行します。以前は年間1~2万人とされていましたが、昨年は雨季の雨が多かった影響からか、5万人以上の患者が発生しました。ただ今回の発表によると2026年第1週から第4週までの間の症例数が8760人と昨年同期(5229人)の1.7倍に増加しています。首都ウィントフックでの発生は稀なので身近に感じることは少ないのですが、注意が必要です(たしかに最近は蚊が多くなったと感じる)。

626197464_1202595968731401_3195595561935 627046021_1202595975398067_5455376627991  そんなことを考えた2026年の節分でした。

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2026年1月26日 (月)

新しいAEDが届きました

 先日職場に新しいAEDが届きました。ただバッテリーは入っていません。なぜかというと、バッテリー(リチウム電池)は発火の恐れがあるため飛行機に預けることができないからです。人間が手荷物として持っていくが当地で購入するしかありません。

Img_7478  と言うことで当地の代理店に注文していたものが届きました。

 さっそく装着します。装着すると「テストを行います」とのアナウンスが流れて確認開始、数分で一通り終了です。あとは所定の場所に設置しておきます。これが使われずに使用期限切れになるのが最もありがたい展開ですが、そう願ってやみません。

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2025年12月16日 (火)

伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型

 ポリオという病気があります。日本語では急性灰白髄炎といい、かつては小児麻痺という呼び方もありました。前者は病巣が主に脊髄の灰白質にあること、後者は主に小児に罹患し一定確率で運動麻痺の後遺症が残ることに名前の由来があります。原因はポリオウイルスで主に経口感染し、発症した場合の特異的な治療法はなく、ワクチンによる予防が強く推奨されています。日本でも1960年頃までは多くの症例がいましたがワクチンの普及によって症例数は激減しました(現在も小児期の定期接種に組み込まれている)。

 このポリオワクチンには経口生ワクチン注射型不活化ワクチンという2つのタイプがあります。経口生ワクチンは弱毒化したウイルスを経口投与するもので、非常に安価で投与しやすいというメリットがあります(飲ませるだけなので注射器や針などの道具も不要)。一方で弱毒化したとはいっても生のウイルスを用いるため、ごく稀ではありますがワクチン由来のウイルスが感染性を獲得して、未免疫者を発症させることがあります。一方の不活化ワクチンは高価ですが、そういう問題はありません。なので一般的にはポリオがまだ流行している地域では生ワクチンを、ほぼ撲滅できた地域では不活化ワクチンを使う傾向があります。ちなみに日本では野生型のポリオは1980年を最後に出ていない他、ワクチン由来ポリオも2014年以来症例がありません。さらに2012年以降は不活化ワクチンに切り替わっているため、今後日本国内で新規のワクチン由来ポリオウイルスが発生する可能性はありません(輸入例はありうる)。

R(写真1)ポリオウイルス

 日本では撲滅状態にあるポリオですが、世界でも撲滅に向けて努力がなされており、現在野生株のポリオがあるのはパキスタン、アフガニスタンの一部に限られています。一方で最近問題になっているのが生ワクチン由来のポリオウイルスです。生ワクチンの特性上発生率をゼロにはできませんが、地域の集団免疫がしっかりしていれば大きな問題にはなりません。しかし接種者の減少などで集団免疫が低下すると、こうしたウイルスによる流行が起こることがあります。アフリカ地域は以前からそうしたワクチン由来ウイルスが問題となっていましたが、近年イスラエル、カナダ、米国といった医療先進国での出現が報告され世間に衝撃を与えました。

597470305_1164751382515860_8949354745996(写真2)ワクチンキャンペーン

 私のいるナミビアでも最近北部のアンゴラとの国境に近いルンドゥという待ちの下水から、この伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型が検出されたという話題が出ました。隣国アンゴラでは以前から問題となっており、陸の国境を有し、人々の往来もそれなりにあるこの地域での検出は驚くことではありません。ただ幸いまだヒトに感染した例は報告されていません。一方でこれを受けてナミビア政府は同地域の10歳未満の子供に対するワクチン接種キャンペーンを始めたようです。

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2025年5月22日 (木)

