2020年2月18日 (火)

歌劇「セビリアの理髪師」

Img033  最近北海道旅行の記事が続いていましたが,もちろんそれ以外の活動もしています(笑).先週火曜日,建国記念日の祝日だった2月11日に新国立劇場で行われている,歌劇「セビリアの理髪師」公演に行ってきました.

 1980年代以降のロッシーニルネサンスによって,再評価がなされたロッシーニですが,なんといっても代表作がこの「セビリアの理髪師」であることは変わりません.私もとても好きな作品で,特に学生時代はポネル演出,アバド指揮ミラノスカラ座による演奏(伯爵:ルイジ・アルヴァ,ロジーナ:テレサ・ベルガンサ,フィガロ:ヘルマン・プライ)に大ハマりしたものです.

 就職して経済的に余裕ができ,さらに時間的にも融通が利くようになった2000年代以降は劇場での生鑑賞も可能となりいくつかの公演を見る機会がありました.特に新国立劇場は2,3年おきに上演してくれるのでありがたいです.

 で,そんな新国立のセビリアですが,ケップリンガーによる演出は2005年が初出であり,その後2006年,2007年,2012年,2016年と再演されていて今回は通算6回目ということになります.何度も見てる演出なんですが,注目は前回2016年から試みられている,2幕のクライマックスでの伯爵のアリアです.

 こアリアは,バルトロたちに自分がアルマヴィーヴァ伯爵であることを明かし,逆らうのをやめろと宣言する場面の歌です.長大なコロラトゥーラの超絶技巧を要求される難アリアで,初演の歌手だったマヌエル・ガルシアの力量を前提に作曲されたといわれています.ただ裏を返すと最高クラスの歌手でないと歌いこなせないということでもあり,このアリアは初演からほどなくカットされて歌われることが無くなってしまいました(もっとも,出演する歌手に合わせてアリアなどを改変するのはこの時代では至って普通のことでした).

Img_6236  その習慣が20世紀に至るまで続き,一般の公演でこのアリアも演奏されることもありませんでしたが,近年は徐々に歌われることが出てきたようです.そして2016年の公演で伯爵役だったマキシム・ミノロフがついにこの曲を披露したのです.これが素晴らしくて,機会があればまた聴きたいなと思ってたんですが,今回伯爵を歌うルネ・バルベラもまたこのアリアを歌うとのことで楽しみにしていたのでした.

 やっぱり素晴らしかったです.2幕の例の伯爵のアリアももちろん良かったですが,ロジーナ役の脇園彩さんが良かったです(ロジーナを当たり役にしているようです).

 

動画は劇場公式のものです.

 マチネの公演だったので終演後はレストランでゆったりと食事です.メインは絶対ロッシーニ風だろうと思ってたんですが,熟成リブロースのビステッカでした.

Img_6227 Img_6232 Img_6230 Img_6234(この日料理 前菜除く)

 食事を含めてのオペラ公演が我が家のパターンです.

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2020年1月28日 (火)

歌劇「ラ・ボエーム」

Img031  オペラ好きの我が家,先日は新国立劇場で公演中のプッチーニの「ラ・ボエーム」を観劇してきました.

 「ラ・ボエーム」(1896年初演)は「トスカ」(1900年),「蝶々夫人」(1904年)と並ぶプッチーニの代表作です.当時のイタリアオペラ界はレオンカヴァッロの「道化師」やマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」といったヴェリズモ・オペラが流行しており,プッチーニも一応その系譜に連なります.ヴェリズモ・オペラといえばヴェルディの時代のような王侯貴族がメインとなるような作品ではなく,市井の人々の日常を扱い,その営みを生々しく描写するスタイルです.この「ラ・ボエーム」は芸術家の卵ともいうべき無名の若者たちの群像劇という点ではヴェリズモ的ですが,一方で甘美なメロディーというプッチーニらしさも十二分に堪能できる作品となっています.

 粟国淳氏演出の舞台は2003年の初出以来,今回が5回目の再演となります(自分も2012年,2016年に鑑賞している).元々奇をてらった演出にはなりにくいオペラですが,起承転結がわかりやすく安心してみていられる演出です(初出から20年近く再演され続けているだけのことはあります).今回はイタリア人のパオロ・カリニャーニ氏の指揮で,キャストはミミがニーノ・マチャイゼ,ロドルフォがマッテオ・リッピ,マルチェッロ:マリオ・カッシ,ムゼッタ:辻井亜季穂,ショナール:森口賢二,コッリーネ:松位浩という布陣でした.

