2024年6月19日 (水)

ドイツ旅行⑤

 今回の旅行のメインイベントのひとつが終わり、6月9日になりました。ドイツ旅行もあと少しでおしまいです(泣)。この日の午前中は引き続きライプツィヒを観光し、午後から再びドレスデンに移動、ゼンパーオーパー(ドレスデン国立歌劇場)で夜に開催されるモーツァルトの魔笛を鑑賞する流れとなります。

Img_2892(写真1)バッハ博物館

 朝食後ホテルをチェックアウト、荷物は引き続き預かってもらい観光に繰り出します。まず向かう先はトーマス教会となりにあるバッハ博物館、ここは絶対に外せないポイントです。昨日のメンデルスゾーン博物館ですら2時間くらい軽く費やしたので、バッハとくればその気になれば一日過ごせそうな気がします。黄色い外観がなんとなくザルツブルクのモーツァルトの生家に似てるなと感じました。この建物は当時バッハと親交の深かった商人ボーゼの家だったそうです。入り口でチケットを購入して早速見学開始、順路に沿って進んでいきます。最初はバッハ一族の家系図から始まり、バッハが実際に弾いたとされるオルガンや当時の楽器などが展示されています(楽器は手前のスイッチを押すとその音が聞けるようになっている)。その後はバッハ作品の鑑賞コーナー、オルガン作品やカンタータなどたくさんの曲が聴けるようになっています。ここだけでも一日費やせること請け合いですが、さすがにそこまではできないのでロ短調ミサ曲のOsannaの原曲である世俗カンタータ「祝されしザクセン」BWV215をじっくり鑑賞しました。順路に従って進んでいくと最後に到着するのがバッハの自筆譜などが展示された部屋となります。さすがに自筆譜を見ると感動します。結局お昼まで博物館を堪能したのでした。

Img_2903 Img_2902(左写真2)マルクト広場、(右同3)特設ステージ

 その後はマルクト広場に移動、ここで日本から合唱団で参加している大学時代の友人と待ち合わせて昼食となりました(広場には特設ステージが用意されていて、この時午後に演奏するらしい団体が練習していた)。ビールとドイツ風の食事で旧交を温めたのでした。

 その後は一旦ホテルに戻って荷物を引き出し、中央駅に向かいます。この後の特急列車でドレスデンに向かいます。この時先にランチをした友人も一緒だったんですが、駅に改札が無いことに驚いていました(ドイツやオーストリアの鉄道には基本改札は無い)。まもなく電車がやって来て載り乗り込んだんですが、なんと遅延が発生しているとのこと。今更仕方ないので車内で待つことにします。結局1時間ほど遅れて電車は出発しました。

Img_2906 Img_2907(左写真4)ライプツィヒ中央駅、(右同5)特急車内

 ドイツ国鉄の誇る国際特急といえば時速300キロで走ることで有名ですが、ライプツィヒードレスデンは路線的には末端部分に当たるためか、そんなスピードは出ずせいぜい130キロくらい、日本で言えば山形新幹線みたいなイメージです。電車はのどかな田園地帯をひた走りました。途中の停車駅は1カ所のみなので約1時間でドレスデンに到着です(この日は日曜日なので中央駅までは行かず、その手前の新市街駅が終点でした(私は密かに新ドレスデン駅と呼んでいます)。下車して構内を歩いていたら盛岡の合唱団の代表ご家族と遭遇、こちらは日中の演奏会を鑑賞して今ライプツィヒに戻るところらしかったです。偶然に驚きながらも我々はトラムで旧市街に向かいます(乗り換え無しで行けるのが嬉しい)。下車後は友人と別れてこの日宿泊のヒルトンホテルに入ります。今回に限らず旅行最後に一番いいホテルに泊まるパターンが多い気がするんですが、今回は終演が遅いため、劇場に近いホテルを探したところここになったというのが正解です。

Pxl_20240609_163006000(写真6)歌劇場前

 準備をしていよいよゼンパーオーパーに向かいます(ウチのKは気合いを入れて和装していた)。行ってみるとすでに開場していて多くのお客さんが来ています。見るとやっぱり着飾った人が多い印象でした。内部は壁や天井にも様々な装飾が施されていて見事です。お上りさん状態であちこちを見渡していると首が痛くなりそうでした(笑)。

