2021年12月 2日 (木)

楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

Meister  12月最初の日は初台の新国立劇場で行われている楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」公演に出かけてきました.

 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」はリヒャルト・ワーグナー主要作品中,唯一の喜劇的な作品です.ただロッシーニの喜劇作品のような底抜けの喜劇というわけではなく,喜劇的な題材の中にもワーグナーらしい精神性や哲学性などが散りばめられているのは言うまでもありません.

 今回の公演は新国立劇場と東京文化会館,ザルツブルク・イースター音楽祭,ザクセン州立歌劇場による共同制作で本来は昨年6月に上演されるはずでした.しかし新型コロナの感染拡大を受けて中止となり今年あらためての公演となったものです.オペラ愛好家の私ですが,ワーグナー主要作品中唯一生観劇したことのないのがこのマイスタージンガーだったので,昨年段階から行く気満々でした.今回公演最終日にようやく鑑賞することができ感慨深いものがあります.

 指揮は新国芸術監督の大野和士,演出はイェンス=ダニエル・ヘルツォークです.キャストはザックスにトーマス・ヨハネス・マイヤー,ヴァルターにシュテファン・フィンケ,ボーグナーにギド・イェンティンス,ペックメッサーにアドリアン・エレート,エーファに林正子etc.です.オケは定番の東フィルや東響ではなく大野和士が音楽監督を務めている都響が起用されました.

Img_6815  演奏は30分の休憩を2回入れて約6時間,正味5時間はワーグナーの中でも「神々の黄昏」と並んで最長レベルです(特に3幕が130分とこれだけで普通のオペラ1本分!).ただ喜劇的な要素が多くストーリーがテンポよく進むことや合唱が多用されるなど苦痛はそれほどでもありません(笑).出演陣は期待にたがわぬ素晴らしい歌唱を聴かせてくださいました.ただ演出に関しては最後ちょっとどうなんだろうと個人的に思いましたが(この作品は強く政治的に利用された過去があるので,特にドイツの演出家にとっては難しいのだとは思います).

 終演後は定番のレストランでのディナー,この日もコース料理となりました.

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(左上)始まりはスパークリングワイン,(中上)前菜はギアラとトリッパ,(右上)パスタはリングイネのクリームソース,(左下)秋鮭のムニエル,(中下)牛ザブトンのロースト,(右下)モンブランのタルトと栗のジェラート

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2021年11月26日 (金)

歌劇「こうもり」

Img014_20211126155901  11月もいよいよ下旬になってきました。秋の夜長は芸術鑑賞の季節でもありますが,昨日11月25日は東京日比谷の日生劇場で行われた東京二期会オペラの歌劇「こうもり」を鑑賞してきました。

 「こうもり」はワルツ王ヨハン・シュトラウス2世によって書かれたウィンナー・オペレッタの最高峰とされる作品です.オペレッタとはセリフと踊りが入った喜劇的なオペラ作品のことで主にドイツ語圏で発達しました.イタリアの喜劇的オペラであるオペラ・ブッファではセリフ部分がレチタティーヴォになっているのに対し,オペレッタでは完全なセリフであるため,演出によって自由に変えられるというメリットがあります.特に「こうもり」の3幕に登場する看守フロッシュの独白は演出の腕の見せ所とでもいうほどたくさんの笑いの要素が盛り込まれます.日本では年末というとベートーベンの第九交響曲が盛んですが,ウィーンでは大晦日にはこの「こうもり」が上演されるのが定番です(そして元旦にはウィーンフィルのニューイヤーコンサートという流れになる).

 日本でも比較的上演頻度の高い作品で、過去に私も何度も生観劇しています。今回の公演は2017年にも行われたアンドレアス・ホモキ演出による再演でした(感染対策を施した演出ということでしたが、前回の記憶が薄れているためどの辺が違ったのかは不明 笑).

