五島勉氏死去
作家の五島勉氏が今年の6月に90歳で亡くなっていたという記事が出ていました.
五島勉氏といえば,なんといっても一連の「大予言」シリーズが有名です.日本人にノストラダムスの名を広めたのは間違いなくこのシリーズによるものです.第1作が発表されたのは1973年(昭和48年)のこと,当時はオイルショックによる物価高騰,大気汚染などの公害問題など日本社会全体が漠然とした不安に包まれていた時代です(小松左京氏の「日本沈没」も同じ昭和48年発表).「大予言」はこの世相に乗ってベストセラーとなり,次々と続編が発表されるほか,その2番煎じ,3番煎じを狙った類似作品も雨後のタケノコのように現れるなど,世は終末ブームともいえる状態になりました.子供向けのオカルト本にも大予言シリーズを元ネタとした記事がたくさん出てきて,あの時代に多感な少年だった私のような世代にとってはとりわけ強烈な印象として記憶されています(ちょうど私と同世代である故・さくらももこ氏の「ちびまる子ちゃん」にもノストラダムス話が取り上げられています).
1990年代になると,予言とされるものの中に五島氏自身の創作が混じっているとか,原詩の解釈の間違いなどが指摘されはじめ(特にと学会による「トンデモ本の世界」が有名),また現実の1999年が特に何事もなく過ぎてしまったことから予言作家としては賞味期限切れとなり,21世紀に入ってからはすっかり存在感が無くなってしまいました.人類滅亡ネタとしてはその後も聖マラキの予言とかマヤ暦なども出ましたが,やはり社会的なインパクトとしてはノストラダムスには到底及びません.五島氏の著作については賛否いろいろありますが,少年時代の自分に強烈な印象を与えた作家のひとりであり,今回の訃報に接して感慨深く思ったのでした.
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