2017年1月11日 (水)

新元号は?

 昨年以来政治的に話題になっているものに天皇陛下の譲位の問題があります.

 天皇の譲位は古代からたくさん例があるので,たとえ前例主義に固まった役所でもその点では問題になりません.問題なのは法律的な裏付けの方で,現在の日本国憲法も皇室典範も天皇の生前退位を想定しないからです.特に日本が法治国家となった明治22年以降,皇位の継承は天皇の崩御の場合に限るとなっています.生前退位に関しては明治の旧皇室典範制定の際に議論になったといわれています.しかし最終的には皇室典範には盛り込まれませんでした.これは譲位の規定を作った場合,実力のある臣下によって皇位が政治的に利用される可能性があります.それゆえそういった厄介な問題の種を排除したかったと思われます(平安時代の摂関政治など).その一方で,昔は平均寿命く,高齢で公務に支障をきたす事態が考えられていなかったこともあるでしょう.いずれにせよ今後国会等で議論がなされると思います.

 で,昨日譲位に伴う改元の話題が出ていました.

 19年元日に新天皇即位、元号は半年前までに

 日本では国際的に使われている西暦の外に元号が存在します.これに関しては元号法という法律の規定があり,その第2条によると,皇位の継承の際に元号の変更が行われることになっています.これまで皇位の継承は天皇の崩御の場合に限定されていましたから,元号の変更もそれに合わせて行われました.崩御の時期は誰にも読めませんから,元号の変更も緊急に行われるのが常でした.

 しかし今回はあらかじめ皇位の継承が予定されることになるため,事前に次の元号が周知されることになるようです.カレンダーや手帳を作る会社に配慮しているのかもしれません.

 で,その新元号,自分的には「光文」だったら面白いなと考えています.光文は大正から昭和への改元の際に,東京日日新聞(今の毎日新聞)がやらかした誤報事件で登場した幻の元号です.実は宮内庁(当時宮内省)が用意した候補に光文はなかったらしいんですが,「本当は光文だったが,毎日のスクープに腹を立てた宮内省が昭和に変更した」という都市伝説も出るなど話題になったお話です.さらには眉村卓さんのSF「名残の雪」を原作にしたNHKの少年ドラマシリーズ「幕末未来人」では,歴史が徐々に変わってしまい,劇中慶応の次の元号として公示されたのが光文でした.

 このように非常に思い出深い幻の元号が光文でした.

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2016年12月20日 (火)

選挙人の裏切りその後

 報道によると,去る12月19日に全米各地で来年の1月に就任するアメリカ大統領選挙の本選が行われ,ドナルド・トランプ氏の当選が確実になったようだ.

 ドナルド・トランプ氏、大統領当選が正式に決まる

 以前ここにも書いたように,アメリカ大統領選挙というのは直接選挙ではなく,国民によって選ばれるのは特定の大統領&副大統領コンビに投票予定の選挙人であり,この選挙人の投票によって大統領が選出される形式をとっている.なので,先月8日に行われた選挙の結果はあくまでも,トランプ氏に投票を予定している選挙人が本番の選挙で当選するのに必要な人数を越えたということに過ぎない.この選挙人はもちろん,特定の候補者に投票することを宣言して出ているわけだが,実は彼らの投票行動を縛る法律は存在せず,仮に宣言していた人物以外に投票したとしても法で裁かれることはないらしい(あくまでも各人の良心に期待されているということのようだ.ただし法的にはフリーでも,選挙人を出した政党内での処分はあり得る模様).

 そういう状況であるから,選挙人が裏切って反対陣営の候補者に投票するなんてことも理屈の上ではありうることになる.私はこれを選挙人の裏切りと呼んでいるが,もちろん過去に選挙人の裏切りによって,国民の投票行動と異なる大統領が誕生した例はない.

 ただ,今回の大統領選挙に関しては,様々な発言等で話題となったトランプ氏が当選しそうだということで,俄然この選挙人の裏切りがクローズアップされていたわけである.例えば選挙後,なにか決定的な大スキャンダルや大失言が飛び出し,国民世論が選挙人の裏切りもアリだ(いや裏切ってくれなきゃ困る)なんて雰囲気になる可能性も想定されていたからだ.それを意識してるのかは不明だが,11月8日以降のトランプ氏は従来の過激発言を封印し,比較的無難な行動を取っていた(Twitterなどでは時々従来の主張をすることもあるようだが).