第19回国際旅行医学会②

Img_5276(写真1)学会の受付

 前の晩は早く寝たんですが、時差ぼけもあるため夜中に目が覚めてしまいました。ただ頑張って寝直して結局起きたのは朝6時です。身支度をして会場である向かいのヒルトンホテルに入ります。受付で登録時のメールのコピーを出すと係員がネームプレートを印刷してくれました。このプレートを首にかけると、会場内どこでも自由に歩き回れます。会場を見渡すと国際色豊かなのですが、旅行医学という特性上、自国民を海外旅行に送り出している国の人が多い印象です。地元アメリカやカナダ、オーストラリア、英国といった英語圏、フランス、ドイツ、そしてアジアでは日本のほかタイの方が多い印象を受けました。

Img_6018_20250602200601 Img_6125_20250602203301(写真2,3)会場の様子

 会場は巨大なメイン会場と4つの中会議室で開催されます。こうした学会では良くあることですが、同時進行で複数のシンポジウムやワークショップが開催されます。興味があるテーマが同時間帯に重なると悩むんですが、なるべく日本では聴けないようなシンポジウムを中心に選択しました。狂犬病や黄熱といった感染症はもちろんとても重要なのですが、こうした話題は日本の学会でも取り上げられます。今回国際学会だなぁと感じたのは以下のテーマでした。

① Wander Woman(彷徨う女性): 女性旅行者特有の問題について、尿路感染症や性感染症、妊娠など。

② Human Trafficking(人身売買): 特に途上国における子供や女性の誘拐、人身売買の話題。

③ Dark Tourism(ダークツーリズム): 歴史的に負の事件が起こった場所等を巡る観光について。

④ Street Food(ストリートフード): 観光地における屋台などでの飲食のリスクについて。

 もちろんこれらのシンポジウムには優先的に参加したことはいうまでもありません。そのほか会場であるニューオリンズの過去の感染症との戦いや旅行者下痢症、住血吸虫などの寄生虫症の話題も印象深かったです。

Img_5574 Img_5628(左写真4)おやつセミナーのカウンター、(右同5)とある朝のモーニング

 そして学会と言えば、ランチョンセミナーも欠かせません。協賛企業が軽食を提供して行われるセミナーです。日本だと幕の内弁当とお茶が定番ですが、こちらではサンドイッチ(のようなもの)とコーヒー、紅茶でした(どの日もメニューに大差がないので全日は食べませんでした 笑)。

 そのほかポスターセッションは時々意外なものが見つかるので個人的には注目しているところです。ただ数が多いのと、英文であることから写真を撮ってこれから解析するところです。

Img_6092 Img_5279(左写真6)ポスターセッション、(右同7)協賛企業のフロアー

 そして最終日、最後のセッションは旅行をテーマにした物語について、今回は2つの作品を取り上げ、著者によるプレゼンが行われました。会場では著書の販売もあり、流れで自分も購入しました。その後の閉会式では、次回2年後の2027年に会場となるタイの紹介が行われました。うーん、また参加できるといいなと思ったのでした。

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2025年5月20日 (火)

南半球のインフルエンザワクチン

 職場でインフルエンザワクチン接種が始まりました。

 「ん?なぜ今頃」、という声が聞こえてきそうです。

 日本ではインフルワクチンの接種は大体10月から11月にかけて行われるのが一般的です。これは流行が12月から年明けにかけて起こるため、その1~2ヶ月前に接種するようになっているからです(ワクチンは接種してから効果が出るまで3~4週間かかる)。一方当地は南半球にあり日本とは季節が逆になるため、これから流行シーズンを迎えるのです。

Img_6164  そんな当地で使用されるワクチンがこちら、Abbott社という米国の世界的な製薬会社によるINFLUVAC TETRAという製品です。インフルエンザの流行株は毎年変化するため、ワクチンはその季節に流行しそうな株を予測して作られています。このため流行時期が半年ずれる北半球と南半球では予想株が微妙に異なるため、世界規模の会社のワクチンの場合北半球と南半球では異なるバージョンが用意されるのです。写真のワクチンは2025年南半球バージョンということになります(ちなみに現在日本で主流のインフルワクチンはA型2種、B型2種の計4種を含む4価ワクチンですが、こちらはA型2種、B型が1種の計3種の3価ワクチンなのでTETRAと付いています)。

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2024年12月18日 (水)

コンゴ民主共和国の重症感染症

 今月上旬にアフリカ中部コンゴ民主共和国(以下コンゴ(民))でインフルエンザ様の症状をを示す原因不明の感染症が流行し若者を中心に死者が出ているというニュースがありました。

