プリンプリン物語
今NHK地上波で毎週月曜日に再放送されている人形劇「プリンプリン物語」、昭和54年4月から3年間にわたって放送された当時人気の高かった作品です。しかし当時は放送用ビデオテープが高価で、放送が終わったら上書きしての再使用が普通だったためにNHKには当時の映像が遺っておらず、再放送が困難な作品でした(これは本作に限らず当時のNHK作品一般にいえます。一方で同時代の「ルパン三世」など民放アニメは地方局への貸し出しによる再放送など、当初から放送機会が多かったことから消されず遺っていました)。当時は家庭用ビデオデッキがあまり普及していなかったこともあり、長年人気はあったのに再放送不可能な作品の代表とされていました(3年間合計600回以上という長大さも影響していると思われます)。
しかし関係者からの寄贈等によって、現在ではほぼ全ての放送回が発掘されています。これをうけて2017年にBSで第1回から第50回まで(アルトコ市編~オサラムームー編(前半))の再放送が行われました。そして今年の4月から当時人気の高かったアクタ共和国編の再放送が始まっています。私は現在国外在住のため、NHK本編は視聴できませんが、NHKプラスやオンデマンドで視聴しているというわけです。
で、このプリンプリン物語の再放送を見始めた時、ひとつの疑問が沸きました。それは
「プリンプリンが何処かの国のプリンセス」という設定を劇中の誰も疑っていないという点です。
子供の頃は気になりませんでしたが、大人になって考えるとこれは妙です。というのは、プリンプリンがプリンセスだというのは、あくまでも彼女の自称であり、それを裏付ける証拠はないからです。劇中では15年前に海で発見された際に王冠が一緒に入っていたからということですが、これが証拠になるとは思えません。15年前にアルトコ市が「行方不明のプリンセスに心当たりのある国は至急連絡を!」と呼びかけたにもかかわらず、どこからも照会がなかったのですから。もちろん、友達であるボンボン、オサゲ、カセイジンがそれを信じているのはいいのですが、無関係な一般人には「ちょっと、この娘何を言ってるんだろう」と引いてしまう人がいてもおかしくないと思います。
しかし劇中ではそんなことはありません。プリンプリンが訪問する先々で一般人はもちろん、政府首脳も「プリンプリンはプリンセス」という認識で一致しています。これはどういうことなのでしょうか? と、そこで思いついたのがランカーの存在です。
ランカーは世界を股にかける武器商人で、世界お金持ちクラブの会長でもある世界的に有名な人物です。各国の首脳とも交流があります。プリンプリンは死の商人としての彼を嫌っていますが、慈善事業などもやっていることから世間的には良い人と認識されているようです。現代でいえばイーロン・マスク氏や孫正義氏、ビル・ゲイツ氏を合わせたような感じでしょうか。そんなランカーがことあるごとに「プリンプリンはプリンセス、丁重に扱え」というのですから、世界中の人がそれを信じるのは当然なわけです。すなわちプリンプリンがプリンセスであるということを皆が疑わないのは、ランカーがそれを保証しているから(「あのランカーさんがそう言うんだから、事実に違いない」)、と考えられるのです。
紙幣は物質的にはただの紙切れですが、国家が保証することで価値が生まれます。同様にランカーが保証することでプリンプリンはプリンセスの地位を保証されているともいえるわけです。彼女が一番嫌っているランカーによって、自身の身分保障がされていると考えるのも面白いなと思ったのでした。
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