創作民話 比叡山の笛吹き男
むかし比叡山の道路はカーブが多い峠道で、夜な夜な暴走族が大量に現れ、我が物顔で走り回っていた。
この暴走族の爆音には、延暦寺のお坊様たちもほとほと困り果て、頭を抱えておったそうな。
ある日、都から奇妙ないでたちの男が寺にやって来た。
男は、「わしに報酬をくれるのなら暴走族を退治してやるぞ」といった。
お坊様たちは暴走族には困り果てていたので、男に報酬を約束した。
男は懐から一本の笛を取り出し、それを吹きながら延暦寺の外に出ていった。
すると、男の笛の音に引き寄せられるかのように、暴走族がどこからともなく現れ、男の後に付いて山を下って行った。
男はそのまま琵琶湖に行ったため、暴走族は一人残らず湖に落ちて消えてしまったそうな。
こうして比叡山は静けさを取り戻した。男は約束の報酬を払うようお坊様たちに求めた。
ところが延暦寺のお坊様たちは、支払いの段になって急に惜しくなり、あれやこれや理由を付けて支払いを拒んだ。
男は、「仏に仕えるものがそんなインチキをするとは、必ず天罰が当たるだろう」と捨て台詞を残して去っていった。
一年後、都からたくさんの軍勢が比叡山にやって来た。
その軍勢を率いていたのは、なんとあの奇妙ないでたちの男だった。
男の合図で比叡山には火がかけられ、延暦寺は廃墟となり、お坊様たちもみな殺されてしまった。
その男の名は織田信長といったそうな。
(了)
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