 結果,今回の本選挙ではトランプ氏が無事に大統領に選出されたということである.ちなみに選挙人の裏切りであるが,別の報道によると今回は7人の選挙人が本来とはことなる投票行動をしたらしい.ただしその内訳は共和党2人に対して民主党5人ということで,トランプ氏を裏切った選挙人よりもクリントン氏を裏切った選挙人の方が多かったということである.

 それにしても,アメリカ大統領選挙の本選(選挙人による投票)なんて,これまでの大統領選挙だったらニュースにもならなかったが,今回話題として取り上げられたのもトランプ効果なんだろうなと感じたのだった.

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2016年11月 9日 (水)

アメリカ大統領選挙2016

 2016年11月8日(日本時間同9日),4年に一度のアメリカ大統領選挙が行われ,共和党のトランプ候補の当選が確実になったらしい.日本のテレビなど各種メディアでも盛んに取り上げられているようだ.

 下馬評では民主党のクリントン候補が優勢と伝えられていただけに,この結果を受けて為替や株では結構動きがあるらしい.

 選挙結果云々はこのブログの管轄外なので深くは触れないが,自分の率直な印象としては,「クリントンさんって本当に嫌われてたんだなぁ」の一言に尽きる.

 選挙期間中を通してメディアの多くはトランプ氏に批判的だった.過去のあまり上品とは言えない発言や直前に飛び出したセクハラ騒動など,普通ここまで叩かれたら立ち直れないだろう(日本で言えば兵庫県の号泣県議なみのいじられ方だ)という状況にありながら,結局ふたを開けてみたら当選しちゃったんだから.アメリカの有権者にしてみたら,そんなボロボロのトランプ氏でもクリントン氏よりもマシということなのだから,いかにクリントン氏がアメリカ国民に不人気だったかがわかるようである.

 選挙期間中いろいろと過激な発言で騒がれたトランプ氏だが,アメリカ大統領というのはロシアの大統領や中国の指導者とは違って,議会の同意が得られないと勝手なことはできないようになっているので,これから突然トンデモナイ事態になるとは思えないが,注目していきたいと思う.

 日本に対する影響だが,仮にクリントンさんが当選した方が風当たりが強くなりそうだと思っていたので(1990年代の夫クリントン大統領時代に日米関係はかなりギクシャクした),案外トランプさんの方がうまくやっていけるかもしれない(基本的には共和党政権の方が日米関係は安定するが,今回はかなり特異なキャラなので,これから選ばれるだろうホワイトハウスの大統領補佐官や閣僚人事と議会共和党の動きに注目である).

 ただ正確を期すと,今日を持ってトランプ氏が大統領に当選したというわけではない.アメリカ大統領選挙というのはかなり変わったシステムを取っており,国民が選ぶのは大統領ではなく,大統領候補に投票する選挙人だからである.今回の選挙の結果明らかになったのは,今後行われる(本番の)大統領選挙において,トランプ候補に投票する予定の選挙人の人数がクリントン候補のそれを上回ったということにすぎない.なので本当の結果は来月の大統領選挙本番になるまで確定しない.あくまでも可能性とすれば,トランプ氏に投票する予定の選挙人が裏切ってクリントン氏に投票するなんてこともあり得るからである.過去の大統領選挙において,選挙人の裏切りで当選者がひっくり返った例はないのだが,選挙人裏切り自体は例があるらしい.なにかと発言や行動が話題なトランプ氏だけに,これからの1か月間に決定的なスーパー・ウルトラ・大スキャンダルが発生すれば,選挙人が大挙して裏切るなんてこともあるかもしれない.そんな意味ではまだまだ油断ができないアメリカ大統領選挙である.

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2016年8月15日 (月)

終戦の日に思う

 今日8月15日は終戦の日である.当ブログは基本的に政治的な話題を取り扱わないのであるが,この8月15日だけは時々そうでないこともある(笑).というわけで今日は政治の話題.

 今日このようなニュースが出ていた.

 学生団体「SEALDs」きょう解散

 昨年夏,ちょうど安保法制に関する法案の国会審議がなされていた頃に,同法案に反対することを主張する学生たち(たぶん)によって結成された団体である.同年秋の法案成立後も現政権に対する対決姿勢を継続し,改憲阻止のためとして野党共闘を主張していた.それが今日解散するということである.

