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2021年6月15日 (火)

尾瀬旅行(1)

 先週後半(6月10~12日)尾瀬に行ってきました.その旅行記録です.

 当初の予定では6月6日から1週間の予定で北海道の離島旅行(礼文島&利尻島 etc.)を計画していましたが,北海道の緊急事態宣言が延長になり,現地の自治体からも観光等での不要不急の来島を自粛するよう要請が出たことを受けてこの旅行は取りやめとなり,その代替の企画として計画したものです.地理的には比較的近場ということもあって日程は大幅に短縮し,週の後半のみとしました.尾瀬といえば歌曲「夏の思い出」の舞台として有名ですが,歌にも登場する水芭蕉が見られる時期が今だというのも訪問を決めた理由です.

 尾瀬は福島・群馬・新潟3県にまたがる高層湿原です.西側の尾瀬ヶ原と東側の尾瀬沼に大別され両方合わせた大きさは東西6km,南北3kmにもなります.標高の高い場所にある平地ということで信州の上高地に似ていますが,自動車で入れる上高地に対して尾瀬の内部には自動車道はなく徒歩以外に移動手段がないという決定的な違いがあります(なので足腰が弱る前に行っておきたい場所です 笑).今回は尾瀬ヶ原・尾瀬沼両方を見て回るのを計画しましたが,そうなると日帰りは不可能であり,どこかで宿泊する必要があります.幸い尾瀬には山小屋と呼ばれる簡易宿泊所が複数あるため,これらを利用しながらの観光となりました.尾瀬ヶ原・尾瀬沼の縦走は健脚なら1泊2日で可能な行程ですが,日ごろの運動不足で体がなまっている我々の体力と,途中で100選滝のひとつである三条の滝にも寄りたかった事情を踏まえて2泊3日とし,

 1日目(6月10日) 群馬県の鳩待峠から尾瀬ヶ原に入り北東に向かい日本の滝100選の一つである三条の滝を見学しその後最寄りの山小屋である温泉小屋に宿泊

 2日目(6月11日) 尾瀬ヶ原から東に向かい,白砂峠を越えて尾瀬沼に出て沼を北岸から半周して桧枝岐村営の山小屋である尾瀬沼ヒュッテに宿泊

 3日目(6月12日) 尾瀬沼東岸を南下し三平峠を越えて下山する.

という計画になりました.第1日目がちょっとハードですが,初日ということで気力体力とも充実しているだろう(?)と考えたからです.

 前述のように尾瀬は徒歩以外の移動手段がない場所です.それこそ日が暮れてしまったら遭難必至になるため,計画には時間的な余裕が求められます.なるべく早朝に現地入りし午後の早い段階で山小屋に着くのが理想となるため,6月9日に群馬県側の尾瀬の玄関口である戸倉温泉の旅館に前泊しました.

Img_0169(写真1)尾瀬第1駐車場

 そして6月10日6時に旅館で朝食を食べそのままチェックアウト,近くの尾瀬第1駐車場に移動します.ピークシーズンの尾瀬は特に土曜日は大混雑でこの駐車場も満車になるらしいんですが,この日は木曜日ということでかなり空いていました.駐車場から尾瀬の群馬県側の入り口である鳩待峠まではバスか乗り合いタクシーでの移動になります.バスは大体1時間に1本程度で,その間の時間を乗り合いタクシーが埋めている印象です.空いているとはいえ,それなりに尾瀬に向かう観光客はいるのでそれほど待たずに出発できました.

Img_0174 Img_0182(左写真2)鳩待峠休憩所,(右同3)ここから徒歩です

 駐車場から狭い道を揺られること20分ほどで鳩待峠に到着,ここからいよいよ徒歩移動となります.トイレを済ませて身支度を整え(靴ひもを締めなおし,スパッツを装着)まずは尾瀬沼の入り口,山の鼻を目指します(この時時計を見たら7時55分).鳩待峠の標高1590mに対して山の鼻は1410m,この180mの標高差を3.3kmで下っていくことになります(平均斜度5.4%).

Img_0202 Img_0208(左写真4)複線の木道,(右同5)きれいな沢

 遊歩道は基本的に木道と木の階段がメインで所々石の階段のところもあります.尾瀬の木道といえば雨上がり後などの濡れた状態では滑りやすいことで知られます.もっともここ数日は天気が良かったのでこの日は日陰を含め木道は乾いていたため問題ありませんでした.ただ下り道は足首を痛める可能性があるため慎重に,また後からくる健脚の方々を先にやり過ごしながらゆっくり進んでいきます.この区間は基本的に雑木林地帯なので展望はありませんが,それでも周辺に咲いている花々を見ながらの移動でした.約1時間で山の鼻に到着,最初の小休止です.売店で尾瀬の植物図鑑やクマ鈴を購入したりトイレを使いました(尾瀬のトイレは1回100円のチップ制となっている).