Img_6792  指揮者は川瀬賢太郎さん、新進気鋭の若手指揮者です(自分より20近く若い💦).キャストは二期会オペラの恒例であるダブルキャスト制(木土組と金日組に分かれる)で、今回鑑賞したのは木土組、主役のアイゼンシュタインには我が家でも応援している又吉秀樹さん、ロザリンデには幸田浩子さん、ファルケに宮本益光さん、アデーレに高橋維さんという布陣です.注目のフロッシュには歌手だけでなく女優やタレントとしても活躍している森公美子さんが登場しました(すごく笑えました).

 全編で3時間ほど(休憩含む)、本当に肩の凝らないオペレッタはいいなぁと改めて感じた夜でした。

Dsc_2199-1  付近の通りがイルミネーションで綺麗でした.

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2021年10月10日 (日)

歌劇「チェネレントラ」

Img013_20211011160601  緊急事態宣言が明けて2度目の週末となった10月9日,久しぶりにオペラ観劇のために新国立劇場に行ってきました(調べたら5月29日のドン・カルロ以来,ちなみにこの時は感染対策を兼ねて自家用車で行った).

 今回の演目はロッシーニのチェネレントラ,セビリアの理髪師と並ぶ彼のオペラ・ブッファの傑作です.原作はペローやグリム童話にも登場するシンデレラの物語です(チェネレントラはシンデレラのイタリア語読み).童話として非常に有名な作品ですが,ロッシーニはオペラ化に当たって本作のメルヘンチックな部分をそぎ落としたため,魔法使いやカボチャの馬車,ガラスの靴といったアイテムは出てきません.魔法使いに代わってチェネレントラを舞踏会に誘うのは王子の教育係の哲学者で,ガラスの靴の代わりに腕輪が本人確認に使われます.全体的に大人の恋愛喜劇という感じです.

Img_6568(写真)中庭と隣のオペラシティ

 初演されたのは1817年で前年に発表されたセビリアの理髪師に比べるとオーケストレーションが大規模になり合唱も多用されるなどかなりの進化が見られます.

 出演者ではタイトルロールのチェネレントラ(本名はアンジェリーナ)には日本が生んだロッシーニ歌いである脇園彩を,相手役の王子ドン・ラミーロにはルネ・バルベラが起用されました.この組み合わせは去年2月コロナ禍がひどくなる直前に行われたセビリアの理髪師公演と同じです.今回も素晴らしい歌を聴かせていただきました(ドン・ラミーノには2幕に高音が連発する難アリアがありますが,今回はその部分がアンコールされたのは感動ものです).そのほか脇を固めるメンバーとしてアリドーロ(王子の教育係)のガブリエーネ・サゴーナ,アンジェリーナの欲深い継父ドン・マニフィコ役のアレッサンドロ・コルベッリ,往時の従者ダンディーニの上江隼人,長姉グロリンダの高橋薫子,次姉ティーズべの齊藤純子の各氏もそれぞれ味のある歌と演技を見せてくれました.

 演出は粟國淳による新作で,物語全体を映画界での出来事に読み替えての演出で,こちらも興味深かったです.

 終演後はレストランへ.緊急事態宣言が明けて,晴れてお酒が提供されるようになりました(歓喜).

Dsc_2104 Dsc_2106 Dsc_2107 Dsc_2108 Dsc_2109 Dsc_2110(左上)シャンパンをいただきます,(中上)前菜(金美人参のムースと貝類のマリネ,(右上)リングイネ カルボナーラ,(左下)いとより鯛のポワレ,(中下)塾成牛いちぼのロースト,(右下)デザート(洋梨のタルト)

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2021年5月31日 (月)

歌劇「ドン・カルロ」

Img050  単調な生活の中でのたまの息抜きは重要です.特に自分にとっての音楽鑑賞は心の洗濯ともいえる存在です.

 音楽鑑賞といえば,ほぼ90%以上がオペラというほどオペラ好きの我が家ですが,コロナ禍で頻度は減ったものの行けるときには行くようにしています(劇場や音楽家を応援するという意味もある).