Pxl_20240609_182940284 Pxl_20240609_165432318(写真7,8)劇場内

 そして午後7時に開演、あの有名な序曲が始まります。「ジャッジャーン♪、ジャッジャーン♪」、生オペラは昨年4月の新国立の「アイーダ」以来、こうした芸術とは無縁な生活をしているだけに感動もひとしおでした。ついでに思ったのがこの劇場、オケピットが浅くて指揮者の上半身がほぼ見えていること、ここで初期作品を初演したワーグナーが後にオケピットが完全に隠れるバイロイト祝祭劇場を造らせたのは案外ここら辺にも理由があったりしてと思ったのでした。

Pxl_20240609_200529711(写真9)ライトアップされたゼンパーオーパー

 終演後は劇場向かいにあるレストランで遅い夕食です(幕間に軽食を摂ってはいましたが)。メニューに生牡蠣を見つけて普段ナミビアで散々食ってるくせに注文してしまったというのは内緒です。それにしてもオペラって最高だなと再確認した夜でした。

Pxl_20240609_204205635 Pxl_20240609_204220195(写真10、11)この日の夕食

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2024年2月29日 (木)

ロッシーニの誕生日

 今年はうるう年、すなわち約4年に一度2月29日が存在する年です。で、この2月29日生まれの著名人に19世の作曲家G. ロッシーニがいます。彼は1792年のこの日にイタリアのペーザロ市(当時は教皇領)で生まれました。彼の生家は本業ではないものの音楽一家で、彼自身も小さいころから音楽の才能があったようです。18歳で最初のオペラを作曲し、20代で「アルジェのイタリア女」、「セビリアの理髪師」、「チェネレントラ」といった今でも名高い傑作を次々に発表し当時のウィーンで大人気となりました。彼の人気があまりに凄いので、同じ時期ウィーンにいたベートーベンも嫉妬していたとされています。

Rossini1 Rossini2(写真左)晩年のロッシーニ、(同右)若い頃のロッシーニ

 ロッシーニは76年の生涯の中で,作曲として活躍していたのは前半生のみで,37才のときに「ウイリアム・テル」を作曲すると,以後はオペラ作曲の筆を折り,残りの40年は食っちゃ寝の生活をしていたという羨ましい人生を送った人でもあります.尤もまったく作曲をしなかったわけではなく,私的にはいくつかの作品は遺しています(私も好きな小ミサ・ソレムニス)は彼の晩年の作品である).

 ロッシーニの名前は音楽だけではなく、料理の世界にも残っていますが、残念ながらナミビアにはフランス料理店と呼べる店がなく、今は〇△のロッシーニ風という料理には縁がないのが寂しいところです。

Img_6 Mukaka(写真左)牛フィレ肉のロッシーニ風、(同右)無花果のロッシーニ風

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2023年5月 7日 (日)

春のマチネコンサート

Img20230515_08025045  このGWはこれまで比較的おとなしめの行動をしているビザンチン皇帝ですが,連休終盤の5月6日は東京日暮里のサニーホールで開催された春のマチネコンサートを鑑賞してきました.

 これは若手音楽家(声楽5名,器楽1名)のユニットによるコンサートです.私にとっては構成員の半数が知り合いというなじみ深すぎる演奏会ということになります.コロナ禍の2020年秋に続き2回目のコンサートでした.

 曲目は合唱2曲,日本やドイツ歌曲,そしてオペラのアリアや重唱です.特にオペラは自分の大好きなジャンルなのでワクワクしながら鑑賞しました.合唱2曲は谷川俊太郎作詞・木下牧子作曲の「春に」と岩間芳樹作詞・新実徳英作曲の「聞こえる」で,これらはいずれも医師会合唱団で取り上げたことのある曲だったので感慨深いものがありました.会場では見知った方々も多く,コロナ禍で途絶えていた交流もできました.

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2023年4月20日 (木)

歌劇「アイーダ」

Img20230421_08015468  昨夜は新国立劇場で公演中の歌劇「アイーダ」を観劇してきました.