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 感想ですが,やっぱりいいオペラだなぁと実感しました.キャストではロドルフォのマッテオ・リッピが若くて貧しい若者っぽい感じで特によかったです.2幕のクリスマスイブのカルチェラタンの場面の合唱団は安定の実力だし,満足した夜でした.

 

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2019年12月 6日 (金)

歌劇「椿姫」

Img029  冬はコンサートシーズン,寒くて夜が長いこの季節は演奏会などコンサート鑑賞にうってつけの季節です.ヨーロッパなどの主要歌劇場も秋から冬にかけてがシーズンとなり様々な作品が上演されます.日本の新国立劇場もそれに倣い,秋から翌春までをシーズンとしています.昨年から大野和士氏が芸術監督に就任した同劇場ですが,今年は初っ端からチャイコフスキーの「エウゲニ・オネーギン」を取り上げるなど,いよいよその本領が発揮されてきた感じとなっています(2作目がドニゼッティの「ドン・パスクワーレ」).

 そんな新国立劇場年内最後の公演が表題の歌劇「椿姫」,ヴェルディのみならず19世紀イタリアオペラを代表する傑作です.フランスの作家アレキサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)原作の同名の戯曲を見たヴェルディが感激して自分の次回作として取り上げたと言われています.1853年3月の初演は準備不足から失敗に終わったとされていますが,近年ではそれを否定する説も出てきています.美しいアリアの数々,テンポよく進んでいくストーリー,全体で2時間程度とよくまとまっていることもあって非常に人気があり,世界的にも上演頻度の高い作品です(海外歌劇場の引っ越し公演だけではなく,市民オペラレベルでもよく上演されている作品です).オペラ入門編としても最適な作品で,自分もなじみがない人にお勧めする作品としてプッチーニのトスカとともにこの作品を挙げます.昨晩その公演に行ってきました.

Img_5855 Img_5861  今回の公演はヴァンサン・ブサール演出のプロダクション,2015年の初出から3回目の上演で私はそのすべてを見ていることになります.鏡を効果的に使った美しく安心して見られる舞台です.また一般的にカットされることが多い2幕最初のアルフレードと最後のジェルモンのカバレッタがカットされずに演奏されるのもこの演出の魅力です(自分的に好きな部分なので).キャストではヴィオレッタ役のミルト・パパタナシュさんが素晴らしい.美人だし華やかな中に影もある舞台映えのする歌手でした.アルフレードのドミニク・チェスクさんは本来この役をやるはずだったヴァン・アヨン・リヴァスさんが先月緊急降板(家族の事情らしい)したための代役でした.アリアなどで所々セーブしているなと思う場面はありましたが,逆にヴィオレッタを引き立てる効果があったのかなという感じです.ジェルモンは2015年,2017年の公演ではドゥフォール男爵を演じていた須藤慎吾さん(出世した!).落ち着いた歌唱で2幕のヴィオレッタとの絡みも良かったです.そういえばジェルモンってお家第一の田舎紳士なんですが,2幕でヴィオレッタに言っているセリフは穏やかではあるものの,内容はかなりひどくて,ヒロインに精神的ダメージを与える点では,実はトスカのスカルピアと大差ないのではと思いました.それにしても3幕で狼藉を働いたアルフレードに,「私の息子はどこへ行ってしまったんだ」と語る場面がありますが,「お前のせいだろ!」と心の中で突っ込んだのは内緒です(笑).やっぱり名作だなぁと強く感じた舞台でした.

Img_5862  終演後は劇場内のレストランへ.この日はパスタと黒豚のコースでした(ワインもいただいたのは言うまでもありません).デザートがフォンダンショコラだったんですが,その名を聞いた瞬間私の脳内には完顔阿骨打(ワンヤンアグダ)の名が浮かんだのはナイショです(リズムと抑揚が一緒なんです 笑).

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2019年11月24日 (日)

喜歌劇「天国と地獄」

Img028  11月21日木曜日,この週後半に日生劇場で開催中の東京二期会オペラ,喜歌劇「天国と地獄」公演に行ってきました.

