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2020年11月28日 (土)

オペラ2つ

 11月下旬に入り,新型コロナウイルス感染症の再拡大が言われるようになっています.世間では第3波などともいわれ,地域によっては飲食店の時短営業要請なども出ているようです.春の緊急事態宣言当時を彷彿させますが,あの時と今とで大きく状況が異なるのがコンサートなどの劇場の様子です.春は劇場そのものが閉鎖になり,コンサートでのイベントも基本的にすべて中止となっていましたが,今回は(もちろん感染対策に留意しつつ)劇場は開いていてコンサートも行われています.これはマスクをして静かに鑑賞し観客は声を出さないクラシックコンサートと,マスクなしで大人数で行う会食とでは感染リスクに大きな差があることが理解されてきた点が大きいのだろうと思います.コンサート,とりわけオペラ大好き人間の私にとってはありがたいことです.

Img044  先週末から今週にかけて2つの舞台を鑑賞してきました.ひとつは新国立劇場の「アルマゲドンの夢」,これはH.G.ウエルズのSF(創元SF文庫版の邦訳では「世界最終戦争の夢」)を原作とし,現在イギリスを拠点に活動している作曲家藤倉大によるオペラです.今回世界初演の舞台で,私が見に行ったのは11月21日(土)の回です.SFが原作というのは珍しいので楽しみにしていました.

 舞台は現実である電車の車内の場面と,夢(あるいは未来?)の場面が交互に現れ展開していきます.そのテーマは全体主義の台頭と社会不安,戦争というもので,まだ第1次世界大戦すら始まってない1901年にまるで未来を見ていたかのような作品を書いたウエルズの先見の明は凄いです.

Dsc_1361  リディア・シュタイナーによる演出は映像を多用した21世紀的なもの.特に独裁者や全体主義者たちの姿を映像で表現するのは,彼らがプロパガンダの手段として利用するテレビや映画といったメディアを表すのだろうと思いました.

 キャストについては,今コロナ下で海外から歌手を招聘しにくい時代なのですが,今回は当初予定キャストを全員集めたとのことで,劇場側のこの公演にかける思いの強さを感じました(入国後2週間の待機が必要なのでその分早く来日させたとのこと).強い印象を受けた舞台でした.

Img045  もう一つは東京二期会の「メリー・ウィドウ」,こちらはレハールによって作曲されたオペレッタの名作です.東京二期会では過去に何度も上演されてきた演目ですが,今回は新進の演出家眞鍋卓嗣による新演出でした.観劇したのは11月25日(水)の回です.オリジナルの言語はドイツ語ですが,今回は歌部分も含めすべて日本語訳での上演でした(ジングシュピールやオペレッタの場合,セリフ部分のみ日本語というのはよくあるが全部日本語は珍しいかも).

Img046  幕が開いて歌が始まると,なんか既視感があります.実は日本語訳がかつて弘前大学時代に参加した市民オペラでの同作品の日本語訳と同じだったのです(3幕のマキシムの場面に,オッフェンバックの天国と地獄のカンカンを挿入するパターンまで一緒でした).元々好きな作品でしたが,懐かしさも加わって感動的でした.先のアルマゲドンの夢とはまったく異なる,肩の凝らない作品ということもあり,リラックスできた舞台でした(写真は市民オペラに参加した際のもの,控室かな?).

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