 彼らの活動が成功だったのか失敗だったのかといえば,安保法制が成立し参議院選挙も与党側の勝利に終わった結果から見れば失敗だったと言わざるを得ないだろう.野党共闘に一定の成果をあげたという声もあるようだが,彼らがいたから野党共闘が成立したと言えるのかは疑問である.

 では彼らの失敗の原因はなんだったのだろうか.まず思いつくのは彼らの発言に品がないことである.正直言って彼らの言葉遣いは汚い.政権が嫌いなのはいいのだが,仲間内の飲み会ならいざ知らず,公衆の面前で汚い言葉で相手を罵る様子は,共感を呼ぶどころか,逆に違和感と嫌悪感しか感じなかった.彼ら自身は「自分たちの主張が正しければ言い方は問題ではない」,「むしろ自分たち自身の言葉をストレートにぶつけた」という認識なのかもしれないが,やっぱり言葉遣いが悪い人の話をまともに聴こうという気分にはならない.

 第2は彼らの主張に論理性が感じられなかったことである.安全保障という極めて重要な重要なテーマにも関わらず,安保法=戦争法と単純化し,法案が成立すれば戦争になる,徴兵制になるといった主張は論理というよりもただ思いついたことを発言してるようにしか聞こえなかった.

 ただ自分がそう感じるのは自分自身がオッサンだからかとも思っていたのだが,先日の参議院選挙における10代の有権者の投票行動(他の世代に比べても与党の支持が高く,野党への支持が低い)を見る限り若い人たちの多くも自分と同じように感じていたようだ.一部マスコミでは彼らを若者の代表であるかのように持ち上げていたところもあったが,選挙結果等からはどうもそうではない実態が見て取れる.

 そんな彼ら,今日解散に当たって「市民が立ち上げる政治は、ようやく始まったばかり。この動きを末永くねばり強く続けていく必要がある」などとするコメントを発表したらしい.市民が立ち上げる政治というものがどういうものなのかは不明だが,彼らの行動で分かったことは,「感情のままに発言し,一部メディアがそれを持ち上げても,大衆の支持は得られない」ということであろう.

 それは今に始まったことではなく,そういう世間の反応は1960年~70年代のいわゆる学生運動の時代から変わってはいない.当時の彼らも自分たちの主張が正しければ,やり方が強引でも正当化されるという感じだったが,結果世間から遊離しどんどんマイナー化していった.東西冷戦というまだ国際情勢が単純だった時代ですらそうなのだから,冷戦が終わって世界全体が内向きになる中,国家の利害対立が表面化しやすく,さらには国家を超えた組織によるテロなど新しい種類の脅威にさらされている情勢を考えれば,「安保法ができれば戦争になる」といった根拠の乏しい主張をただ垂れ流している彼らが世間の賛同を得られなかったことは必然だったのだろう.

 そんなことを考えた2016年8月15日だった.

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2015年4月13日 (月)

独自の戦い

 「独自の戦い」

 この表記を見てピンときた人は結構な選挙報道通であろう.この文言は,一般に当選する可能性が極めて低いと予想されている候補者(いわゆる泡沫候補)の選挙活動について触れる際のマスメディア(特に新聞)の決まり文句なのである.

 民主国家である我が国では,公職選挙法等に定められた例外規定(禁固以上の刑に処されて所定の年月が経っていない,年齢制限等)を除けば基本的には誰でも立候補ができることになっている.とはいっても,国会議員選挙や大規模な自治体の首長選挙(東京都知事選や政令市長選など)など有権者数の多い選挙の場合は,実際に当選するのは有力な政党の公認・推薦候補で,まったくの無所属やマイナー政治団体の候補者は,よっぽど本人に知名度がない限り当選は難しい.

 とはいえ,大都市部の国会議員選や東京都知事選など全国から注目される選挙になると,主要政党以外からもたくさんの候補者が乱立する傾向があり,たとえば2014年の東京都知事選には16人もの候補者が立っている.しかし,それらの候補の中で実際に当落線上で争うのは主要な数人だけであり,他の大半の候補者はほとんど得票を得られずに消えていくことになる(泡のように消え去ることから泡沫候補と呼ばれる).

