今日2月23日は今上陛下の誕生日で日本では祝日になります。一方この日はバロック時代を代表する作曲家,G. F. ヘンデルの誕生日でもあります(平成年間まではもっぱらこちらで注目していました)。ヘンデルは1685年の2月23日今のドイツの東部にあるハレという町で生まれました。同年生まれのJ. S. バッハは音楽一家でしたが、ヘンデルの家はそうではなく、彼の父はわが子に法律を学ばせようとしたようです。大学にまで入学しましたが、ヘンデル自身は法律よりも音楽に興味があったようで、父の反対を押し切って音楽の道に進むことになります。
そんなヘンデルのオペラ作品でよく知られているのが、歌劇「クセルクセス」でしょう。クセルクセスとは古代のペルシャ戦争期のペルシャ王の名前です。この作品の冒頭に登場するクセルクセスによるアリアが非常に有名な「Ombra mai fù(オンブラマイフ)」です.この曲は一般にソプラノによって歌われる機会が多いのですが、実は役柄であるクセルクセスは男性です。男性のアリアをどうしてソプラノが?と思いますが、これは「アリアは華やかでなければならない」という当時の風潮に原因があります。より高音の方が華やかだということで、当時は少年期に去勢することによって、成人してからも変声期前の声質で歌える男性歌手がたくさんいたのです。こういった歌手をカストラートといい、彼らは女性の音域の声を持ちながら、男性並みのスタミナとパワーで歌うことができました。人権云々が叫ばれる現代では再現できない歌手といえます。このアリアを歌うクセルクセスもカストラートの役柄だったわけです。
これはWindhoek Männerchorという男声合唱団主催のコンサートで、これにLet's Sing Vocal Ensembleという合唱ユニットが共演する形のものです。日本にいた頃から合唱を趣味の一つとしていた私ですが、こちらではそうしたイベントが少ないため、このコンサートの存在を知った際に是非行ってみようと思った次第です。ちなみにMännerchorは日本ではメンネルコールと発音され、○△メンネルコールなど、この名前をを冠した合唱団は数多くあります(当たり前ですが全て男声合唱団)。
時間になり開演、まずは主催者の挨拶から。主催合唱団Windhoek Männerchorは当地のドイツ系の人々がやっている団体のため、基本的にドイツ語です。今回はフルートとバイオリン、トランペットも参加していました。演奏曲目はドイツ民謡をはじめとしたドイツ語の曲が中心です(指揮者の方がアレンジした作品が多かった)。途中「みんなで歌おう」という企画があり、主としてドイツ民謡でしたが、知っている曲もあって良かったです。前半の締めに共演団体のLet's Sing Vocal Ensembleが参加して合同演奏、ビゼーのカルメンからいわゆる「ハバネラ」と呼ばれる部分を合唱に編曲したものでした。
休憩を挟んだ後半はLet's Sing Vocal Ensembleのステージ、ここは男女9名のユニットでイメージとしてはThe Swingle Singersを意識しているかもしれません。選曲はポップス系やナミビアの民族音楽など幅広い作品を扱っているようでした。最後は再び合同演奏で締められて終演となりました。コンサートというもの自体が久しぶりだったため新鮮な気分で家路につきました。
最近のコメント