風評被害とネームバリュー
一昨日の夜,浅間山が噴火したという速報が流れました.
これに伴い気象庁では,当地の噴火警戒レベルを従来の1から3に引き上げました.レベル3というのは入山規制に該当するもので,気象庁によると「火口から4キロ以内では弾道を描いて飛散する大きな噴石や火砕流に警戒してください」ということのようです.ちなみに2015年に箱根の大涌谷で噴火が起こった際のレベルも3でした.
その後さらに噴火したというようなニュースも出ていない状態なんですが,こうした事案が発生した場合世間では不安感が発生し,なんとなくそちらへの旅行を取りやめるという動きが発生します.時にはそうした危険地域から相当離れた場所であるにもかかわらず,そうしたキャンセルが多発することがあり,これを風評被害と呼んでいます.
実はこの週末,所属している東京マドリガル会のコンサートに参加するため,話題の浅間山火口から十数キロ離れた軽井沢に行くことになっています.離れているとはいえ浅間山の圏内ということで,風評被害が発生しているのではないかと心配されました.そこで現地のホテル状況がどうなっているのか,楽天トラベルで調べてみました.もしかしたらキャンセル続出で,ホテル代も安くなっているのではと思ったのですが…
まったく変わっていません.
各ホテル1~4室程度の空きは確認できるものの,ツイン1泊5万円以上というお盆シーズンの強気な料金設定は変わっていません.箱根の大涌谷で噴火が起こった際に小田原駅の箱根登山線ホームから観光客の姿が消えたのとは大違いです.思うに軽井沢という強烈過ぎるネームバリューの前には風評被害もひれ伏するということかもしれません.風評被害というのは地理的な環境(危険な場所からどれだけ離れているか)に対する世間の無知が要因になります.有名なのが雲仙普賢岳の噴火火砕流の時で,あの時火砕流とは無関係の方角にあった雲仙温泉から観光客が消えました.これはたまたま雲仙という同じ名前がついていることから,火砕流に関係がありそうだと誤解した世間が生んだ風評被害でした.軽井沢の場合はそのネームインパクトが強烈なため,逆に浅間山の圏内であることが世間一般に認識されておらず風評被害が発生していないのではと思いました.
(写真)鹿児島の桜島
ちなみに噴火警戒レベル3というのは鹿児島の桜島の通常状態のことです.もちろん鹿児島の人たちは当たり前のように生活しており,ビジネス客観光客も何事もないかのように当地を訪れています.日常なら気にも留めないが,非日常になると一気に不安になる.人間心理としては当たり前のことですが,こうした違いも風評被害の拡大に一役かっているようです.
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