 19世紀イタリアオペラの巨匠,ヴェルディが1871年に作曲した彼自身24作目のオペラです.カイロ歌劇場のこけら落とし用にと依頼された作品ということで,舞台は古代エジプトに設定されています.全4幕で起承転結のはっきりした作品ですが,特に第2幕の凱旋の場は単独で取り上げられることも多い非常に有名な場面です.新国立劇場のフランコ・ゼッフィレッリ演出のプロダクションは1998年の同劇場開場以来何度も公演が重ねられてきました(ほぼ5年に1回).私もこちらに越してきてから2013年,2018年の公演を鑑賞しているため,今回は3回目ということになります.

Img_0779 Img_0778 (左)ホワイエにて,(右)ホワイエに置かれていた巨大な舞台写真,ここで記念写真を撮っている方が多かったです.

 今回はアイーダにセレーナ・ファルノッキア,ラダメスにロベルト・アロニカ,アムネリスにアイリーン・ロバーツ,アモナズロに須藤慎吾,ランフィスに妻屋秀和という面々でした(自分が見始めた2013年以降ランフィスはいつも妻屋さん).特に第2幕の凱旋の場面は舞台装置も豪華絢爛,出演者も多く,俗にこのプロダクションは全公演チケットが完売しても赤字になると言われるのが判ります(仮に助演のメンバーに日当1万円払ったとしてそれだけで200万円以上になる).素晴らしい時間でした.

 終演後は恒例のレストランでのディナーです.この日の魚料理は舌平目でした(ムニエルではなくパピヨット).

Dsc_2576 Dsc_2577 Dsc_2578 Dsc_2579 Dsc_2581 Dsc_2582(左上)スパークリングワイン,(中上)ポロ葱とじゃがいものヴィシソワーズ,(右上)タリアテッレ,(左下)舌平目のパピヨット,(中下)塾成牛のビステッカ,(右下)とちおとめのジェラート

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2023年2月 2日 (木)

歌劇「タンホイザー」

Img20230201_07445906  最近オペラの話題が多いのですが,1月31日に現在新国立劇場で上演中のワーグナー作曲,歌劇「タンホイザー」の公演を鑑賞してきました(今月3回目のオペラ鑑賞).

 ワーグナーはイタリアのヴェルディとともに,19世紀を代表するオペラ作曲家です.ヴェルディ同様主要作品がほぼオペラに限られることから,世間での知名度はモーツァルトやベートーベンには及びませんが,同時代や後世に与えた影響の大きさでは計り知れないものがあります.彼ももヴェルディ同様,後になるほど作品が円熟化して完成度が高くなっていく成長型の作曲家です.ワーグナー作品の特徴としてレチタチィーヴォ,アリアの区別のない音楽(無限旋律)や指導動機(ライト・モティーフ)の多様などが知られていますが,これも彼の初期作品から見られたものではなく,徐々に形成されていったスタイルです.今回上演されたタンホイザーは従来型のオペラからワーグナー的なオペラへの移行期に位置づけられる作品です.ワーグナー作品といえばとにかく上演時間が長いという印象がありますが,本作は休憩抜きで3時間と常識の範囲内(笑)に収まっています.

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(左)上演時間,(右)幕間にはスパークリングワイン

 内容は中世のタンホイザー伝説とヴァルトブルクの歌合戦の伝説をワーグナーが独自に融合させたもの.気高い女性の自己犠牲により罪深い男性が救済されるというテーマは極めてワーグナー的です.音楽は有名な序曲や2幕の大行進曲,3幕の夕星の歌や巡礼の合唱など親しみやすい部分も多いです.特に合唱の荘厳さは自分的には非常に好きな部分です.今回の公演ではタンホイザーにステファン・グールド,エリザベートにサビーナ・ツヴィラク,ヴォルフラムにデイヴィッド・スタウト,領主ヘルマンに妻屋秀和といった錚々たるメンバーを揃えていました.休憩含めて4時間ですが,それほど長く感じさせないのもこの作品の魅力です.魂が洗われるような公演でした.

 終演後は劇場内のレストランへ.実は新国立の公演に来たのは昨年5月の「オルフェオとエウリディーチェ」以来だったので,ここに来たのもすごく久しぶりです.この日は終演が18時過ぎと夕食にはピッタリな時間だったこともあり,フルコースをいただいたのでした(もちろんワインも).心も胃袋も満たされた1日でした.

