暑い日が続いていますがみなさんお元気でしょうか.
例年あまり活動しない自分の8月の中で,ほぼ毎年参加しているのが寮歌祭です.寮歌というのは,旧制高校の寄宿舎の歌のことで,かつて全国に2000曲以上あったと言われます.旧制高校の教育は中等教育を終えた者に,専門的な高等教育を施す前に,一般教養をメインとして主として人格形成を図ることに主眼が置かれたものでした.それは戦後の大学教養部(あるいは教養学部,教養課程など名称は様々)に引き継がれましたが,大学教育のマスプロ化に伴う専任教員の不足や,専門教育の高度化による時間の不足等の現場の事情もあって,次第にその意義を失い,平成に入るころには大学のそほぼ消滅し現在に至っています.
私の場合専門は医学ですが,一方で歴史や芸術など多くの方面に興味関心を抱いています.これは若い頃に様々な分野の学問に触れて,専門的ではない分野も広く学んだことの賜物です.こうした様々な異なる分野の学問を広くそれなりに深く学ぶというのは,まさに旧制高校の教育であり,私が旧制高校に惹かれる理由の一端はそこにあります.そんな旧制高校を代表する文化である寮歌は私の趣味の一定部分を占めるものとなっています.
今回参加した第59回日本寮歌祭は,昨年まで中央寮歌祭と称していました.オリジナルの日本寮歌祭は元々日本寮歌振興会の主催で1961年に第1回が東京の文京公会堂で開催され,以後日比谷公会堂や日本武道館を主会場に毎年開催されていました.当時は参加は同窓会単位,当日も各校同窓会が順番にステージで代表的な寮歌高唱を行う発表会形式(コンクール形式とも)で行われていました.しかし時代の流れとともに参加者の高齢化が進んだこともあり,2001年の第41回からは個人単位での参加,パーティ会場での宴会形式に変更されました.ただその後も着実に高齢化が進み,旧制高校を現役で知る人々が減っていったことから2010年の第50回をもって終了となった経緯があります.
一方でこうした全国規模での寮歌祭の継続を望む人は多く,その中から生まれたのが中央寮歌祭でした.この会の特徴は従来官立の旧制高校主体だった寮歌祭に戦後の新制大学の人々も広く加えた点です.旧制高校を現役で知る方々は今後増えることはなく減る一方なので,このままでは全国各地の寮歌祭はいずれ消滅することになります.他方,現役で寮歌を知らない世代であっても,その理念に共感する人は(私を含めて)多く,そうした人々を積極的に取り入れて,文化としての寮歌を後世に残していこうというのが中央寮歌祭のねらいでした.
ただ寮歌はあくまでもそれを肌で知っているもののためにあり,そうした人々の消滅と共に寮歌の消滅もやむを得ないと考えている方々も一定数います.この辺の議論は難しいのですが,ともあれ第50回で終了する日本寮歌祭の理念を継承しようという趣旨で,翌2011年から中央寮歌祭が始まり,昨年8回目を迎えました(中央寮歌祭は第1回,第2回という数え方はせず,たとえば昨年ならば中央寮歌祭2018と表記していた).その間日本寮歌祭を主催していた日本寮歌振興会では,寮歌伝承の集いという会を行って活動していたのですが,やはり参加者の高齢化と減少という事実に直面し,今後は中央寮歌祭と合体して新たな日本寮歌祭として復活させることになったのです.50回で終わった日本寮歌祭が今年59回から始まるのは,その間の2011年から2018年までの8回の中央寮歌祭を51回から58回とみなすということのようです.

(左写真1)受付の様子,(右同2)海軍兵学校
当日は朝からカンカン照りの猛暑でした.今年の会場は日暮里駅前のホテルラングウッドです(昨年までは新宿の京王プラザ).電車を降りて駅の外に出ると,”日本寮歌祭”のプラカードを持ったお爺さんが立っています(参加者を誘導していましたが,こんなお爺さんを炎天下に立たせなければならないほど寮歌の世界が高齢化しているといえます).
会場に入るとすでにたくさんの人でごった返していました.名簿を確認すると,私の学校の参加者は3人,自分とKの他に旧制の大先輩が来ることになっています.例年その大先輩に音頭を取ってもらうので,今年もそうしようと思っていたんですが…
現れません…
参加費は振り込まれており,申し込みはされているようなのですが,もしかしてこの暑さですから,家族に反対されたのかもしれません (>_<).結局今年は自分が音頭を取って歌うことになりました.

(左写真3)寮歌伝承の会による楽譜,(右同4)この会を引っ張ってくださる副実行委員長さんの所属校第四高等学校は大所帯です.
寮歌祭は定刻に開始,開会のあいさつから,この1年間で故人となったかたへの黙とう,檄文朗読と続いていきます.そしてお待ちかねの寮歌高唱の時間,一般に寮歌祭は北から南というのがパターンなんですが,この会は最北と最南をつなぐ数珠上にして毎年始まるところを微妙にずらす形式をとっています.今年は大阪高等学校から始まり,第三高等学校で終わる流れでした.さらに今年は新趣向として,寮歌伝承の会によるプロの歌手による寮歌指導の時間も設けられました.
学校ごとの歌は各校4分以内と決められているんですが,歌の前の挨拶や巻頭言などで時間がかかり,オーバーしてしまう学校があったため少し押してしまいました(超過すると鐘が鳴る.いつもお世話になっている能代の先生なら「早くしてください!」,「挨拶は手短にお願いします!」とダメ出しされるケースだ).
とはいえ,ほぼ予定時刻に宴は終了,私はこの会の医務係として具合が悪くなった人への対応を頼まれているんですが,幸い大きな事件はなくホッとしたのでした.
来年の第60回日本寮歌祭は2020年8月2日今年と同じ会場で行われる予定です.
ちなにみこの日の模様が夜のNHKニュースで紹介されていた模様です ( ゚Д゚)
旧制高校の寮歌を歌い継ぐ催し
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