 このオペレッタはオッフェンバックの作曲で1858年にパリで初演されたものです.原題は「地獄のオルフェ」,当時リヴァイヴァルブームが起こっていたグルックの歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」のパロディで,本来は最愛の妻エウリディーチェの死を嘆いたオルフェオが地獄に彼女を向けに行くお話だったものを,お互い愛人を持つなど冷え切った関係でありながら世間体を気にして別れられない夫婦の話に改変されています.ナポレオン3世治世下のパリで大成功を納め,オッフェンバックの代表作のひとつとなっています.オペラそのものを知らない人でも,序曲の最終部分は聴いたことがあるのでないかと思います(自分の世代だと小学校の運動会に必ずかかっていた).ただ,有名な割にはオペラそのものの上演頻度は低いのが現実で,私自身も生鑑賞は過去に1回しかありませんでした(その1回が1991年の弘前市民オペラ).今回はその時以来の何鑑賞ということで楽しみにしたものです.二期会オペラはダブルキャストによる4回公演が定番でなんですが,今回は木曜土曜版の方に行きました.

 オリジナルはフランス語なんですが,今回はアリア等含めてすべて日本語上演でした(セリフ部分は日本語というパターンは「魔笛」や「こうもり」などでもよくありますが,二期会クラスで全編日本語は珍しいかも).演出は鵜山仁氏で指揮者は大植英次氏,天国系は白,地獄系は赤をメインカラーにした演出,非常に楽しい公演でした(個人的にはプルートの雰囲気がブッダっぽくて,イエスっぽいジュピターと併せて聖☆おにいさんを意識しているのかなどと思った).

 それにしてもこの作品の上演頻度の低さの訳って何なんだろう? 同じオペレッタでも「こうもり」はそれこそ各地で頻回に上演されているのに…(オッフェンバックとシュトラウスの政治力の差か 笑).そんなことを考えた11月下旬でした.

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2019年11月15日 (金)

歌劇「ドン・パスクワーレ」

Img025  芸術の秋です.思うに秋から冬にかけてオペラなどのコンサートシーズンが始まるのは,日照時間と関係があるように思います.特に緯度が高いヨーロッパでは夏は9時ごろまで明るい一方で,冬になると日照時間は極端に短くなります.そんな長い夜(松山千春ではない)の楽しみとしてコンサートが盛んになったのではということです.そんな秋も深まった今週の月曜日,新国立劇場で公演中の歌劇「ドン・パスクワーレ」を観劇してきました.なかなか上演される機会の少ない作品ですが,2年目を迎えた大野和士芸術監督がいよいよ本気を出してきたシーズンの2作目ということで期待して出かけました.

 このオペラは19世紀前半のイタリア・オペラを代表する作曲家の一人であるドニゼッティによる喜劇作品です.資産はあるがケチな老人(ドン・パスクワーレ)が若い娘と結婚しようと画策するものの,周囲に邪魔され揶揄されるという内容です.ドニゼッティの喜劇といえば「愛の妙薬」が有名ですが,やや牧歌的な雰囲気を醸し出している「愛の妙薬」に比べると,この「ドン・パスクワーレ」の方がより古典的なオペラ・ブッファらしい内容です(ロッシーニみたいな感じ).しかしながら作曲年代でいえば,前者が1832年に作曲されたのに対し,後者は1842年(初演が1843年)とドニゼッティとしては晩年の作品です.19世紀イタリアの大作曲家ヴェルディがすでに作曲活動に入っている時期であり,「ドン・パスクワーレ」が作曲された1842年は,奇しくもヴェルディ最初の傑作である「ナブッコ」が作曲された年でもあります.

 そんなオペラ史の転換期にどうして古風なオペラ・ブッファをと感じます.しかしこの作品,一見すると単に身の程知らずの老人がやっつけられて終わるというセビリアの理髪師のバルトロ的なノリのように見えながら,作品をよく聴くとドン・パスクワーレの哀愁や彼をやっつける娘(ノリーナ)の微妙な情が表現されるなど,ロッシーニ時代とは違う,革命を経て人間性が重視されるようになった時代の作品であることがわかります.

Img_5824  で,実際の演奏ですがタイトルロールのドン・パスクワーレを歌ったロベルト・スカンディヴィはヴェルディ作品にもよく出演している方ですが,本作ではまさにブッフォ・バスの重厚な歌がさすがでしたし,小悪魔的なノリーナを歌ったハスミック・トロシャンも伸びやかな若さを感じさせる声でした.そして自分的にはエルネスト(ドン・パスクワーレの甥)役のマキシム・ミロノフの軽い,まさにレッジェーロという感じの声が良かったです.前述のようにパスクワーレとノリーナがやや情を表現する役だけに,エルネストの若い素朴な明るさは彼らとの対比がしっかり出ていてよかったと思います.また3幕のみの登場でしたが,新国立劇場合唱団はやっぱり迫力が凄いです.