 先週末の土曜日,5月29日には初台の新国立劇場で公演中の歌劇「ドン・カルロ」を鑑賞してきました.オペラ観劇と終演後のディナーがセットになる我が家ではいつも電車で行くのですが,現在東京では飲食店での酒類の提供が中止されているため、お酒が飲めないなら無理にディナーにしなくてもよいのと,感染のリスクを減らす意味もあり、今回は自家用車での訪問です(ものすごく久しぶりに首都高を走った 笑).

 今回鑑賞したドン・カルロはマルコ・アルトゥーロ・マレッリによる演出で,2006年に初出,2014年11月に一度再演され今回は2回目の再演となります.2014年の再演の際に鑑賞したはずなんですが,実はあまり記憶がありませんでした(汗).指揮はイタリア人のパオロ・カリニャーニ,ヨーロッパの劇場で活躍している指揮者です.キャストはタイトルロールのドン・カルロがジュゼッペ・ジバリ,フィリッポ2世が妻屋秀和、ロドリーゴが高田智宏、エリザベッタが小林厚子、エボリ公女がアンナ・マリア・キウリ,宗教裁判長がマルコ・スポッティという面々です.コロナ禍ではありますが、メインキャストのうち3人が海外招聘ということで、関係者の努力は大変なものだったろうと想像します.ちなみにフィリッポ2世役は当初ミケーレ・ペルトゥージの予定でしたが、本人の都合でキャンセルになり妻屋さんに変更になったいきさつがあります(妻屋さんは2006年と2014年の公演では宗教裁判長をやっていた).

Img_7414  ヴェルディの「ドン・カルロ」は16世紀スペインに実在したスペイン・ハプスブルク家の親子である国王フィリッポ2世(世界史ではスペイン風にフェリペ2世と呼ばれる)とその長男ドン・カルロの物語です.史実のドン・カルロは資料の少ない人物ですが,18世紀にシラーが設定を大幅に膨らませて戯曲化し,それを原作にヴェルディがオペラ化しました.作曲時期は「運命の力」と「アイーダ」の間でヴェルディの作曲技法が円熟していた時代になります.この作品は元々1867年に開催されるパリ万博(日本が初めて参加した万博,今年の大河「青天を衝け」でもいずれ出てくるでしょう)に合わせてパリのオペラ座から依頼されました.このため当時のフランスのグランドオペラの形式によって書かれた5幕ものでした.言語もフランス語でした.ただ肝心のフランスでの初演が失敗したことと(招待されたナポレオン3世の皇后ウジェニーが熱心なカトリック教徒だったため,反カトリック的な内容を含むこのオペラに嫌悪感を示した),上演時間が長いことから,すぐに改訂が施され,現在主流となっているイタリア語による4幕ものとなっています.今回の公演もこの4幕版です.5月29日公演は千秋楽ということもあり,オケもキャストも非常にまとまってよい演奏だったと思います.劇場の公式ツイッターで,初日に指揮者が登場して拍手が起こったのを聞き,海外招聘キャストが「本当に客がいるんだ!」と感動していたというツイートが流されていましたが、欧米ではまだ客を入れての公演が不可能なんだと実感した次第です.

 

 休憩を含めて3時間半の公演,久しぶりに心の洗濯ができました(ドン・カルロって最後カルロが先代の王(カール5世)に天上に引き上げられるシーンで幕となるんですが、これも一種の地獄落ちだよなと感じました).

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2021年4月27日 (火)

歌劇「ルチア」

Img049  GWが近づいていますが,昨年に続き,我慢(G)ウィーク(W)になりそうな世相です.

 基本的にはお上には逆らわないようにしていますが,とはいえ全く楽しみがないというのも残念なので,先週の金曜日初台の新国立劇場で上演中の歌劇「ルチア」を観劇してきました.

 19世紀前半,ロッシーニとヴェルディを繋ぐ時代を代表する作曲家,ドニゼッティを代表する作品です.2017年初出となったジャン=ルイ・グリンダによる演出の再演で,外の場面における岬と荒波が印象的な舞台となっています.

