中国留学用の診断書
旅行医学・渡航医学に関心の深い自分は、普段もそうした業務を行っています。渡航者へのワクチン接種や英文の診断書の作成等ですが,今回中国への留学のための診断書を作ることになりました.
中国語と英語の併記になっているわけですが,こうしてみると日本語の医学用語と同じ文字が多いことに改めて気づきます.医学用語に関する日本と中国の関係で言えば,古くは漢方医学の分野で中国語の語彙が日本に伝わるという流れがあったのですが,江戸時代後期以降蘭学が盛んになると,西洋由来の医学用語が日本語の漢字に意訳され,やがて明治以降それが中国に伝わるという逆の流れが出来上がりました.このため近代西洋医学由来の中国語の医学用語の多くが日本語由来になっています(日本と中国はそもそも漢字を使う文化圏なので利便性が高かった).
今回の診断書で見れば,性病、脊柱、流行性脳脊髄膜炎、黄熱病など明治期から戦前までにできた医学用語は日本語とほぼ共通です.一方でエイズなど現代のもの(日本語でも漢字ではなくカタカナ表記だったりするもの)に関しては音を当てた独自のものですし,コレラ(霍乱)・ペスト(鼠疫)といった近代以前から存在した病気に関しては独自の言葉があります.
ちなみにコレラを意味する霍乱ですが,霍は素早いという意味があり江戸時代に日本人がコレラをころり(ころりと死ぬから)と呼んだのに概念は似ています.ペストの鼠疫はそのものズバリという感じですが,中世以来世界で猛威を振るっていたペストも近代以前は日本で流行した事例がなく,日本ではオリジナルの言葉は作られていません(黒死病という異名はあるが臨床現場では使われない).
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