Dsc_2432 Dsc_2433 Dsc_2434 Dsc_2436 Dsc_2437 Dsc_2438(左上)お酒はシャンパン,(中上)前菜は蕪のムースと魚介のマリネ,(右上)パスタは牡蠣とトレビスのトマトソース,(左下)魚料理 鮟鱇のパンチェッタ巻き,(中下)肉料理 ザワーブラーテン,(右下)デザートは苺のスープ バニラのジェラート添え

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2023年1月30日 (月)

歌劇「トスカ」

Img20230201_07434573  昨日1月29日は上野の東京文化会館に藤原歌劇団のトスカ公演に行ってきました(今月2本目のオペラ鑑賞).

 オペラ作品というと,17世紀のモンテベルディから現代まで,いったい何作品あるのか数えるのも不可能ですが,その中で誰もが納得するであろう名作となると,ある程度絞られます.このプッチーニによって19世紀最後の年である1900年に発表された「トスカ」は,多くの人が認めるであろう名曲中の名曲でしょう(もっとも同時代の作曲家であるマーラーは本作を駄作と呼んだそうですが…).オペラを初めて見る人に何を薦めるかと問われてトスカを押す人も多いと思います.その理由としては,まず時間が程よいこと(全3幕合計2時間ほどと映画並み),ストーリーがわかりやすくスリリングであること,登場人物のキャラだ立っていて感情移入しやすいこと,美しいアリアが堪能できることなどが挙げられます.

 物語はフランス革命後のナポレオンが台頭し始めた時期のイタリア・ローマ,自由主義者で政治犯のアンジェロッティとその友人の画家カヴァラドッシ,カヴァラドッシの恋人の歌姫トスカと自由主義者を徹底的に弾圧する一方で,ひそかにトスカをものにしようと野心を抱くローマ市の警視総監スカルピアが織りなす人間ドラマです.アリアとしてはカヴァラドッシによる1幕の「妙なる調和」,3幕の「星は光りぬ」,トスカが歌う2幕の「歌に生き恋に生き」はオペラ史でも屈指の名アリアです.

 劇としても2幕でスカルピアがカヴァラドッシを拷問にかける様子を聴かせながら,トスカを精神的に追い詰めていく場面など非常に緊張感の高いシーンが続きますが,個人的には1幕最後の人々がテ・デウム(「神である汝を讃えん」を合唱する傍らでスカルピアが自らの野心を歌う場面が非常に好きです.

 今回の公演は土日をダブルキャストによる上演で,キャストはすべて邦人歌手でした.演出もオーソドックスなもの(というかリアリズムを目指しているヴェリズモオペラの範疇に入る本作においては突飛な演出はやりにくいでしょう).そんな名作を堪能した1日でした.

 オペラ鑑賞というと,その後の食事までがセットと考える我が家,この日は四谷三丁目にある音威子府TOKYOさんに繰り出し,蕎麦や焼酎を堪能しました.

Img_9581 Img_9582(左)礼文島の昆布焼酎,(右)黒い音威子府そばと白い新得そばの食べ比べ

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2023年1月27日 (金)

ヴェルディの命日

 今日は1月27日、当ブログでも毎年のように書いているんですが、この日は古典派の重要な作曲家であるW. A. モーツァルトの誕生日です。毎年彼の故郷であるザルツブルクではこの誕生日の前後10日間程度の日程でザルツブルク・モーツァルト週間という音楽祭をやっています。夏のザルツブルク音楽祭に比べるとマイナーで、世間の休暇時期ともずれている為、比較的リーズナブルに著名オケ(ウィーンフィルなど)のコンサートを鑑賞することができます。我が家でも2019年に参加し約1週間モーツァルト漬けの生活を送ったのを懐かしく憶えています(せっかくだからと時間を作ってアウグスブルクの父レオポルト・モーツァルトの実家に行ったら休みだったというオチまでついています 笑)。

 そんなモーツァルトで有名な1月27日ですが、実は19世紀イタリアを代表する作曲家G. ヴェルディの命日でもあります。幅広いジャンルの作曲作をしていて世間一般の知名度が非常に高いモーツァルトに比べてヴェルディはその主要作品がもっぱらオペラであることから、オペラに関心のない層の知名度はかなり下がりますが(この辺はワーグナーもそう)、音楽史に占めるその地位はかなり高いものがあります.