 コロナ禍で日本への入国が厳しく制限されている状態ですが,指揮者のスペランツァ・スカップッチ,ルチア役のイリーナ・ルング,エドガルド役のローレンス・ブラウンリーが無事に入国し出演しました.スカップッチはジュリアード音楽院,サンタ・チェチーリア音楽院を卒業した近年欧米の歌劇場で活躍著しい女性指揮者,ブラウンリーはかつてのパヴァロッティのような声質のベルカント唱法に優れたテノールで特に最終盤のアリアが良かったです.ただなんといってもこのオペラは主役であるルチアの出来不出来ですべてが決まってしまいます(名作の割に上演頻度が高くないのもルチアを歌える歌手がなかなか確保できないため.20年以上の歴史を持つ新国立でもルチアの公演は今回を含めて3回だけです).今回のルチア役のルングも伸びのある美声で非常に魅力的でした(特に定番の狂乱の場は圧巻).一方で日本人歌手の出来も良く,エンリーコ役の須藤慎吾さんやアルトゥーロ役の又吉秀樹さんの歌も特に秀悦でした.

 ちなみに2017年の初演時にはオリジナルに合わせて狂乱の場ではグラスハーモニカを使用していましたが,今回はオケピッチのソーシャルディスタンスを保つためとして一般的なフルートで代用されていました.

Dsc_1414 (写真)2017年に使用されたグラスハーモニカ

 我が家では通常オペラ鑑賞といえばその後のディナーもセットなんですが,まん延防止等重点措置が出されている現状のため終演後のレストランは残念ながら休止となっているのでした.

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2021年2月12日 (金)

歌劇「フィガロの結婚」

Img009_20210212145901  昨日は建国記念日の祝日でした.近年は一部の祝日が移動祝日として月曜日に持ってこられる傾向がありますが,この建国記念日は憲法記念日などと共に日時が決まっている祝日のひとつです.今年は木曜日となりました.月曜が休みで三連休ができるのも嬉しいですが,週の途中に休みがあるのもなんとなくホッとした気分になりいいものです.

 そんな建国記念日は新国立劇場で上演中の歌劇「フィガロの結婚」を鑑賞してきました.

 オペラ好きの我が家ですが,2008年に当地に越して来て以降家訓(?)となっていることがあります.それが「最低年に1回はモーツァルトのオペラを鑑賞すること」.俗にモーツァルトの四大歌劇と呼ばれる「フィガロの結婚」,「ドンジョバンニ」,「コジ・ファン・トゥッテ」,「魔笛」であれば新国立,二期会,藤原歌劇団のどこかで必ずやっているので基本的には見逃すことは無いはずです.しかし昨年2020年は新型コロナの影響で春に劇場が閉鎖になり上演予定作の多くが中止に追い込まれたことから,あわやついに年間鑑賞ゼロか!という事態になりました.しかし12月に小田原市民オペラの魔笛公演を鑑賞できたため,かろうじて義務は果たせています(当初は新国立のコジと藤原のフィガロが予定されていた).

 今回のアンドレアス・ホモキ演出のフィガロは2003年の初出以来2~3シーズン毎に上演され続けている新国立の定番レパートリーです.白と黒以外の色を極力排し舞台装置も極めてシンプルな印象的な舞台となっています.コロナの影響で日本への入国制限が厳しくなっていることで指揮者と一部キャストが変更になっていました(先月のトスカでスカルピア役をやったダリオ・ソラーリがそのままフィガロ役で出演,思えばほぼ3か月日本に滞在しているんだな).

 終演後はこれまた恒例のレストランへ.充実のコース料理でした.