 とまあ,とりあえず満足したドニゼッティオペラでした.

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2019年11月 1日 (金)

歌劇「エウゲニ・オネーギン」

Img022_20191101134001  今日からいよいよ11月に入りました.令和元年も残すところ2か月ということになります.本当に月日の経つのは早いです.

 ちょうど1か月前の10月1日に、新国立劇場の新シーズンが開幕しました.昨年から新しい芸術監督として大野和士氏を迎えた劇場ですが,昨シーズンの演目は新演出の魔笛に始まり,カルメン,ファルスタッフ,タンホイザー,蝶々夫人,トゥーランドットとややオーソドックスな選曲という印象でした.しかし2年目となった今年は,初っ端からチャイコフスキーの「エウゲニ・オネーギン」とう一風変わったところから入るなど,いよいよ本気を出してきた(笑)感があります.もちろん私も初の生鑑賞ということで楽しみにしていました.

 エウゲニ・オネーギンが作曲されたのは1877年から78年頃で,ちょうど交響曲第4番や組曲「白鳥の湖」と同じころです.原作は1830年代に書かれたアレクサンドル・プーシキンによる同名の小説です.内容としては若い貴族エウゲニ・オネーギンの物語ということになるのですが,原作では描かれている彼の背景がオペラ化にあたってすっぽりカットされているため,単純にストーリーだけを追えば,オネーギンが若い真面目な娘の求愛を受けるもののこれを断り,さらには彼の行動に怒った友人に決闘を申し込まれてその友人を殺してしまい,ショックを受けて放浪の旅に出て都会に出てきたら,自分が拒否した娘が侯爵夫人になっていて,その美しさに感激し求愛するも逆に拒否されて失望… という三文小説みたいな展開になっています.

 というわけで,このオペラの魅力は何といってもチャイコフスキーの音楽ということになります.第1幕第2場のオネーギンに恋する娘タチヤーナが手紙を書く場面や第2幕第2場の決闘に臨むレンスキーのアリアが代表的な場面です.今回はオネーギン歌いとして世界中で活躍しているワシリー・ラデュークがオネーギンを,様々なレパートリーで活躍しているエフゲニア・ムラーヴェワがタチヤーナなど,主要キャストにロシア出身の歌手を配置した演奏となりました.演出はモスクワ生まれのドミトリー・ベルトマンのもの,全体が絵画のような美しい舞台でした.

 ちなみにこの公演,自分は当初10月12日の千秋楽で鑑賞する予定だったんですが,旅行直後で疲れているかもしれないと思い,1日の初日にチケットを変更した経緯がありました(翌2日は朝から大学の講義があるので,終演後夜行バスで向かった).その後台風19号の接近により,12日は都内の公共交通機関が運航停止を決めたため,この日の公演は中止になってしまいました.これも運だなぁと思った次第です(逆のパターンで2011年3月の震災直後の「ばらの騎士」公演が自分が行く回のみ中止になったことがある).

Img_5313 Img_5314  ちなみに我が家では終演後のディナーも含めてがオペラ鑑賞です (^^)v

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2019年7月23日 (火)

歌劇「トゥーランドット」

Img022  先日,7月18日新国立劇場で上演されたプッチーニの歌劇トゥーランドットを鑑賞してきました.

 トゥーランドットはプッチーニが最後に取り組んだオペラです.1896年のラ・ボエーム,1900年のトスカの成功によってイタリアオペラ界の第一人者となったプッチーニですが,20世紀に入ると三部作と呼ばれる異色な作品や,日本を舞台にした蝶々夫人(1904年),アメリカを舞台にした西部の娘(1910年)といったご当地オペラに取り組むようになります.トゥーランドットはこのご当地オペラの系譜に連なるもので舞台は中国の北京です.蝶々夫人で日本の旋律が取り上げられたのと同じように,本作では中国の旋律が採用されているのも特徴です.

 今回の公演は新国立劇場と東京文化会館の共同制作で,演出家として斬新な演出で世界的に有名なラ・フーラ・デルス・バウスの芸術監督のひとりであるアレックス・オリエを招聘しています.

 よく知られているようにこのオペラは未完のままプッチーニが亡くなり,フランコ・アルファーノの補筆によって完成するという,モーツァルトのレクイエムのようなパターンをたどりました.その補筆部分に関しては,初演の指揮者アルトゥーロ・トスカニーニは不満があったらしく初演ではプッチーニの絶筆の部分(リューの死の部分)で指揮棒を下ろして幕として,2日目から完成版を上演したというエピソードが残っています.