Img_0193 Img_0197(写真6,7)尾瀬の花々

P6100002(写真8)山の鼻の至仏山荘

 小休止後いよいよ尾瀬ヶ原に入っていきます.周囲の視界が一気に開け,ガイドブックでもおなじみの尾瀬ヶ原の絶景が広がっています.日ごろの良さもあるのかお天気は一面快晴の青空です.青々とした湿原のかなたに向かって二本の木道がひたすら伸びています.我々が目指す方角には東北地方最高峰である燧ケ岳(標高2,356m)の雄姿が遠くに見えていました.また後ろを振り返ると雪渓の残る至仏山(標高2,228m)が目の前に鎮座しています.早くも尾瀬の絶景に感動する我々でした.

P6100029 P6100031 (左写真9)はるか彼方に燧ケ岳が見えます,(右同10)至仏山

 ここからの尾瀬ヶ原横断は標高差がほとんどない平坦な湿原に敷かれた木道をひたすら歩いていきます(湿原保護のため木道から外れることは禁止されている).この辺りの木道は複線になっていて原則右側通行です.ピークシーズンの土曜日などは人で渋滞することもあり,おちおち写真も撮れないそうですが,木曜日の朝は人影もまばらで回りを気にせず自分のペースで歩くことができました.しばらく進んでいくと,たくさんの荷物を背負った歩荷の姿も見かけます.自動車の乗り入れができない尾瀬ではヘリコプターとともに歩荷が貴重な輸送手段となっているのです.

P6100015(写真11)たくさんの荷物を背負う歩荷

 「夏の思い出」にも登場する尾瀬を代表する植物が水芭蕉です.雪解け後の水辺や湿原に姿を現し,尾瀬では5月下旬から6月上旬がピークといわれています.ただ近年は温暖化の影響で見ごろが早まっているようで,今年は尾瀬ヶ原付近はすでにピークを過ぎていたようです.とはいえ,まだまだ群生している姿を見ることができました(木道の脇など日陰になっているところに多い).

P6100013 P6100018(左写真12)数は多くありませんが水芭蕉の群生です,(右同13)白いのは仏炎苞という葉が変形したもので花は真ん中のヤングコーンみたいな部分です

 尾瀬ヶ原を北東に進んでいくと次第に前方の燧ケ岳が大きく,後方の至仏山が小さくなり確実に歩いてきていることを実感します.尾瀬の湿原には池塘と呼ばれる小さな湖がたくさんあり,空の青さや湿原の緑との色彩の対比が素晴らしいです.池を覗くとイモリが泳いでいる姿も見えました.

P6100042 P6100052(左写真14)美しい池塘,(右同15)イモリ

 山の鼻から40分ちょっとで牛首分岐と呼ばれる木道の分岐点に到着します.ここをまっすぐに進むと竜宮小屋,左に折れるとヨッピ吊橋に向かうことになり人の流れもここで2つに分かれる地点です.分岐点にはベンチの設置されたテラスがあって休憩に便利,我々もここでしばし小休止しました.

P6100068 P6100081(左写真16)牛首分岐,(右同17)至仏山がかなり小さくなりました

 10分ほど休んで再び歩き始めます.この日は牛首分岐をまっすぐ竜宮小屋方面に向かいました(時間的に竜宮小屋で昼食にしたかったことが主な理由).この辺りは尾瀬湿原の中央部とでもいえる地域でたくさんの池塘や沢があります.それらの沢の一つを渡ろうとしたら,なにやら沢の対岸に柵がめぐらされています.今当地では鹿の食害が問題になっているそうで,尾瀬の代名詞の水芭蕉も食害で数を減らしているのだとか.この柵もそうした鹿対策の一環のようです(実際柵の内側には水芭蕉が結構あった).

P6100075 P6100078(左写真18)鹿対策の柵,(右同19)柵の内側には水芭蕉が

 その先には湿原を流れる川がいったん地下に潜ったあと池塘に湧き出る現象”竜宮現象”が見られるスポットがあります.伏流水が池に湧き出るといえば静岡県清水町の柿田川を思い出しますが,そことおんなじできれいな湧き水でした.

