歌劇「トゥーランドット」
先日,7月18日新国立劇場で上演されたプッチーニの歌劇トゥーランドットを鑑賞してきました.
トゥーランドットはプッチーニが最後に取り組んだオペラです.1896年のラ・ボエーム,1900年のトスカの成功によってイタリアオペラ界の第一人者となったプッチーニですが,20世紀に入ると三部作と呼ばれる異色な作品や,日本を舞台にした蝶々夫人(1904年),アメリカを舞台にした西部の娘(1910年)といったご当地オペラに取り組むようになります.トゥーランドットはこのご当地オペラの系譜に連なるもので舞台は中国の北京です.蝶々夫人で日本の旋律が取り上げられたのと同じように,本作では中国の旋律が採用されているのも特徴です.
今回の公演は新国立劇場と東京文化会館の共同制作で,演出家として斬新な演出で世界的に有名なラ・フーラ・デルス・バウスの芸術監督のひとりであるアレックス・オリエを招聘しています.
よく知られているようにこのオペラは未完のままプッチーニが亡くなり,フランコ・アルファーノの補筆によって完成するという,モーツァルトのレクイエムのようなパターンをたどりました.その補筆部分に関しては,初演の指揮者アルトゥーロ・トスカニーニは不満があったらしく初演ではプッチーニの絶筆の部分(リューの死の部分)で指揮棒を下ろして幕として,2日目から完成版を上演したというエピソードが残っています.
実際にリューの死からエンディングまでの流れはやや唐突な感が否めず(リューの死でトゥーランドットが急に愛に目覚めるなど),仮にプッチーニだったらどういう構成にしたのかという議論は昔からあります.今回演出家のオリエは,このオペラに流れる軸から導き出した独特の演出で最後をまとめていました(新国立の公演は終わりましたが,びわ湖や札幌での公演がまだこれからなのでネタバレは避けます).タイトルロールのテオリン(指環のブリュンヒルデ以来だ)やカラフ役のテオドール・イリンカイ,リュー役の中村恵理の歌唱も素晴らしく,見ごたえのある舞台でした.
ちなみにこの作品の初演,1926年4月25日は大正15年で,同年日本では最初のプロオーケストラである新交響楽団(今のNHK交響楽団)が結成されています.
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