2018年9月 7日 (金)

プッチーニ「三部作」

Img204  9月になりました.自分にとって8月はひたすら耐える月(笑)というイメージだったんですが,9月は一転して活動的になる季節です.

 そんな9月最初のイベントとして,昨夜東京二期会オペラ プッチーニ「三部作」を観劇してきました.会場は初台の新国立劇場です.二期会オペラというと,いつもは上野の東京文化会館のイメージが強いんですが,実は現在ローマ歌劇場が来日中で,上野はそっちで使っているため,こちらに回ってきたもののようでした.

 プッチーニの三部作は,「外套」,「修道女アンジェリカ」,「ジャンニ・スキッキ」のそれぞれ1幕物のオペラ3作から構成されるもので,イメージの異なる3作品の組み合わせはダンテの神曲(「地獄編」,「煉獄編」,「天国編」)に影響されたともいわれています.社会の底辺を生きる人々の愛や欲望を赤裸々に描くというヴェリズモ的作品(レオンカヴァッロの「道化師」やマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」などの系統)の「外套」,登場人物がすべて女声で修道女の贖罪と奇蹟の物語である「修道女アンジェリカ」,皮肉な喜劇である「ジャンニ・スキッキ」という具合に性格の全く異なる3作品を一晩で上演するのが肝であり,プッチーニ自身が望んだものです.

 メトロポリタン歌劇場での1918年の初演は,そうした作曲家の意図に従って上演されたものの,ほどなく3作同時上演のスタイルは崩れ,現在では「外套」と「修道女アンジェリカ」(特に後者)の上演頻度は低く,もっぱら最後の「ジャンニ・スキッキ」のみが,他の1幕物のオペラ(「道化師」や「カヴァレリア~」など)と組み合わせで上演されることがもっぱらになっています.

 今回はそんな3部作が本来の形で上演される珍しい機会ということで楽しみにしていたのでした.まだ公演は続いているのでネタバレ的なことはしませんが,ダミアーノ・ミキエレットによる3つの異なる作品を1本の線で繋げる演出はなかなか見ごたえがありました.

 終演後は劇場のレストランへ.ワインとパスタを堪能したのでした.

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2018年8月10日 (金)

小田原医師会合唱団第10回記念演奏会

 暑い日が続いていますが皆さんお変わりないでしょうか? 本日は演奏会の宣伝です.

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 私が所属している小田原医師会合唱団の第10回記念定期演奏会が,来る9月24日(振替休日の月曜日)に小田原市民会館大ホールにて行われます.

 今回のメインステージは10周年記念として大田桜子さんの委嘱作品,金子みすゞの詞による混声合唱組曲「みんなを好きに」を取り上げます.

 この合唱団は自分が当地に転勤してきたタイミングで結成された(されていた?)合唱団です.縁あって初練習から参加し続けています.当初は混声4部を成立させることすら難儀していたんですが(笑),指揮者の先生方の優しく忍耐強い指導と,団員の努力により気が付いたら10年も継続していたという感じです.

 良い演奏ができるよう団員一同頑張っておりますので,ぜひご来場くださいませ(そのほか,宗教曲のステージと過去の演奏会で思い出深い曲を集めたステージもあります).

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2018年7月30日 (月)

バッハセミナー in 明日館

37945944_1844209382343085_216285682  台風12号の雨と風が吹き荒れた週末でしたが,日曜日にあたる7月29日は台風一過の良いお天気になりました.

 そんな日曜日は東京豊島区の自由学園明日館で開催されたバッハセミナー in 明日館の終了演奏会に行ってきました.

20597285_1593466947386414_269252317  このセミナーは声楽指導者&バッハ研究家である佐々木正利先生を講師にお招きして毎年夏に同地で開催されているものです.基本的にはバッハの宗教作品数曲を取り上げて4日間の集中した講習で仕上げ,最終日に終了演奏会の形で発表するという形になっています.

 自分自身も学生時代以来あちこちでお世話になっている先生ですが,例年セミナーの時期は休みを取るのが難しいこともあって講習には参加せず,最終日の演奏会のみ聴きに行くというのがパターンになっています.今年取り上げられた曲がマタイ受難曲BWV244の第2部でした.昨年が同作品の第1部だったので,その続きというわけです.参加者の中には学生時代の仲間もたくさんいました.

