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2025年12月16日 (火)

伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型

 ポリオという病気があります。日本語では急性灰白髄炎といい、かつては小児麻痺という呼び方もありました。前者は病巣が主に脊髄の灰白質にあること、後者は主に小児に罹患し一定確率で運動麻痺の後遺症が残ることに名前の由来があります。原因はポリオウイルスで主に経口感染し、発症した場合の特異的な治療法はなく、ワクチンによる予防が強く推奨されています。日本でも1960年頃までは多くの症例がいましたがワクチンの普及によって症例数は激減しました(現在も小児期の定期接種に組み込まれている)。

 このポリオワクチンには経口生ワクチン注射型不活化ワクチンという2つのタイプがあります。経口生ワクチンは弱毒化したウイルスを経口投与するもので、非常に安価で投与しやすいというメリットがあります(飲ませるだけなので注射器や針などの道具も不要)。一方で弱毒化したとはいっても生のウイルスを用いるため、ごく稀ではありますがワクチン由来のウイルスが感染性を獲得して、未免疫者を発症させることがあります。一方の不活化ワクチンは高価ですが、そういう問題はありません。なので一般的にはポリオがまだ流行している地域では生ワクチンを、ほぼ撲滅できた地域では不活化ワクチンを使う傾向があります。ちなみに日本では野生型のポリオは1980年を最後に出ていない他、ワクチン由来ポリオも2014年以来症例がありません。さらに2012年以降は不活化ワクチンに切り替わっているため、今後日本国内で新規のワクチン由来ポリオウイルスが発生する可能性はありません(輸入例はありうる)。

R(写真1)ポリオウイルス

 日本では撲滅状態にあるポリオですが、世界でも撲滅に向けて努力がなされており、現在野生株のポリオがあるのはパキスタン、アフガニスタンの一部に限られています。一方で最近問題になっているのが生ワクチン由来のポリオウイルスです。生ワクチンの特性上発生率をゼロにはできませんが、地域の集団免疫がしっかりしていれば大きな問題にはなりません。しかし接種者の減少などで集団免疫が低下すると、こうしたウイルスによる流行が起こることがあります。アフリカ地域は以前からそうしたワクチン由来ウイルスが問題となっていましたが、近年イスラエル、カナダ、米国といった医療先進国での出現が報告され世間に衝撃を与えました。

597470305_1164751382515860_8949354745996(写真2)ワクチンキャンペーン

 私のいるナミビアでも最近北部のアンゴラとの国境に近いルンドゥという待ちの下水から、この伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型が検出されたという話題が出ました。隣国アンゴラでは以前から問題となっており、陸の国境を有し、人々の往来もそれなりにあるこの地域での検出は驚くことではありません。ただ幸いまだヒトに感染した例は報告されていません。一方でこれを受けてナミビア政府は同地域の10歳未満の子供に対するワクチン接種キャンペーンを始めたようです。

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