 選挙報道というものは本来特定候補に偏らず公平であるべきなのだが,現実にはそうではない.たとえば選挙中に各紙に掲載される,「○△選終盤の情勢」なんていう特集記事でも,有力候補に関しては「○△氏は保守層に浸透」とか,「◆●氏は組織を何割固めた」といったように詳しく解説されるのに対して,泡沫候補については「▲×氏は独自の戦い」の一行で済まされるのがほとんどだ.この独自の戦いという言葉の言外には「選挙の主要争点とは離れたところで一人で活動している」的なニュアンスが感じられる.

 さて,こうした泡沫候補と呼ばれる候補者たちの中でも,まったく話題にもならない無名な人もいれば,ドクター中松のように,それなりに知名度があって,まったくの泡沫ともいえない人もいる.

 今日のニュースで,そんなそれなりに知名度のある名物候補だった三上誠一氏が亡くなったという話題が出ていた.

 「羽柴秀吉」の名で選挙に出馬…三上誠一氏死去

 青森県出身の三上氏は羽柴秀吉の名前で各地の選挙に出馬,最終的に当選には至らなかったものの,名物候補としてメディアでもそれなりの扱い(少なくとも晩年は「独自の戦い」の一言では片づけられていなかった)を受けていた.特に2007年の夕張市長選の時は主要政党がほとんど独自候補を出さなかったこともあって,当選の一歩手前まで行ったこともある.

 近年出馬のニュースを聞かないなぁと思っていたが,闘病のためだったということを今回の訃報で知ったのだった.

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2014年3月 3日 (月)

東京駅の歴史的場所

 今日3月3日は桃の節句です.ひな祭りなど華やかなイメージがある日ですが,一方で幕末期にはこの日に結構大きな事件が起こっています.

 まず安政元年(1854年)の3月3日には日本の開国の嚆矢ともいうべき日米和親条約の締結が行われました.また安政七年(1860年)の3月3日には江戸で時の大老井伊直弼が水戸浪士らの襲撃を受けて暗殺されるという大事件が起こっています(桜田門外の変).さらに慶応四年(1868年)のこの日には幕末の草莽隊のひとつである赤報隊一番隊の相楽総三以下が処刑される事件(いわゆる赤報隊ニセ官軍事件)も起こっています.特に桜田門外の変は時の最高権力者が白昼堂々と浪人に襲撃されるという,幕府としては前例のない不祥事であり,幕府の威信が著しく低下していることを世間に印象付けました.

 政府首脳の暗殺事件というと,世間に与える不安は非常に大きいものがあります.ちなみに日本の近現代史において,現職の総理大臣が暗殺事件に巻き込まれた例として,大正10年の原敬,昭和5年の濱口雄幸,昭和6年の犬養毅(いわゆる5・15事件)が知られています.このうち原敬と犬養毅は即日死亡,濱口雄幸は事件で重傷を負い後に死亡しています.

Pc110051(写真1) 東京駅丸の内口

 この3件のうち犬飼は首相官邸で遭難しましたが,のこりの2件の舞台はいずれも今のJR東京駅で起こっており,駅にはそのことを示す碑があります.先日用があったついで見学してきました.

 平民宰相と呼ばれた原敬が暗殺されたのは大正10年11月4日の夜でした.この日彼は立憲政友会の京都支部大会に向かうため東京駅を訪れそこで難にあったものです.犯人は当時大塚駅の職員でした.事件の起こった場所は,東京駅の丸の内南口にあります.

P3011382P3011383(左写真2) 原敬殉難の場所,(右同3) 事件に触れたプレート

 一方で濱口雄幸首相が襲撃を受けたのが昭和5年11月14日朝,同日から岡山県で行われる陸軍の特別大演習視察に向かう途中でした.犯人は右翼活動家の青年で,事件直後に逮捕されています.濱口の受難場所は今の新幹線中央乗換口付近になります.

P3011375P3011376(左写真4) 濱口雄幸受難の場所,(右同5) 事件のプレート

 大勢の人々が行きかう場所ですが,あまり知られていないのかプレートに注目している人はほとんどいませんでした.

P3011378(写真6) 事件の場所を示す印

 床には事件の起こった場所を示す印も埋め込まれています.

 そんな日本の近代史に思いを馳せた桃の節句でした.

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2013年1月28日 (月)

マリの情勢

 私にとって憧れの地の1つである西アフリカ,マリ共和国北部の町トンブクトゥ,元々政情が不安定な地域であり,ここも危機に瀕した世界遺産と言われていた時期が続きました.しかしながら21世紀に入ってやや情勢が安定化,それに伴いここを訪れるツアーもぼちぼち開催されるようになっていました.