 この演奏会は合唱のみならず,ソリストもセミナー参加者が歌うのが定番です.レシタティーヴォは1曲丸々歌うこともありますが,アリアなどは曲を分割して数人で歌い継ぐことも多々あります.当然当時の仲間もエントリーして歌っていたんですが,中でも61番のイエスの死の場面では福音史家とイエスを歌ったのが自分の同期&1級上の先輩,学生時代集まってはマタイ受難曲やロ短調ミサなどのバッハ作品を聴きながらああでもない,こうでもないと語り合っていた仲間たちが,マタイの一番劇的な部分を歌っている光景にジーンと来てしまったのでした.

37938221_1844209395676417_724836002  昔の仲間たちの雄姿

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2018年7月 7日 (土)

歌劇「トスカ」

Img008  気が付いたらもう7月,関東は異様に早い梅雨明けの一方で,西日本では大雨が続くなど異常気象に見舞われている昨日今日です.旅行から戻って間もなく3週間,すっかり日常生活に戻ってしまったビザンチン皇帝であります.

 さて,そんな自分の日常といえばオペラ鑑賞(笑),というわけで先週の水曜日に新国立劇場で表題の「トスカ」公演に行ってきました.

 17世紀のモンテヴェルディから21世紀の今日まで,世の中で作曲されたオペラ作品はそれこそ星の数ほどあるでしょうが,その中でも屈指の名曲としてどこからも異論が出ないだろう(たとえアンチ・プッチーニの人であっても)傑作です.よく,オペラになじみがない人にどの作品を勧めるかという話題が出た時に真っ先に上がるのもこのトスカです(自分も絶対にこれを勧める).理由としては全体で2時間(休憩除く)とほぼ映画並みの長さであること,ストーリー展開が早く,オペラ一般にありがちな劇の停滞がないこと.登場人物のキャラが立っていて感情移入しやすいこと,名アリアがあるのはもちろん,大迫力の合唱も登場すること等々,オペラの魅力がこれでもかと凝縮されていて飽きさせないからです.2000年に初出となったアントネッロ・マダウ=ディアツ演出によるプロダクションは新国立の定番レパートリーとなり,近年はほぼ3年に1回上演されています(自分も何度も見ている).

Img_3858  19世紀初頭,ナポレオンがヨーロッパに大きな影響を及ぼし始めた時代のローマが舞台.共和主義者の政治家アンジェロッティとその友人の画家カヴァラドッシ,彼の恋人トスカと,王党派で共和派を厳しく取り締まる警視総監のスカルピアが織りなす劇です.1幕冒頭のカヴァラドッシによるアリア「妙なる調和」,1幕最後の大合唱「テ・デウム」とスカルピアの独白,2幕のスカルピアがトスカを追い詰めていく場面とそれに続くトスカのアリア「歌に生き恋に生き」,3幕のカヴァラドッシの名アリア「星は光りぬ」など聴きどころ満載です.

 今回は指揮者に弱冠28歳のロレンツォ・ヴィオッティを迎え,トスカにはこれを当たり役にしているというキャサリン・ネーグルスタッド,カヴァラドッシは3年前の同公演でも歌ったホルヘ・デ・レオン,スカルピアはクラウディオ・スグーラという面々,特にネーグルスタッドは歌う部分は高音なんですが,地のレシタチーボではかなり低音のどすの利いた声で,特に2幕のスカルピアとのやり取りは迫力ありました.個人的に一番好きな1幕の最後,テ・デウムのシーンは本当に華やかで,これを見るためだけに来る価値があるなと思う場面でした.贅沢を言えば,スカルピア役がかっこよすぎて,絶対悪なはずなのに,なんか憎めない(ドン・ジョバンニみたいな感じ)のがちょっと残念でした(笑).

Img_3857  この日は夜の公演で,終演が22時を過ぎそうだったために,久しぶりに劇場レストランの幕間メニューに挑戦,メニューはズワイガニとレタスの冷製パスタでした.ただ幕間が25分しかないのでウチのKは全部食べられなかったようです(笑).先月カタリーナ・ワーグナーによるフィデリオの後だけに,きわめて正統的な演出のオペラを堪能した夜でした.

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2018年6月 4日 (月)

2つのコンサート

 学会シーズンが一段落し,いよいよ今週末から夏季休暇の旅行に繰り出すんですが,その狭間にあたる先週,2つのコンサートに行ってきました.

