ニューカレドニアの独立問題
ネットのニュースに上がっていた話題です.
南太平洋のフランス領ニューカレドニアで12日,フランスからの独立の是非を問う住民投票が行われ,反対多数で独立は否定されたとのことです.
ニューカレドニアはオーストラリアの東,ソロモン諸島の南に位置する島嶼で,主島であるグランドテール島と周辺の多数の小島からなっています.日本ではイル・デ・パン島やウベア島などのビーチリゾートの地として,新婚旅行先として人気の高いところです(自分は今から20年前に新婚旅行以外で訪問しています).一方世界有数のニッケル埋蔵量を誇り,その採掘と輸出も重要な産業となっています.
そんなニューカレドニアですが,1980年代より先住民を中心に独立運動が起こりました.世界的な脱植民地の流れもあり1987年には独立の是非を問う最初の住民投票が行われ,結果大差で独立は否決されましたが,一部独立過激派による暴動などが起こっています.その後1998年にフランス政府と独立派勢力等の間でヌメア協定が結ばれ,自治権の拡大が図られる一方で,2018年までに独立の是非を問う住民投票を行うこと,仮に否決されたとしても議会の要請があればその後2回(2020年と2022年)住民投票が実施できることになりました.
それを受けて2018年に独立の可否を問う最初の住民投票(1987年を1回目とすれば2回目ですが)が行われましたが結果は否決でした(反対派約56%).ついで2020年に2回目の投票がありましたが再び否決(反対派約53%).そして今回3回目の投票となったものです.
独立賛成派は現在のコロナ禍の状況の中での住民投票は延期すべきであると投票の実施に反対しており,延期が受け入れられなかったことから住民にはボイコットを呼びかけたようです.そんな中行われた今回の投票では反対約97%の圧倒的多数で独立派三度否決されました.ただ独立派がボイコットを呼びかけたことから投票率は40%台に低迷したとのことです(結果から類推すると独立賛成派の多くが投票しなかったようです).過去2回の住民投票では徐々に賛成反対の割合が拮抗してきていました.そんな流れの中で今回投票が行われたにもかかわらず独立派が投票延期を申し入れていたしかし,新型コロナの流行はニューカレドニアにも及び,結局現地政府が有効な対策を打てなかった(ワクチンの確保等結局フランス本国政府に頼らざるを得なかった)ことから独立反対派の勢いが増している状況でした.このため独立派としては今投票をするのは自分たちに不利であると考えていたようです.
ヌメア協定では今回が最後の投票になるはずですが,独立派は今回の結果を受け入れないと表明しており今後の推移に注目です.
ちなみにアフリカ大陸の東にコモロ諸島という4つの島(グランドコモロ島、アンジュアン島、モヘリ島、マヨット島)からなる諸島があります.ここもかつてフランス領だったのですが,1975年にマヨット島を除く3島がコモロ連合として独立しました.しかしコモロ連合は内政の不安定さから経済が低迷する一方で,フランスに残ったマヨット島は本国支援を受けてそれなりの経済を維持しており、現在その格差は非常に大きなものとなっています.ニューカレドニアの独立の話題を耳にするたびに,このコモロの例を思い出すのでした.
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