P6100083 P6100084(左写真20)水芭蕉の水中花,(右同21)竜宮現象

 そんな湿原を歩いていくとまもなく木道の分岐点とその先に林に囲まれた建物が見えてきます.この分岐点が竜宮十字路という分岐点,ここを左折すると先ほど牛首分岐で左折した先のヨッピ吊橋へ行くことができます.右折すると富士見田代という尾瀬外輪山南側の尾根線へ,まっすぐ進むと尾瀬で最もにぎやかな見晴になります(見晴は山小屋6軒が立ち並び,尾瀬銀座と呼ばれる).十字路にもベンチがあるんですが,この日は見晴方面に向かうためそのまま林と建物方面へ向かいます.この建物が竜宮小屋という山小屋,2021年は休業ということで小屋は閉まっていますが,小屋前のベンチとトイレは使用することができます.我々もベンチの一角に腰を下ろし昼食タイムとなりました(この段階で11時半).この日のお昼は持参したおにぎりと携帯ガスでお湯を沸かして味噌汁を作りました(長時間歩くと塩分の補給も大事).

P6100086P6100089 (左写真22)林の中に竜宮小屋が見えてきます、(右同23)林の中の沢

 ここでは約1時間の大休止,食後もしばらくゆっくりと休み先への英気を養いました.その後トイレを済ませ12時20分に出発します.林を抜けて再び湿原地帯になります.前方には朝方は遠くに見えていた燧ケ岳がいよいよ迫ってきた感じがします(だいぶ歩いてきたなと実感).この辺は山に向かってひたすら草原を歩く感じで,母を訪ねてのマルコの気分になりました(笑).燧ケ岳の麓には林が広がりその中に建物の姿が見えます.ここが尾瀬銀座と呼ばれる見晴地区です.姿は見えているがなかなかたどり着かないという遠近法のような感覚が不思議でした.

P6100092 P6100094(左写真24)見晴地区が見えてきました.ここまでくると燧ケ岳が目の前です.(右同25)弥四郎小屋

 それでも20分ほどでやっと見晴地区に到着,6軒ある山小屋の一番手前にある弥四郎小屋で小休止します.建物が複数あるだけで都会に見えてしまうのが印象的です.

 弥四郎小屋前は三叉路になっていて,来た道をまっすぐ進むと尾瀬沼方面に,左に折れると赤田代地区から三条の滝方面に向かうことになります.この日は三条の滝を訪問する予定なのでもちろん左折します.さっきまで正面に見ていた燧ケ岳を右に臨みながら歩いていきます.改めてこの辺は燧ケ岳の麓なんだと実感したのでした.

P6100096 P6100097(左写真26)見晴の分岐点,(右同27)赤田代に向かう木道

 この日の予定は赤田代にある温泉小屋に荷物を預けて身軽になった状態で三条の滝までを往復,その後温泉小屋に宿泊というものでした.ただここまでの行程で結構へばっていました.鳩待峠から赤田代まで距離にして約10km,普通の土地ならそれほどでも無いハズですが,2泊分の荷物を背負って慣れない山道や木道の移動は運動不足の我々にはダメージが大きかったようです.しかも温泉小屋から三条の滝までの片道2.2kmは距離こそ大したことはありませんが,標高差200メートルの岩場や鎖場もあるかなりきつい登山道とのこと,特に往路が下りで復路が登りというイやなパターンです.時間的にはまだ1時過ぎ,標準時間で往復できれば十分夕方4時には戻ってこられるんですが… いろいろ考えた末,この日の訪問は断念することにしました(疲労困憊,途中で立ち往生しても困るので).

 滝には行かないと決まったことから後は気楽になりゆっくりと温泉小屋を目指します.途中東電小屋へ向かう分岐路(東電分岐)で小休止し,そこからは少し登りになる部分もありましたが,結局1時30分過ぎに本日の宿泊地温泉小屋に到着しました.

Img_7426 Img_7425(左写真28)温泉小屋本館,(右同29)こちらが別館

 受付をするとすでに部屋は使えること,お風呂もすぐに入れるとのことだったのでそのまま中に入りました(今回は別館の個室を利用).通された部屋は8畳間,今回はコロナ禍の平日ということで個室利用ですが,ここは元々相部屋を想定して建てられている関係で部屋に鍵がありませんでした(もっとも何かあれば内部犯行説ほぼ100%です).温泉小屋のある赤田代地区は尾瀬で唯一温泉が湧くところです.泉質は鉄泉でやや赤茶けたお湯が特徴です.一日の汗を流したのは言うまでもありません.

 入浴後は小屋の前に設置されているテラスで生ビールをいただきます.時間的には1日で最も気温が上がる時間帯ですが,標高1400mの尾瀬の空気は爽快です.チェアに寝そべってしばしウトウトしていました.

Img_7424 Dsc_1739(左写真30)テラスで生ビール,(右同31)夕食

 山小屋の夕食は早く,夕方5時スタートです.温泉小屋の夕食は定番のカレーライス(と牛すき小鉢)でした.またまたビールを飲んだのは言うまでもありません(笑).

 しばらくしたら夕暮れ,周囲は真っ暗になっていきます.消灯時間は9時,明日に備えてさっさと寝たのでした.

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