Img_3772  ひとつは5月29日に武蔵野市民文化会館で行われたザ・キングス・シンガーズのコンサートです.ザ・キングス・シンガーズはイギリスの男性6人組アカペラ・アンサンブルユニットです.結成されたのが1968年ということで,今年でなんと!50年になります.これだけ長い期間活動しているわけですから,当然メンバーも固定されてはおらず,時代とともに入れ替わりはあります.しかし,それでも同じ名称・同じコンセプトで歌い続けているユニットです(メンバーが入れ替わるという意味ではモーニング娘。やAKBと一緒です 笑).

 彼らのレパートリーは非常にバラエティに富んでいて,イングランドやスコットランド,アイルランドの民謡やルネッサンス期のイギリス・マドリガル,フランスのシャンソンといった古典曲をはじめとして,ジャズ系の歌,ビートルズから現代作品にいたるまで,それこそ歌ならなんでも歌う(たまに歌じゃないのも歌う)くらいの勢いで活動しています.

 今回は結成50周年記念ツアーということで,新たなアルバム”Gold”に収録された曲を中心に,ルネッサンスから現代曲,はたまた日本の歌までたくさんの曲を披露してくださいました.いつ聴いても「人間の声ってなんて素晴らしいんだろう!」と思わせてくれるコンサートでした.

Img_3778  そして2つ目が6月2日,新国立劇場での歌劇「フィデリオ」公演です.

 ベートーベン唯一のオペラとして知られ,当時の自由主義的な世相を反映する作品です.今回はバイロイト音楽祭の総監督であるカタリーナ・ワーグナー(リヒャルト・ワーグナーのひ孫)による演出ということで注目を集めていました.とにかく斬新な演出(笑)をする方だと聞いていたので,5月20日の初日の公演後,ネット上に様々な反応が上がっていたのは予想通りでした(賛否半々よりも否が6割くらいか).

 が,これだけ話題になると逆に怖いもの見たさで楽しみになってくるから人間の心理は面白いです(もしかして作戦かも).

 公演はすべて終了したのでネタバレOKと思いますが,たしかに衝撃的な舞台でした.第1幕はまあ,こんなものかなと思っていたんですが,第2幕の後半はあっけにとられます.このオペラは投獄されていた夫を妻が解放する!自由万歳!というストーリーなんですが,カタリーナの演出では… 初日のカーテンコールで演出家にブーイングが飛び交ったのがわかる気がしました.音楽としての演奏は,フロレスタン役のステファン・グールド,レオノーレ役のリカルダ・メルベート,マルツェリーネ役の石橋栄実らキャストや合唱は素晴らしかったので口が悪い人は,「だまって目を瞑って聴けば最高だった」と言っているようです(笑).

 とはいえ,今回のプロダクションは今年で退任となる飯守泰次郎芸術監督が,「”フィデリオ”の革新性を表現するような、問題提起する舞台をつくりたい」と考えてカタリーナ・ワーグナーに依頼したと述べていることから,こうした世間の反応は織り込み済みだったんだろうなと思ったのでした.

 なんにしても,音楽は素晴らしいです.

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2018年4月21日 (土)

東京マドリガル会のミニコンサート

Madrigalhakone  週の後半になって一気に気候が良くなってきた感じがします.

 週末の金曜日,自分の勤務地の病院で東京マドリガル会のミニコンサートが開催されました.過去記事でも触れているように,ここは現在私が所属している合唱団体のひとつです.会が設立されたのはなんと!1929年(昭和4年)! 当時英国留学から帰国した黒澤敬一氏が滞英中に慣れ親しんだマドリガルを日本でも研究,演奏しようと有志と立ち上げたものです.同年12月に初めてのコンサートが東京の英国大使館で行われ,以後国際関係が緊張して,第二次世界大戦に突入していた時期も毎年途切れることなくコンサートを開催していたそうです.

 恒例のクリスマスコンサートは2016年の第88回をもって一度区切りとなりましたが,普段の例会(東京マドリガル会では日々の練習のことを例会と呼ぶ)は今も行われています.メンバーの高齢化等もあり主催のコンサートはなかなか難しいのですが,こうしたミニコンサートは是非にということでやってきたものです.

P1110434  当日は病棟の食堂が会場です.演奏したのは代表的な英国マドリガル4曲(モーレーの"Sing we and chant it",ギボンズの"The silver swan",ウィルクスの"On the plains Fairy trains",ダウランドの"Awake, sweet love")とイタリアのマドリガーレ1曲(モンテヴェルディの"O Primavera")をメインに英国民謡,そして最後に日本の歌を2曲という構成でした.