Dsc_1540 Dsc_1541 Dsc_1542 Dsc_1543 Dsc_1544 Dsc_1545 (左上)スタートはスパークリングワイン,(中上)前菜ノルウェーサーモンと赤海老のマリネ,(右上)パスタ 牡蠣とパンチェッタ、ホウレンソウのクリームソース,(左下)鰤とじゃが芋のアルフォルノ,(中下)熟成牛のロースト,(右下)ガトーショコラ、ビスタチオのジェラート

 

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2021年2月 4日 (木)

歌劇「ラ・ボエーム」

Img008_20210205110001  ちょっと時間が経ってしまいましたが,1月31日の日曜日に東京文化会館で行われた藤原歌劇団のラ・ボエーム公演を鑑賞してきました.1896年にイタリアのレージョ劇場で初演されたプッチーニの代表作のひとつです.内容を一言でまとめると19世紀前半,パリの下町の青春群像です.

 実はこのオペラ,主要登場人物がすべて平凡な庶民であるという点で特記すべき作品です.それまでのオペラの登場人物というと,将軍とか国王,貴族,お姫様など社会の上層部の人物でした(主人公がそうでない場合でもかならずそれらの人物は登場した).しかしこのラ・ボエームは主要6人全てが若い芸術家の卵らパリの下町の住民です.本当にその辺の路地裏に転がっていそうな青春模様が繰り広げられるオペラです.19世紀末から20世紀初頭はこうした市井の人々をメインにしたオペラが数多く作られた時代で,レオンカヴァッロの道化師やマスカーニのカヴァレリア・ルスティカーナといったいわゆるヴェリズモオペラが有名です.

 ラ・ボエームは全4幕構成,典型的な起承転結のスタイルを取っています.第1幕は貧しい若者たちの他愛のない共同生活から始まり,詩人ロドルフォとお針子ミミの出会いと恋の始まりが描かれます.

 続く第2幕はクリスマスイブ,大勢の人出で賑わうカルチェラタンが舞台です.若者たちがカフェで飲み食いしているうちに,画家マルッチェッロのかつての恋人ムゼッタが登場,いろんなドタバタがコミカルに描かれる楽しい幕となっています.

 第3幕は打って変わって寒い雪の早朝、若者たちに恋するだけでは生活ができないという厳しい現実が突きつけられる幕です.すでに病に侵されているミミを,どうしてあげることもできないロドルフォは彼女との別れを決意します.

 そして最後の4幕は,元の共同生活に戻った芸術家たちの生活が描かれる前半,愛するロドルフォのもとに戻ってくるミミのいじらしさと悲しい死別が描かれる後半に分かれます.全編とにかくプッチーニの甘美な音楽と合わせて本当に泣けます(開演に先立って行われる折江忠道総監督による作品解説でも「ボエームは3大泣けるオペラのひとつです(あとの二つは蝶々夫人と椿姫)」と力説していました).

 今回はコロナ対策ということもあって,歌い手は全員フェイスシールド着用,特に人が密集する2幕では合唱を歌い手は前に出ない,子供合唱部分は事前の録音等演出上の工夫がされていました.なにはともあれ,やっぱり泣ける作品だと実感しました.

Dsc_1519  終演後は会館近くの佐渡島料理のお店で夕食(感染対策のため個室)をいただき帰宅の途に就きました.

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2021年1月24日 (日)

歌劇「トスカ」

Img047  緊急事態宣言が続いている首都圏ですが,昨年春との違いのひとつが劇場が開いていること.これは聴衆が静かに鑑賞するコンサート(特にクラシックのコンサート)が複数人がマスクを外して行う会食に比べて感染リスクが高くはないことによると思われます.不要不急の外出自粛が言われていますが,日々の精神的なストレスの緩和のためにも芸術鑑賞は重要だということで、土曜日のお昼に初台の新国立劇場に行ってきました.鑑賞した演目はプッチーニ作曲のトスカです.

 オペラ作品というと,それこそ全部でいくつあるのか数えるのも困難ですが,その中で誰もが挙げるであろう名作となると,結構絞られます.その中でもプッチーニによって19世紀最後の年になる1900年に発表された「トスカ」は,たとえアンチ・プッチーニの人でさえ認めざるを得ない名曲中の名曲でしょう.

