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2019年12月 6日 (金)

歌劇「椿姫」

Img029  冬はコンサートシーズン,寒くて夜が長いこの季節は演奏会などコンサート鑑賞にうってつけの季節です.ヨーロッパなどの主要歌劇場も秋から冬にかけてがシーズンとなり様々な作品が上演されます.日本の新国立劇場もそれに倣い,秋から翌春までをシーズンとしています.昨年から大野和士氏が芸術監督に就任した同劇場ですが,今年は初っ端からチャイコフスキーの「エウゲニ・オネーギン」を取り上げるなど,いよいよその本領が発揮されてきた感じとなっています(2作目がドニゼッティの「ドン・パスクワーレ」).

 そんな新国立劇場年内最後の公演が表題の歌劇「椿姫」,ヴェルディのみならず19世紀イタリアオペラを代表する傑作です.フランスの作家アレキサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)原作の同名の戯曲を見たヴェルディが感激して自分の次回作として取り上げたと言われています.1853年3月の初演は準備不足から失敗に終わったとされていますが,近年ではそれを否定する説も出てきています.美しいアリアの数々,テンポよく進んでいくストーリー,全体で2時間程度とよくまとまっていることもあって非常に人気があり,世界的にも上演頻度の高い作品です(海外歌劇場の引っ越し公演だけではなく,市民オペラレベルでもよく上演されている作品です).オペラ入門編としても最適な作品で,自分もなじみがない人にお勧めする作品としてプッチーニのトスカとともにこの作品を挙げます.昨晩その公演に行ってきました.

Img_5855 Img_5861  今回の公演はヴァンサン・ブサール演出のプロダクション,2015年の初出から3回目の上演で私はそのすべてを見ていることになります.鏡を効果的に使った美しく安心して見られる舞台です.また一般的にカットされることが多い2幕最初のアルフレードと最後のジェルモンのカバレッタがカットされずに演奏されるのもこの演出の魅力です(自分的に好きな部分なので).キャストではヴィオレッタ役のミルト・パパタナシュさんが素晴らしい.美人だし華やかな中に影もある舞台映えのする歌手でした.アルフレードのドミニク・チェスクさんは本来この役をやるはずだったヴァン・アヨン・リヴァスさんが先月緊急降板(家族の事情らしい)したための代役でした.アリアなどで所々セーブしているなと思う場面はありましたが,逆にヴィオレッタを引き立てる効果があったのかなという感じです.ジェルモンは2015年,2017年の公演ではドゥフォール男爵を演じていた須藤慎吾さん(出世した!).落ち着いた歌唱で2幕のヴィオレッタとの絡みも良かったです.そういえばジェルモンってお家第一の田舎紳士なんですが,2幕でヴィオレッタに言っているセリフは穏やかではあるものの,内容はかなりひどくて,ヒロインに精神的ダメージを与える点では,実はトスカのスカルピアと大差ないのではと思いました.それにしても3幕で狼藉を働いたアルフレードに,「私の息子はどこへ行ってしまったんだ」と語る場面がありますが,「お前のせいだろ!」と心の中で突っ込んだのは内緒です(笑).やっぱり名作だなぁと強く感じた舞台でした.

Img_5862  終演後は劇場内のレストランへ.この日はパスタと黒豚のコースでした(ワインもいただいたのは言うまでもありません).デザートがフォンダンショコラだったんですが,その名を聞いた瞬間私の脳内には完顔阿骨打(ワンヤンアグダ)の名が浮かんだのはナイショです(リズムと抑揚が一緒なんです 笑).

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