 うちの病院には昔からいろんな個人・団体が慰問にやってきます.合唱はもちろんですが,クラシックだと独唱,独奏,合奏,その他では演歌やダンス,お笑いから応援団の方々まで幅広いジャンルの方々がやってきました.ただ英国マドリガルが演奏されたのは病院史上初の出来事だったのではないかと思いました.患者さんも楽しまれていたようでしたが,鑑賞していた副院長が「面白いジャンルですね」と興味を持ったようでした.

 そんなイベントが行われた4月の週末でした.

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2018年4月10日 (火)

歌劇「アイーダ」

Img006  もう数日たってしまいましたが,4月5日の夕方から新国立劇場に歌劇「アイーダ」の観劇に行ってきました.

 アイーダは19世紀を代表するオペラ作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの代表作の一つとしてあまりにも有名です.初演が行われたのは1871年カイロ歌劇場,オペラの舞台がエジプトなのは元々この歌劇場から発注されたご当地オペラだからです.生涯で26(改作等を除く)のオペラを作曲したヴェルディの24番目の作品で,当時ヨーロッパの音楽界に大きな影響を与えていたドイツのR・ワーグナーの主要作品よりも後に作曲されているにも関わらず,あまりその影響を感じさせない作品です(この後の25作オテロ,26作ファルスタッフにはその影響がみられる).

 このアイーダは4幕仕立てで,起承転結のはっきりとした悲劇ですが,一方で2幕の凱旋の場など祝典的て華やかなエンターテイメント性が極めて高い作品に仕上がっているために,新しい歌劇場のこけら落としのプログラムとしてよく取り上げられます.1997年に開場した新国立劇場でも,翌年1月に開場記念作品としてフランコ・ゼッフィエッリ演出による公演が行われました.この公演が非常に評判が良かったこともあり,以来5年おきに再演され,今回は通算5回目の公演となります.

 このゼッフィエッリの舞台,特に1幕&2幕はエジプトの砂漠をイメージさせる黄土色を基調とした舞台に何本もの柱やスフィンクスっぽい像やその他細かい舞台装置が配置され,非常に華やかな舞台になっています.2幕の凱旋の場ではそんな舞台上を,大合唱団やダンス隊,さらには馬までが所狭しと動き回るため,感動間違いなしの豪華絢爛な舞台となっています(古代エジプトに馬がいたのかという野暮なツッコミはなしで 笑).このプロダクション,チケットが完売しても黒字にならないほどお金がかかっているという説があるんですが,そうなんだろうなと納得できるのでした.

 今回はアイーダをイム・セギョンさん,ラダメスをナジミディン・マヴリャーノフさん,アムネリスをエカテリーナ・セメンチュクさんというのがメインキャストでした.3者3様で個性的だったんですが,個人的にはアモナズロ役の上江隼人さんが単なる敵役ではない,王としてのプライドを持った敵役としての風格を感じさせる演技でよかったです(実は代役だったんですよね).新国立劇場の合唱団は相変わらずレベルが高いし,やっぱりオペラはこうじゃなくちゃと思わせてくれる舞台でした.

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2018年4月 3日 (火)

盛岡バッハ・カンタータ・フェライン演奏会

Img185  4月1日に盛岡に繰り出した目的のひとつは免許の更新だったわけですが,実はもうひとつ目的がありました.それが表題のコンサートです.

 実はこの合唱団,私も遠隔会員として参加しているところなんですが,昨年秋からなかなか練習に参加できず,今回のステージに乗ることはかないませんでした.ということで久しぶりの客席です♪

 今回のコンサートは,詩篇98篇の「主に向かって新しき歌を歌え」を歌詞に持つドイツプロテスタントのモテットシリーズです.第1部がハインリヒ・シュッツ,第2部がフェリックス・メンデルスゾーン,そして第3部がJ. S. バッハです.

 カンタータなど管弦楽や独唱も入った作品と違い,モテットは通奏低音のみのほぼ合唱オンリーの作品です.曲に占める歌う部分が非常に高く,難易度&疲労度はハンパありません.合唱団のメーリングリストなどでもかなり苦戦している様子が伝わってきていたんですが,パート練習など独自練習を積極的に行いこの日の本番を迎えたようです.

 で,演奏ですが,すごいです.これらの難曲を見事に消化して歌いきっています.もちろんちょっとハートが熱すぎるなというところもあったりしましたが,全体としては引き締まったいい演奏会だったと思います.