 オペラ初心者にお勧めする作品として真っ先に上がるのもこのトスカです(自分も絶対にこれを勧める).理由としては全体で2時間(休憩除く)とほぼ映画並みの長さであること,ストーリー展開が早くオペラ一般にありがちな劇の停滞がないこと.登場人物のキャラが立っていて感情移入しやすいこと,名アリアがあるのはもちろん,大迫力の合唱も登場すること等々,オペラの魅力がこれでもかと凝縮されていて飽きさせないからです.2000年に初出となったアントネッロ・マダウ=ディアツ演出によるプロダクションは舞台装置や衣装の美しさ等から新国立劇場の定番レパートリーとして知られ,近年はほぼ3年に1回上演されています(自分もその都度鑑賞している).

 舞台はナポレオンがヨーロッパに大きな影響を及ぼし始めた1800年6月17日のローマです.共和主義者の政治家アンジェロッティとその友人の画家カヴァラドッシ,彼の恋人トスカと,王党派で共和派を厳しく取り締まる警視総監のスカルピアが織りなす悲劇です.1幕冒頭のカヴァラドッシによるアリア「妙なる調和」,1幕最後の大合唱「テ・デウム」とスカルピアの独白の場面,2幕のスカルピアがトスカを追い詰めていく場面とそれに続くトスカのアリア「歌に生き恋に生き」,3幕のカヴァラドッシの名アリア「星は光りぬ」など聴きどころ満載です.

 今回は指揮者のダニエレ・カッレガーリ,トスカ役のキアーラ・イゾットン,カヴァラドッシ役のフランチェスコ・メーリ,スカルピア役のダリオ・ソラーリの4人が海外招聘でした.現在日本は緊急事態宣言の発出と前後して外国人の入国を原則として禁止しています.彼らは入国禁止措置が出る前に入国し,14日間の待機を経てリハーサルに臨んできたそうです(かれこれ1か月以上前から日本に来ている).欧米の歌劇場も閉鎖になっているところが多いので,彼らにとっても貴重な仕事の機会なんでしょうが,こんな世界情勢の中来てくれたこと自体に感謝です.個人的には1幕最後のテデウムの場面が好きなんですが,あんな密な場面、コロナ時代はどう演出が変化するのか楽しみだったんですが,ぱっと見いつもと変わらない感じでした(笑).

 終演後は劇場内のレストラン「マエストロ」で久しぶりの外食,終演が17時と時間はたっぷりあったのでこの日はフルコースにしました.ワイン共々美味しかったです.こうして日頃のストレスを軽減したのでした.

_res_blogd445_constantinus21_folder_1733 Dsc_1514_original Dsc_1515_original Dsc_1516_original Dsc_1517_original Dsc_1518_original(上左)劇場内レストラン・マエストロ,(上中)前菜のトリッパとギアラ、野菜のトマト煮込みグラタン仕立て,(上右)生パスタ牛荒挽き肉とポルチーニのボロネーゼ,(下左)鮟鱇と海老、渡り蟹のブイヤベース、(下中)熟成牛のビステッカ じゃが芋のグラタン添え 赤ワインソース,(下右)苺のムースミルクレープ とちおとめのジェラート添え

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2020年12月 5日 (土)

ヴォルフガング忌

Img001  今日12月5日は著明な作曲家,W. A. モーツァルトの命日です.1791年のこの日彼はウィーンで35年という短すぎる生涯を終えました.死因に関しては諸説ありますが,リウマチ熱に合併した急性心不全,腎不全とも言われています(同時代の作曲家サリエリによる毒殺説もありましたが,これは陰謀論の域を出ません).

 モーツァルト好きの我が家ではこの日,彼の様々な音楽を聴いて偲ぶことが多いのですが,今年は小田原市内でモーツァルトの催し物があったため出かけてきました.