 実際にリューの死からエンディングまでの流れはやや唐突な感が否めず(リューの死でトゥーランドットが急に愛に目覚めるなど),仮にプッチーニだったらどういう構成にしたのかという議論は昔からあります.今回演出家のオリエは,このオペラに流れる軸から導き出した独特の演出で最後をまとめていました(新国立の公演は終わりましたが,びわ湖や札幌での公演がまだこれからなのでネタバレは避けます).タイトルロールのテオリン(指環のブリュンヒルデ以来だ)やカラフ役のテオドール・イリンカイ,リュー役の中村恵理の歌唱も素晴らしく,見ごたえのある舞台でした.

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 ちなみにこの作品の初演,1926年4月25日は大正15年で,同年日本では最初のプロオーケストラである新交響楽団(今のNHK交響楽団)が結成されています.

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2019年6月 8日 (土)

歌劇「蝶々夫人」

Img016  GW10連休に仕事をした鬱憤を晴らすかのように活動的になっている6月上旬ですが,6月7日(金)はこの週3つ目となるコンサートに出かけてきました.行ったのは新国立劇場の歌劇「蝶々夫人」公演です.

 19世紀以降ロッシーニ,ベッリーニ,ドニゼッティ,ヴェルディと連なってきたイタリアオペラの本流を継いだのは間違いなくプッチーニでしょう.出世作となった1893年のマノン・レスコーから,1896年のラ・ボエーム,1900年のトスカと次々にヒット作品を世に出し,その名声は天下にとどろいていました.そんなプッチーニの20世紀最初の作品がこの蝶々夫人です.舞台は日本の長崎,日本人女性蝶々さんの悲恋物語で,オペラとしてはあまりにも有名な作品です.

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(写真)今シーズンからホワイエにこうした撮影スポットが用意されています

 今回の公演は栗山民也氏の演出によるもので,2005年の初出から今回で7回目の再演になる同劇場定番のレパートリーです.ピンカートン役にするアメリカ生まれのスティーブン・コステロを起用したほかはすべてのキャストが日本人によるものでした(近年の蝶々夫人はこのパターンが多い.舞台の雰囲気もそうだが,全体的に日本人歌手の技量が上がっているところが大きいように感じる).何度も鑑賞した作品で,次どんな音楽が来るのかもすべてわかっているんですが,やっぱり泣けました.プッチーニの音楽って劇の展開を盛り上げる効果が抜群で,いわゆる映画音楽の走りなんですが,いやぁ凄いですね (^^)v

Img_1 (写真)学生時代の懐かしの写真(右端が自分,蝶々さんちの使用人です)

 蝶々夫人といえば自分にとっても非常に思い入れの深い作品です.それは学生時代に市民オペラで参加した経験があるから.6年間の在学中2度蝶々夫人の公演があり,2度とも参加する機会を得ました.なのでこの作品を鑑賞すると,当時の練習の様子などを思い出して感慨深いのです.

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2019年5月19日 (日)

歌劇「ドン・ジョヴァンニ」

Img013  毎年余韻を長く引きずるのが特徴のひの新選組まつり,今年も一週間近くが経過したもののいまだ抜けきれておりません(笑).とはいっても現実は確実に自分に迫ってくるので,その辺の折り合いをどうつけていくかというのが問題になります.

 で,現実とはちょっと違うのですが,この金曜日に新国立劇場にオペラ観劇に繰り出していました.演目はW. A. モーツァルトのドン・ジョヴァンニです.俗にダ・ポンテ三部作と呼ばれるモーツァルト後期のイタリア語オペラ3作品の2作目になります.知名度は抜群な作品なんですが,フィガロやコジ・ファン・トゥッテ,あるいは最晩年の魔笛に比べると意外に上演頻度は多くないような気がします.これはどうしてだろうと思ってたんですが,フィガロやコジは基本的にアンサンブルオが多いオペラなので,歌手一人ひとりの技能が飛びぬけていなくてもよいステージとなりうるのに対して,このドン・ジョヴァンニは何と言っても主役であるドン・ジョヴァンニの出来で舞台の質が大きく左右されてしまうからなのかなと思います.