 次回の演奏会は再来年にバッハのマタイ受難曲とのこと.バッハの教会音楽の最高峰といわれる作品を常任指揮者の佐々木正利先生自身の指揮によって演奏するそうです.過去には客演指揮者によるマタイの演奏経験はありますが,佐々木先生自身の指揮によるものは40年の歴史の中で初めてだそうです.楽しみな企画ですが,今度はぜひ自分自身も参加したいと思ったのでした.

 免許更新からコンサートまでちょっと時間があったので,久しぶりに市内を散策,岩手銀行赤レンガ館(旧岩手銀行中の橋支店)を見学しました.

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2018年3月23日 (金)

天正遣欧使節団とグレゴリウス13世

 今日3月23日は世界気象デーなんだそうですが,一方で安土桃山時代の天正年間に,当時日本に滞在していたイエズス会士ヴァリニャーノの発案で,九州のキリシタン大名(大友宗麟,大村純忠,有馬晴信)の名代としてヨーロッパに派遣された少年たち,いわゆる天正遣欧使節団が時のローマ教皇グレゴリウス13世に謁見した日なのだそうです(1585年3月23日).

Japanesedelegatesandpopegregory13  グレゴリウス13世といえば,今世界の標準暦として使われているグレゴリオ暦の制定者として知られています.キリスト教で最も重要な行事が復活祭ですが,この復活祭の日にちを決める春分の日が当時のユリウス暦の日付と現実の春分の現象が乖離してきていたのが制定の動機です.このグレゴリオ暦はユリウス暦1582年10月4日の翌日を10月15日とすることで開始されました.件の遣欧使節団がヨーロッパに到着したのはまさにこの改暦のちょっと後だったことになります.

P8310606  そんな天正遣欧使節団の存在を自分が初めて知ったのは歴史の授業ではなく,NHKの人形劇でした.それは昭和53年4月から翌年3月まで放送されていた人形劇「紅孔雀」,舞台は江戸時代初期の紀伊半島ですが,主人公那智の小四郎の父親が若い頃に遣欧使節の世話役としてローマに行ったという設定になっていたからです(使節の4人の少年ではない).

 使節団には4少年のほかに教育係や技術留学生的な役割の日本人が同行していたとされているので,そうした人物の一人だったという設定だと思われます(こうしたメイン人物が歴史的派遣団の一員だったという展開は,大河ドラマ「獅子の時代」に似ている).

 この紅孔雀はまだビデオテープが高価だった時代の作品であり,NHKにも映像が残っていない幻の作品だったのですが,何年か前に民間でビデオが発見されたというニュースがありました.後作品のプリンプリン物語と一緒ですが,プリンプリンがBSとはいえ再放送されたのに対して,紅孔雀の方はそんな気配はありません.個人的に好きな作品だったので,一部でいいからぜひ放送してほしい(あるいは販売でもいい)と思っています.

 天正遣欧使節から紅孔雀まで,話題が膨らんだ3月23日でした.

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2018年2月20日 (火)

歌劇「松風」

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 南アフリカ旅行からほぼひと月が経過しました.季節外れに休暇を取ったこともあり,帰国後はほぼ職場でひたすら仕事の日々だったんですが(余暇は2月6日に宇宙戦艦ヤマト2202を観に行ったくらいか),2月18日日曜日に新国立劇場で上演された歌劇「松風」を観劇してきました.

 松風は日本の古典芸能である能の有名な演目を細川俊夫がオペラ化したものです.そのオリジナルは「撰集抄」や「源氏物語」中にある説話や「古今和歌集」にある歌をベースに室町時代の観阿弥が猿楽としてまとめたもの,罪を得て須磨の地に流された在原行平が愛した地元の娘,松風・村雨姉妹の物語です.

 オリジナルが能とはいえ,歌詞はドイツ語で,楽器も風鈴が用いられる以外は基本的に西洋の楽器です.能の面が登場することもありません.しかし,セリフ回しや構成は普通の西洋オペラとは異質な能の空気に満ちています.語り手たる旅の僧,亡霊である松風・村雨の未練から狂気を経て(おそらくは)成仏していくという一連の流れが,途切れることなく緊張感の高い音楽と踊りでつながっていきます.1幕モノの狂気作品ということでR・シュトラウスの「サロメ」を想像したんですが,エログロなど世紀末的退廃が前面に出ているサロメと違って,もののあわれに代表される日本的な美しさが際立つ作品に仕上がっていました.シンプルな言葉と音楽,そして踊りが融合する舞台は,いわゆる歌劇とはことなる総合芸術作品だなと感心しました(和風のワーグナーか? 笑).

 

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