Img_1818477_67544771_0(写真) トンブクトゥの泥のモスク

 しかしながらここ2年ほどの間に再び外国人の誘拐事件がおこるなど治安が急速に悪化,それに伴い旅行会社のツアーも開催されなくなっていました.それに追い打ちをかけたのが昨年4月に発生した武装勢力の決起によるトンブクトゥの陥落です.マリ政府自体がクーデターなどで混乱を極めていた時期の出来事であり,これを期に情勢はさらにひどいことになり,在マリの日本大使館も閉鎖,外務省の海外安全情報ではマリ全土が最高危険度の「退避を勧告します」になっていました(全土が退避勧告はソマリア並みです).

 こんな状況では,今後20年は渡航は無理じゃないかと思っていました.しかし今日のニュースによると現地の状況が大きく変わりつつあるようです.

 <マリ>政府・仏軍、世界遺産都市トンブクトゥを制圧

 先月以来マリや周辺国の要請で軍事介入しているフランス軍がトンブクトゥを奪回したというのです.武装勢力側の状況も不透明なため今後どうなるのかは予断を許さないのですが,ひとまずは収拾に向かってくれるのなら嬉しい話題です.

 とはいえ,トンブクトゥにあったイスラム教の貴重な史跡が武装勢力によって破壊されたという話もあり,街がどんなことになっているのか心配でなりません.史跡の破壊というとアフガニスタンのタリバンによるバーミヤンの大仏像の破壊が知られています.タリバンの方を持つ気はないんですが,これはとりあえず異教徒を敵視するという大義名分が言えますが,トンブクトゥの武装勢力は同じイスラム教徒です.イスラム教徒がイスラムの史跡を破壊するなんて,罰が当たらないのかと思ってしまうのでした.

 最近大きなニュースになっているアルジェリアの事件もこのマリ情勢と大きくつながっています.この地域の一日も早い情勢の安定化を願っています.

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2012年4月 2日 (月)

マリの政情

 旅行好きの私,行ってみたいところはそれこそ世界各地にあるんですが,その筆頭格に挙げられるのが西アフリカのマリ共和国北部,サハラ砂漠の最南部に位置する街トンブクトゥです.

 ここは中世から近世にかけてサハラ交易の拠点としておおいに栄えた街です.14世紀にこの地を治めていた王マンサ・ムーサがメッカに巡礼した際,旅の途中でたくさんの黄金を惜しげもなく喜捨したため,アラビア世界での金相場が暴落したのはよく知られた話です.同時期にこの街を訪れた旅行家のイブン・バトゥータによって広く世に知られるようになり,ヨーロッパでは黄金の都として人々の憧れの街となったのです.

Ryoko_2(写真) イブン・バトゥータの大旅行記,今では電子書籍でも読めます.

 しかし,16世紀以降サハラを介さない海路による通商が盛んになるとこの街は衰退,19世紀にヨーロッパ人がようやくこの地に入った時には往年の繁栄はもはやなく,砂と泥の街になっていたのでした.

 その後この街は世界遺産に登録され,私もいつか行ってみたい場所になっています.とはいえ,近年治安の悪化からトンブクトゥを扱う旅行会社がなくなり(大手はもちろん,道祖神のようにアフリカ専門の会社でも取り扱いが中止になっています),政情が安定することを祈ってたんですが…

 武装勢力、北部制圧へ

 なんと!マリ北部で武装勢力が決起,急速に勢力を広め,この地域で唯一政府側の拠点だったトンブクトゥが陥落したというのです.先ほど外務省の海外安全ホームページを見たら,マリ全域で危険度が引き上げられていました(外務省 海外安全情報).

 マリでは先月下旬政府に不満を持つ軍がクーデターを敢行,その混乱に乗じてマリからの独立を要求する北部のトゥアレグ族武装勢力が決起,急激に勢力を伸ばしているようです(ちなみにこのトゥアレグ族がトンブクトゥの街を築いた部族です).

 こうなってしまったら旅行なんて論外,黄金の都への渡航は夢のまた夢にになりそうです(現在マリへの観光はトンブクトゥを含まない,バマコやジェンネなど南西部を中心とした商品が出ているんですが,今回の件でそちらも中止になりそうな予感だなぁ).