 作曲家には天才型と成長型とでもいえるタイプ分けがあります.すなわち前者は若年時代から凄い作品をバンバン作る作曲家,後者は後になるほど円熟した作品となっていくタイプです.前者に該当するのがモーツァルトやロッシーニだとすれば,ヴェルディは明らかに後者になります.ヴェルディが生涯に書いたオペラは26作品(改訂版を除く)ありますが,評価が高く世界の歌劇場で上演され続けているのは16作目のリゴレット以降の作品です。トロヴァトーレ(17番目)、椿姫(18番目)、仮面舞踏会(21番目)、運命の力(22番目)、ドン・カルロ(23番目)、アイーダ(24番目)、オテロ(25番目)、ファルスタッフ(26番目)と錚々たる作品が並んでおり,その中でも後になるほど円熟味を増していくのがよくわかります.これらのレパートリーは現在でも世界中の歌劇場で繰り返し上演されているものばかりです.これだけ多くの高頻度上演作品を持つのはヴェルディが一番です(次点はプッチーニでしょう,ワーグナーは有名ではあるが演奏難易度が高いので上演頻度は多くない).

 一方でリゴレットより前のヴェルディの15作品は極めてマイナーです.この中では3作目のナブッコと10作目のマクベスが時々上演される機会がある程度でそれ以外の作品はほとんど上演されることがありません.そんなヴェルディのマイナー作品の中で第6作目の二人のフォスカリを今年の9月に藤原歌劇団が上演するらしいです(プレリリース).個人的に非常に楽しみにしています。

Mozart01 Giuseppe_verdi02(左)W.A.モーツァルト、(右)G. ヴェルディ

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2023年1月21日 (土)

歌劇「オテッロ」

Img20230121_10500743  オペラ好きの我が家,2023年の初オペラ鑑賞はロッシーニのオテロでした.シェークスピアのオセロを原作にしたオペラとしてはヴェルディのオテロがあまりにも有名です.ボーイトの優れた台本と円熟期のヴェルディの音楽が融合した非常にドラマ性の高い緻密な作品は,ワーグナーの影響がヨーロッパ中に広がった時代の中でイタリアオペラの伝統を維持しつつ劇と音楽を見事に調和させた傑作です.今回鑑賞した作品はそんなヴェルディの大先輩ともいえるロッシーニが作った同名の作品となります.

 ロッシーニといえばセビリアの理髪師やチェネレントラなどの喜劇的な作品が有名ですが,非常に多作な作曲家だったことから非喜劇的な作品も多く書いています.このオテッロは時期的にちょうどセビリアとチェネレントラの間に作曲されたものです.原作はもちろんシェークスピアですが,当時はベルカントオペラ全盛の時代,主役の歌手が高難度のアリアを歌い観客が熱狂していた時代です.本作もそう言う作品であることは言うまでもありません.特に主役のオテロ(テノール)には高度な歌唱技術や声量が求められ,現代ではこれを歌いこなせる歌手がなかなか得難いのが,この作品がなかなか上演されない理由の一つになっています.さらにはもう一人の主役であるデズデーモナ(ソプラノ)や脇役のロドリーゴ(テノール),イヤーゴ(テノール)も難度の高い歌があります(難度の高いテノールを3人も必要とするというとても贅沢な作品です).今回はオテロ役にジョン・オズボーンを招聘し実現した模様です.

 会場は新百合ヶ丘駅近く,昭和音大のテアトロ・ジーリオ・ショウワ,都内のホールに比べて近いのが魅力です(笑).今回は2階席の最前列にしたのですが,このホールの場合最前列前に柵があって,背筋を伸ばさないと柵が視界に入り舞台が見えにくいという問題があることがわかりました(2列目の方がいいかも).

