当地のミネラルウォーター
日本は水道水が問題なく飲める国ですが、これは世界的にみると珍しい部類に入ります。海外での水道水は日本のように飲用で問題がない国は少数派で、多くの国では加熱調理や歯磨きでは問題ないレベルのや、歯磨きすら憚られるレベルだったりします。そうした中ナミビアは一応飲用も可能な国とされています。
ただこの国の水は非常に金属成分(アルカリ土類金属はもちろん、鉄なども)が多いため、日本人が飲用するとお腹を壊す可能性があるとされています。これは日本の水が水道水も含めてミネラルが少ない軟水であり、日本人の胃腸がミネラルの多い硬水に慣れていないためとされています。
水の硬度は含まれるミネラル、特にカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量で決まりますが、これは市販されているボトル入りの飲用水(いわゆるミネラルウォーター)も例外ではありません。例えば1990年代に日本で有名になったフランス産のミネラルウォーター evian の成分を見ると
カルシウムイオン 80mg/L、マグネシウムイオン 26mg/L で硬度は約300です。
一方国産ミネラルウォーター大手のサントリー天然水(採水地によって成分が異なるので今回は山梨県北杜市のもの(以前南アルプス天然水として売られていたもの)は
カルシウムイオン 9.7mg/L、マグネシウムイオン 1.5mg/L で硬度は30です。
比較すると一目瞭然ですが、evianとサントリー天然水では硬度が10倍も違うわけです(注 硬度=カルシウムイオン×2.5 + マグネシウムイオン×4.1 で計算できます)。この場合サントリーは軟水でevianは硬水です。
軟水か硬水かは地域性が非常に大きいものがあります。ヨーロッパは石灰岩質が多く、地形も平坦で水が長期にわたって滞留するため地質からミネラルが溶け込み硬水になるのに対して、日本は一般に雨量が多くて河川の流れも速く、水が滞留する時間が短いためミネラルが溶け込む時間が無く軟水になるといわれます。ただ日本でも岩手県岩泉町で採水される龍泉洞の水は、地質が石灰岩質で比較的水が滞留するため、硬度約100と例外的に硬水です。
さて翻ってナミビアですが、当地もスーパーなどに行くとたくさんのボトル入り飲用水を売っています。はたしてどんな成分なのか、興味があったので調べてみました。水道水の様子から見て硬水が多いんだろうなと予想していましたが、実は商品毎の差が激しいことがわかりました。例えば当地のスーパー大手であるCheckersでよく見かける飲用水 OASIS の成分は
カルシウムイオン 133mg/L、マグネシウムイオン 22mg/L で硬度423とevianの1.5倍近くもあります。
一方で別なスーパー系列であるSPARで売られている自社ブランド、SPAR Still spring waterは
カルシウムイオン 0.4mg/L、マグネシウムイオン 0.2mg/L でその硬度はわずか2!、サントリー天然水の10分の1以下という超軟水です。どうしてこんなに違うのかと思ったのですが、その秘密は採水地にあるようです。OASISの採水地はナミビア北部のOMARURUという土地、ナミビア北部は元々雨が(ナミビアにしては)多い地域なので、その地下からくみ上げた水は硬度が高いようです。一方SPARの水の採水地は南アフリカのCeres Valleyという場所でした。Ceresの地層等は詳しくわからないのですが、やはり地質的な点から軟水になるのではと想像されます(降水量自体はそんなに多くないようですが)。
水からそんなことを考えてしまいました。
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