第19回国際旅行医学会①
専門は神経内科ですが、旅行医学にも関心が深い私です。旅行医学とは主として海外旅行者を対象とした健康問題の予防や治療を扱う医学で、病院や大学などで分類されるいわゆる臓器別医学とは異なる横断的な医学になります。元来旅行好きな私にとっては、まさに自分のためにあるような分野です。こうした学問を扱う学会として日本には日本旅行医学会と日本渡航医学会があり、私は両方とも参加しています。ちなみにこの両学会の違いですが、後者は医師や薬剤師、看護師といった医療職中心に、感染症やワクチンなどの話題を主として扱う傾向が高いのに対して、前者は医療職のみならず旅行会社の添乗員やジャーナリストなど医療関係者以外にも門戸を開いており、扱う話題も「渋滞学」や「化粧水」などより幅広い感じです。
そんな旅行医学の国際版といえるのが、国際旅行医学会(the International Society of Travel Medicine: ISTM)で2年に1回学術大会が開催されます。いつか参加できたらいいなと漠然と思っていたんですが、今回ひょんなことから参加する機会を得ました。会場はアメリカ南部、ミシシッピー川下流にあるニューオリンズです。日本から行っても十分遠い場所(直行便がなく、最低1回の乗り継ぎが必要)ですが、アフリカ南部地域からだとさらに遠く感じるところです。経路はいくつかありますが、今回は一旦ドイツのフランクフルトに出て、そこからアメリカのヒューストンに入り、そこで乗り換えてニューオリンズに至る経路になりました。約28時間の行程です。ウィントフックーフランクフルトは日本に戻る際にもよく使う路線なので勝手はわかります。フランクフルトでの乗り継ぎ時間は4時間です。立ち寄ったラウンジにはヨーロッパ版(?)の日清カップヌードルがあり美味しくいただきました(味噌ベジタブルという名前、おそらくベジタリアン向けでしょう)。ここからは人生初の大西洋を横断するルートです。座席のモニターにモントリオール、ボストン、ニューヨークといった地名が登場するとテンションが上がりました。約11時間のフライトでヒューストンに到着です。
(左写真2)ヨーロッパのカップヌードル、(右同3)北米北東部
チケットを見るとここでの乗り継ぎ時間は1時間半、アメリカの入国空港としてはかなりタイトな時間です。アメリカに入る場合は最初の空港で入国審査を受け、荷物を引き取って税関を抜ける必要があるからです(出発地の空港で最終目的地までのタグが付いていても一旦引き出さなければならない)。で、最大の律速段階が入国審査です。コロナ前にトランジットでアメリカを経由していた頃は、導線が”アメリカ市民”、”ESTA”、”その他外国人”の3種で、ESTA対応国民は専用の機械で指紋認証、顔写真撮影を行いそこでクリアできれば極めてシンプルな窓口を通過できたんですが、今回のヒューストンにはそのような機械はなく、結局”外国人”の列に向かいます。一般に厳しいとされるアメリカの入国審査ですが、善良な日本人はそれほど時間はかかりません。一方で南米系や一部中東系に対しては厳しく時間がかかります。したがって自分の前にそうした人たちがいると、ものすごい待ち時間がかかってしまうので、その辺の見極めが重要です(なんならESTA国民10人の方が非ESTA国民2人よりも早いなんてことも)。とはいえ係員に強制的に「そこの列に行け」と言われてしまうこともあって難しいところです。幸い私の列には難しい人物はおらず、サクサクと手続きは完了、目の前のエスカレーターを降りてターンテーブルに向かいます。
入国審査に時間がかかったときなどは、すでに自分の荷物が出ていて脇に寄せられていた… なんてこともありますが、今回はスムーズに抜けられたせいか、まだ出てきていませんでした。約10分ほどで荷物が出てきました。取り出して税関へ、幸い何も言われず通過できました(運が悪いと中を開けてチェックされる)。税関の先は到着ロビー方面と乗り換え口方面の二股に分かれています。ここは乗り継ぎ方面に進んで、荷物の再預けを行います(ここで間違って到着ロビーに行ってしまうと振り出しに戻る悲劇となる…)。その後はセキュリティチェックを経て出発ロビーに出ました。到着からここまで40分程度、今回はかなりうまくいったと思います。
乗り継ぎ便は10分ほど遅れて出発、ヒューストンとニューオリンズの距離は550キロほどなので飛行機だと1時間半くらい、それこそ飲み物が出たなぁと思う頃には到着でした。ここはもう国内線扱いなので面倒な手続きもなく到着ロビーに出ます。ニューオリンズのルイ・アームストロング空港はこじんまりとした空港です(日本で言えば仙台空港クラスか?)。ここからはタクシーで市内のホテルに向かいます(ニューオリンズ空港-ダウンタウンは35ドルの定額制)。今回の学会場はミシシッピー川岸のヒルトンホテル、宿泊もそこにできたら楽だったんですが、さすがにお高いため、その向かいのホテルに宿泊しました。
着いたのは夕方、移動の疲れと時差ぼけもあってけだるい気分です。この日は外には出ずホテル内のレストランで夕食にしました。
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