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2009年9月17日 (木)

小沢ガールズ

 本日は珍しく政治の話題,でも硬い話ではありません.

 先月30日の衆議院選挙で大量に当選した民主党の新人議員,そのうち小沢一郎氏の指導を受けて当選した人々をマスコミは小沢チルドレンと呼んでいます.これはまあ前回2005年の郵政選挙での小泉チルドレンと対になっていると思うのでまあいいでしょう.

 で,その小沢チルドレンのなかの女性新人議員たちをマスコミは小沢ガールズと呼んでいます.しかし,その面々を見てみると自分より年上の人たちも… でもやっぱりガールズなんでしょうか.たしかに運動競技の世界では年齢に関係なく女子・男子だもんなぁ,などと考えていたら昭和60年頃にささやかれていたフレーズを思い出しました.

 相撲の世界は30過ぎたら年寄で,それに引き換え政治の世界は60過ぎでニューリーダー(*)

 結局政治の世界では年齢に関する基準が世間とは違うということなのでしょう.

 * 中曽根内閣末期,竹下昇・宮沢喜一・安倍晋太郎らが次代を担うニューリーダーなどと呼ばれていた.

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2008年11月13日 (木)

論文とは?

 本日はちょっと硬い記事です.

 当ブログは基本的に政治的な話題を取り扱わないんですが,今日はちょっと特別に.

 最近世間を賑わせた話題に,航空自衛隊の前幕僚長による論文問題があります.国会で参考人招致も行われました.

 実は当初この話題が出たときの私の認識は,「論文の内容がかなり微妙なテーマを扱っており,しかもその趣旨が政府の公式見解と食い違っていれば,自衛隊の幕僚長という立場を考えると問題になりそうだな」というものでした.内容に関してはそれほど関心を持ちませんでした.

 私は戦史にはかなり興味があり,その筋の書物もかなり読んでいます.それゆえ、こういったテーマ(戦争とは所詮政治の延長であり,善悪二元論で単純に語れる性格のものではない)の難しさもわかります.自分の子供時代の日教組全盛期に盛んだった,いわゆる自虐史観に反発する一方で,その対極にありそうな靖国史観にも強い違和感を感じます.一般にマスコミはこういった話題をセンセーショナルに書きたてる傾向があるため,少なくとも航空幕僚長という要職にある方の書いた論文なら,それなりの説得力もあるのだろうと思っていました.その論文を読むまでは…

 今日,件の前幕僚長の論文(某所で最優秀賞を取った論文だそうである)を読む機会がありました(前幕僚長の論文).

 一読して目が点になりました.

 「これは論文なのか?」

 私も一応学位を持った学者の端くれです.今でも稀に論文を書くこともあります.

 論文とは自分(およびその共同研究者)の主張を論理的に述べた文章です.ただ,主張をすれば良いというものではなく,その主張の根拠となるものを示さなくてはなりません.根拠がなくただ主張だけ書き連ねるのは妄想であって論文ではありません.

 他人の論文を読む場合には,書いてある内容を鵜呑みにすることはできません.書いてある内容が真実である保証はないからです(人は活字に書かれた文章は無条件で事実と捉えがちですがこれは危険なことです).あくまでもその文章を吟味し,自分なりに考える必要があります.そして論文を書く側は読者が検証できるように,自分の論文の根拠となった資料(実験ならその方法,他の研究者の意見ならその元論文等)を提示する必要があります.

 そういう意味では,件の論文は論文とはいえないような気がします.あちこちに「~である.」,「~であるといわれている.」,「最近~であるといわれるようになった.」という文章が出てくるんですが,そのほとんどに引用文献が記載されておらず,検証の仕様がないからです(一般に論文には文中必要な箇所に脚注を付け,最後に参考文献リストが載るんですが,この論文にはそのようなものはついていませんでした).これでは言いっ放しの文章であり,とても学術論文と呼べるシロモノではないと感じます(あえて言えばエッセイでしょうか).

 案外今回の事件の最大の問題は,こんなエッセイとしか思えない文章を論文と称して書いてしまうような人物が幕僚長の重職に就いていたという事実なのかもしれません(ウチの同僚が「これなら辻政信の方がマシな論文を書きそうだ」と言っていました).

Tsujimasanobu (写真) 辻政信大佐は一部では非常に有名な旧陸軍の参謀です.

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