 コンゴ民主共和国 インフルエンザ似た原因不明の病 約80人死亡

 現地当局やWHOが協力して原因の究明に当たっているとのことでしたが、本日コンゴ(民)の保健省が原因は重症マラリアであったと発表したようです。

 Congo's health ministry says unknown disease is severe malaria

Ka  マラリアはハマダラカによって媒介される原虫によって発症する感染症で、サハラ以南の赤道付近アフリカでは以前から大勢の感染者が出ている深刻な感染症です。一般には高度な発熱、悪寒、頭痛を呈しますが、咳などの呼吸器症状は典型的ではありません。今回は呼吸器症状が前面に出たため、インフルエンザ様とされたと思われます。こうした感染症は典型的な症状はあるものの、陰性症状(この症状があれば逆にこの疾患は否定できる)は無いと考えた方がいいので、こうした感染症を疑う症例を診た場合はあらゆる可能性を排除してはいけないと改めて感じました。

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2024年12月17日 (火)

デリーの大気汚染

 最近インドのデリーの大気汚染がひどいという話を聞きました。どのくらいひどいんだろうと思って、そうしたアプリで調べたところ、なんと!

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AQIが4桁の場所があります!

 大気汚染を表す指数として近年使われているのがAQIです。Air Quality Indexの略で日本語では大気質指数と呼ばれています。空気中に含まれる様々な有害物質(オゾン、PM10、PM2.5、一酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化窒素)の濃度を指数化したものです。指数は有害物質によって違いがありますが、おおよそ

50未満   問題なし

51~100  非常に敏感な人は注意

101~150  心疾患や喘息がある人は注意

151~200  心疾患や喘息のある人、子供、高齢者はかなり注意

201~300  上記の人は屋内避難、それ以外もかなり注意

301~500  全員屋内避難

 となっています。ひどいところでもせいぜい300から500程度までしか想定していないのですから、4桁というのがいかに異次元なものか分かると思います。現地に在住している方の話では、事務所のドアや窓を閉めきって空気清浄機をフル回転させてようやくAQI200程度とか、会議の際は全員N95マスク着用が呼びかけられているとのことです。SNS上の知り合いの方によると、デリーには市内あちこちにゴミ溜め場があり、時々そこが燻って不完全燃焼した煙が発生しているという話を聞いたので、冬季という時期的要因にそうした環境要因が加わって、この恐ろしい数字になったのかと推測しています。ちなみに私のいるウィントフックは79、実家のある盛岡市北部は44のようです。

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2024年8月21日 (水)

Mpox

 アフリカでは今、Mpoxが話題になっています。これは以前サル痘と呼ばれていた感染症のことです(実際には主に感染する動物がげっ歯類だということがわかり、名が体を表さなくなったことや、罹患者に偏見を抱かせかねないということで、現在ではMpoxの名称となっています)。ポックスウイルス科のオルソポックスウイルス属の一種で、昔怖い感染症として知られていた天然痘ウイルスの仲間です。日本でも何年か前に海外から持ち込まれ実際に症例が発生したことで知られています。おもな症状は発熱、頭痛に加えて特徴的な発疹が全身に現れることです。これらは天然痘に類似した症状ですが、天然痘に比べると毒性や感染性は低く、致死率も低いとされています。

 Mpoxにはコンゴ盆地由来の株(グレード1)と西アフリカ由来の株(グレード2)があります。以前世界的に広がったものはグレード2だったのですが、今回問題になっているのがグレード1によるものです。これはグレード2に比べると毒性や感染性が強いとされています。昨年以降アフリカ中部のコンゴ民主共和国で多数の症例が報告され、その後周辺国でも症例報告が増えてきていることから、今回アフリカCDCやWHOが「公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。Mpoxは天然痘に比べれば毒性は低いとされていますが、今問題になっているグレード1は致死率5%程度と決して無視できる数字ではないことと、アフリカ地域で蔓延しているHIVとの絡み(HIVで免疫不全状態になっているところにMpoxが感染すると致死率が一気に上がる)で問題になっているわけです。

456570332_8033581353405826_3587566798149  私のいるナミビアでは今のところ感染例は報告されていませんが、SNSでは当地の主要英字紙の名を騙ったアカウントが「100例以上の陽性者が!」などと投稿し、これに対して当地の保健省が「これはフェイクニュースです」と否定コメントを出すなどの騒ぎになっています。日本でも感染症や災害の時にSNSのフェイク情報が問題になりますが、世の東西を問わないようです。

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