 曲は序曲からロッシーニっぽさ全開,アリアはコロラトゥーラありでハイCやDも出てくるし,どんどん場面を盛り上げていくロッシーニ・クレッシェンドも健在です.曲調も全体に明るいので1幕のフィナーレや2幕の三重唱(オテロ、ロドリーゴ、デズデーモナ)なんか歌詞の内容は修羅場ですが、曲だけ聴くとセビリアやチェネレントラと違和感がない感じです.当時(1810年代)のイタリアでは町によっては舞台上で殺人を描くことが禁止されていたケースもあり,そうした町で上演する際にはオテロとデズデーモナの誤解が溶けて最後はハッピーエンドになるように改定された版もあったそうですが,元々の音楽が明るいのでそうしても違和感がない作品だなとは感じました.ヴェルディ作品だとイヤーゴは徹底的な悪人として描かれていますが、ロッシーニではそこまでキャラが立っておらず,チョイワル親父といった感じです.ヴェルディ版ではオテロの嫉妬を掻き立てるアイテムとしてハンカチが登場し,不倫疑惑の状況証拠として重要な役割を果たしますが,ロッシーニ版では手紙がその代役となります.ただ手紙は別に宛名があるわけでもなく,自分的には「オテロ、お前そんな簡単に騙されるなよ」と思ったのでした.

 終演後は久しぶりに牡蠣が食べたいと思い町田のオイスターバーへ,生牡蠣やガンガン焼きなどを堪能したのでした.

Img_9568 Img_9569(左)生牡蠣,(右)牡蠣のガンガン焼き

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2022年11月29日 (火)

喜歌劇「天国と地獄」

Img20221129_17524294  オペラ好きの我が家ですが、夏以降は結構忙しくなかなか鑑賞に出向く機会が無くなっていました(そもそも新国立はシーズンオフでもある).振り返ってみると最後に鑑賞したのが7月3日の日生劇場でのコジ・ファン・トゥッテでした(その前が5月19日新国立のオルフェオとエウリディーチェ).その間11月13日には日生劇場のルチアに行く予定もあったのですが,別用とぶつかってしまい知人にチケットを譲ったということもありました.そんな中4か月半ぶりの鑑賞となったのが表題の天国と地獄,主催は東京二期会です.

 このオペレッタはオッフェンバックの作曲で1858年にパリで初演されたものです.原題は「地獄のオルフェ」,当時リヴァイヴァルブームが起こっていたグルックの歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」のパロディで,本来は最愛の妻エウリディーチェの死を嘆いたオルフェオが地獄に彼女を向けに行くお話だったものを,お互い愛人を持つなど冷え切った関係でありながら世間体を気にして別れられない夫婦の話に改変されています.ナポレオン3世治世下のパリで大成功を納め,オッフェンバックの代表作のひとつとなっています.特に第2幕に登場するフレンチ・カンカンは日本でも運動会などで非常に有名です.ただ,有名な割にはオペラそのものの上演頻度は低いのも事実で,私自身も生鑑賞は過去に2回しかありません.その2回のうちの1回が二期会による公演で,今回はその再演でした(前回は3年前).ジュピターをはじめとした天国の面々が白を基調とした服装なのに対してプルートなど地獄のキャラが赤を使うなど色彩の対比も面白い演出です.今回は1858年の初演版をベースにした上演でした.このため一般的に序曲とされている部分は演奏されませんでした(世間で「天国と地獄 序曲」とされているものはオッフェンバックのオリジナルではない).セリフ、歌全て日本語訳の舞台は肩が凝らずこれぞオペレッタという感じでした.

 オペラって本当に楽しいなと実感した舞台でした(次行けるのはいつか 笑).

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2022年7月 4日 (月)

歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」

Img20220704_17504061  チンチラのナンネルさんの火葬が済んだ翌日,7月3日は日比谷の日生劇場で開催された藤原歌劇団の歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を鑑賞してきました.

 これは俗にモーツァルトの四大歌劇(フィガロ、ドン・ジョバンニ,魔笛、コジ)と称される作品の中でも比較的上演頻度の高い作品です(魔笛には負けますが,フィガロと同等以上、ドン・ジョバンニよりは明らかに上).我が家でも様々なプロダクションを生鑑賞しています.このオペラの上演頻度が高い理由の一つが,これがアンサンブルオペラだからというのがあるように思います.いわゆる難アリアと呼ばれるものがないことからレベルの高い歌手を呼んでこなくても大丈夫というのもあるでしょう.

 今回は藤原歌劇団の新プロダクションで,中心に配置された大きな円舞台を効果的に使った演出となっていました.

 終演後は東京駅八重洲地下のオイスターバーへ.久しぶりに生牡蠣とワインを堪能したのでした.

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