 騎士にして稀代の好色家,ドン・ジョヴァンニが放蕩の限りを尽くして最後は地獄に落ちる話ですが,単純な勧善懲悪モノではないのは,タイトルロールのドン・ジョヴァンが悪人でありながら,非常に魅力的な人物だからです.彼は極めて多面性を持った人物で,悪魔と天使がその中に同居しています.役柄としてはバリトンですが,時には強く,時には甘くというように様々な歌い方が望まれる役です.

Img_1957  今回の公演でそんなドン・ジョヴァンニを歌ったのがイタリア出身の二コラ・ウリヴィエーリさん.プログラムによると得意役がフィガロの結婚のフィガロや,セビリアの理髪師のドン・バジーリオとのことなので,様々な表現ができる歌手のようです.この日も色気のある素晴らしいい声を聞かせてくださいました.オペラの場合,その人物の存在で舞台が決まってしまうような役って,一般には女性役が多いんですが,ドン・ジョヴァンニは数少ないこの手の男性役だなと思いました(ドン・ジョヴァンニと対峙する騎士長役の妻屋さんも身長は欧米人に負けないし,声量もあるので二人の対決は迫力がありました.演出は新国立のレパートリーになっているグリシャ・アサガロフによるもの.チェスの駒が印象深い舞台ですが,今回もあの巨大人形の意味がよくわかりませんでした(ちょくちょく観てる印象なんですが,前回は2014年らしいのでもう5年経ってるのね).そういえば2幕の途中で人の出入りがあってちょっと気になったのですが,どうやら体調を崩したお客さんがいたらしくその対応だったようです.

 終演後は劇場のレストランへ.この日は都内に宿泊予定だったので,久しぶりにがっつりしたコースをいただきました.

Img_1958 Img_1959 (写真左)生パスタ「フェットチーネ」,(同右)ノルウェーサーモンのポワレ
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 (左写真)熟成牛のグリエ,(右同)デザート(ダージリンティーのセミフレッド)

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2019年4月12日 (金)

歌劇「フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ」

Img009  この前の日曜日4月7日に,新国立劇場で初日を迎えた歌劇「フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ」(新演出)公演を鑑賞してきました.

 異なる作品の2本立て公演というと,昔の地方の映画館を思い出しますが,オペラの世界でも1幕物の短い作品の場合,他の作品と組み合わせて上演されることはよくあります.レオンカヴァッロの「道化師」とマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」はその代表で,この2作品の組み合わせはしばしば目にします.一方で,プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」も1幕物で非常に人気の高い演目ですが,こちらはプッチーニが三部作(「外套」,「修道女アンジェリカ」,「ジャンニ・スキッキ」)として作曲したものの3作目にあたります.ですから本来はこの3作セットで上演されるべきものです(少なくともプッチーニはそう考えていた).しかしながら前2者はジャンニ・スキッキほどの人気を得られず,現在ではこの3部作をまとめて上演する機会はめったにありません.その代わりに,このジャンニ・スキッキと他の作品(特に先に挙げた「道化師」「カヴァレリア・ルスティカーナ」どちら)かとのセットという上演パターンが見られるようになっています.

Img_4690  そんな世間一般の空気の中で,今回の公演はツェムリンスキーの「フィレンツェの悲劇」との組み合わせでした.これまであまり例のない組み合わせのように感じましたが,実はちゃんとした理由があるようです.それはこの2作品がどちらも16世紀のフィレンツェを舞台にしていることです(あとは作曲年代もほぼ一緒).16世紀といえばイタリアルネサンスが黄昏を迎える時代です.そんな背景の中で,勧善懲悪といった単純なものではない,また王侯貴族の華やかな世界でもない,きわめて人間臭いドラマが描かれれています.「フィレンツェの悲劇」は悲劇と銘打たれていますが,果たして悲劇と言えるのか疑問ですし,一見喜劇作品に見える「ジャンニ・スキッキ」も,最後主人公が「私は地獄に落ちるでしょう」というように純粋な喜劇とはいいがたい部分もあります.

 そんな独特の雰囲気を持った2作品の演出を担当したのが栗國淳氏,定型的ではないがそれでも奇をてらったわけでもない面白い演出でした(公演はまだ続くのでネタバレはしません).公演内容はもちろん素晴らしかったです.

Img_4693  どうでもいいのですが,幕間にロビーでシャンパンを飲んでいたら,近くにアフロヘアのおじさんがいて,「なんかすごい人だなぁ」と思っていたら実は栗國淳さん本人でした(笑).この日はマチネの公演だったので,終演後は小田原に戻って駅前の銀座ライオンで夕食,久しぶりにローストビーフをいただいたのでした (^^)v

 

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