 当地出身の声楽家,飯田裕之さんが立ちあげた小田原オペラの旗揚げ公演としてモーツァルト最晩年の傑作,歌劇「魔笛」が取り上げられたのです.もちろん我が家でも大好きな作品です(生鑑賞したことのあるオペラ作品ではおそらく回数第1位).舞台装置はシンプルに,映像をメインに据えた演出で現代的な感じでした(映像作品として作る意図もあったようです).素晴らしい舞台でした.ただコロナ禍のもとでの準備ということなのか,合唱が基本的に省略されていたため,1幕後半や2幕のザラストロがメインの場面はやや寂しいものになっていました(合唱なしの魔笛は例えるなら,牛肉は入っているが玉ねぎが省略された牛丼かなぁと思いました 笑).

 ともかく今後ますますの活躍が期待される団体です.

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2020年11月28日 (土)

オペラ2つ

 11月下旬に入り,新型コロナウイルス感染症の再拡大が言われるようになっています.世間では第3波などともいわれ,地域によっては飲食店の時短営業要請なども出ているようです.春の緊急事態宣言当時を彷彿させますが,あの時と今とで大きく状況が異なるのがコンサートなどの劇場の様子です.春は劇場そのものが閉鎖になり,コンサートでのイベントも基本的にすべて中止となっていましたが,今回は(もちろん感染対策に留意しつつ)劇場は開いていてコンサートも行われています.これはマスクをして静かに鑑賞し観客は声を出さないクラシックコンサートと,マスクなしで大人数で行う会食とでは感染リスクに大きな差があることが理解されてきた点が大きいのだろうと思います.コンサート,とりわけオペラ大好き人間の私にとってはありがたいことです.

Img044  先週末から今週にかけて2つの舞台を鑑賞してきました.ひとつは新国立劇場の「アルマゲドンの夢」,これはH.G.ウエルズのSF(創元SF文庫版の邦訳では「世界最終戦争の夢」)を原作とし,現在イギリスを拠点に活動している作曲家藤倉大によるオペラです.今回世界初演の舞台で,私が見に行ったのは11月21日(土)の回です.SFが原作というのは珍しいので楽しみにしていました.

 舞台は現実である電車の車内の場面と,夢(あるいは未来?)の場面が交互に現れ展開していきます.そのテーマは全体主義の台頭と社会不安,戦争というもので,まだ第1次世界大戦すら始まってない1901年にまるで未来を見ていたかのような作品を書いたウエルズの先見の明は凄いです.

Dsc_1361  リディア・シュタイナーによる演出は映像を多用した21世紀的なもの.特に独裁者や全体主義者たちの姿を映像で表現するのは,彼らがプロパガンダの手段として利用するテレビや映画といったメディアを表すのだろうと思いました.

 キャストについては,今コロナ下で海外から歌手を招聘しにくい時代なのですが,今回は当初予定キャストを全員集めたとのことで,劇場側のこの公演にかける思いの強さを感じました(入国後2週間の待機が必要なのでその分早く来日させたとのこと).強い印象を受けた舞台でした.

Img045  もう一つは東京二期会の「メリー・ウィドウ」,こちらはレハールによって作曲されたオペレッタの名作です.東京二期会では過去に何度も上演されてきた演目ですが,今回は新進の演出家眞鍋卓嗣による新演出でした.観劇したのは11月25日(水)の回です.オリジナルの言語はドイツ語ですが,今回は歌部分も含めすべて日本語訳での上演でした(ジングシュピールやオペレッタの場合,セリフ部分のみ日本語というのはよくあるが全部日本語は珍しいかも).

Img046  幕が開いて歌が始まると,なんか既視感があります.実は日本語訳がかつて弘前大学時代に参加した市民オペラでの同作品の日本語訳と同じだったのです(3幕のマキシムの場面に,オッフェンバックの天国と地獄のカンカンを挿入するパターンまで一緒でした).元々好きな作品でしたが,懐かしさも加わって感動的でした.先のアルマゲドンの夢とはまったく異なる,肩の凝らない作品ということもあり,リラックスできた舞台でした(写真は市民オペラに参加した際のもの,控室かな?).

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