さて,あっという間に6月に入りました.例年私が活動的になる季節です.昨年は6月にボリビア&チリ旅行という大型の海外旅行がありましたが,今年はそういう大型イベントがない代わりに小さいイベントがたくさん用意(?)されています.まず最初の日曜日である6月2日は表題にある,青森県新郷村で開催された第56回キリスト祭 にウチのKともども行ってきました.
新郷村というのは青森県東部,八戸市と十和田湖の中間に位置する小さな自治体です.なんでここでキリスト祭なのかというと,昭和初期にこの地を訪問した竹内巨磨という人物が,村の戸来地区の丘にあった土盛をさして「これこそキリストの墓である!」と言い出したことに由来します.竹内巨磨さんというのは,超古代に日本に高度な文明があったと主張していた人物で,彼の家に代々伝わっていた(とされている)竹内文書によると,ゴルゴダの丘で十字架にかけられたイエスは密かに脱出し,日本のこの地にやってきてここで亡くなったからなのです.にわかには(というか普通は)信じがたい話ですが,このネタを村おこしに利用したい当時の村長の思惑も絡み,徐々にこの話が広がり今に至っているわけです(この辺の話はホームページ本編に記事があります).
竹内文書自身がすでに偽書であるとの評価が定まっているので,何をかいわんやなんですが,ともかくキリスト祭はこの地で亡くなった(とされる)キリストの霊を慰めるイベントとして,半世紀以上続いている伝統あるお祭りなのです.私の琴線を大いにくすぐるイベントで,いつか参加してみたいと思っていたのですが,今回ついに参加することになりました.
前日の6月1日は夕方から合唱団の練習に参加,その後来年のコンサートで共演するオーケストラの方々との打ち合わせ&懇親会へと流れました.そして夜11時40分池袋発の夜行バスに乗ります.とはいえこの時間では青森方面まで行くバスはすでに出発しているため,この日のバスは毎度おなじみ盛岡行きのらくちん号でした(笑).
(左写真1)八戸駅にて,(右同2)いよいよ新郷村に入りました
翌朝6時30分過ぎにバスは無事に快晴の盛岡駅に到着,コンビニで朝食を調達して朝一の新幹線で八戸へ.ここでレンタカーを借りて一路新郷村に向かいます(新郷村への公共交通機関は非常に不便なので,事実上レンタカーかタクシーになる).村内に入ると,さっそくキリストの墓,ピラミッド などと書かれた看板が出現しワクワクさせられます.
(左写真3)キリストの里公園です,(右同4)キリストの里伝承館
村の中心部を過ぎて5分ほどで戸来地区に到着,ここでは係員が駐車場に誘導してくれました(8時40分頃には到着したため,会場に近い場所に停められた).知る人ぞ知るスポットなので普段はほとんど人がいないところなんですが,今日は年1回のお祭りの日ということで,たくさんの人でにぎわっていました.会場に向かう緩やかな坂にはキリスト祭と書かれた幟が多数はためいていて,非常にシュールな光景でした.
(左写真5)奥の土盛がキリストの墓,(右同6)慰霊祭は神式です
(写真7)式次第
坂を上ったところから階段を上がると2つの土盛りがあり,向かって左側の十代塚がイエスの身代わりとなってゴルゴダの丘で死んだ弟イスキリの墓,右側の戸来塚がイエスの墓とされています.この2つの塚を見上げる広場には来賓用の椅子が並べられ,正面には慰霊祭用のしめ縄や飾り付けがなされていました.そう,キリスト祭(キリスト慰霊祭)はなんと!神式で行われるのです .
開会まで1時間ほどあったので,付近を散策します.お祭り会場からさらに上ったところには十字架が描かれた教会風の建物があります.これがキリストの里伝承館で,竹内文書に描かれたキリスト伝説や当地の風俗などが紹介されています.ここもいつもは貸し切り状態なんですが,この日はたくさんの人で賑わっていました(入場料が一般200円と非常にリーズナブルです).ここでは当地名産の南部せんべいや飲むヨーグルトも売られています.
(左写真8)いよいよ始まりました,(右同9)ナニャドヤラの奉納
やがて開始時間が近づいたため会場広場に戻り,よさげなポイントで開始を待ちます.時間になりいよいよ第56回キリスト祭の開始です.観光協会の人の挨拶に始まり町長や県知事(代理),地元選出の衆参両院議員の祝辞を経て,いよいよ神主さんの祝詞が始まります.「畏み畏み~」から始まって,いろいろ喋っていくんですが,一番のツボは「イエスキリストの御霊~」という部分,真面目に唱えれば唱えるほどウケてしまうのでした.祝詞に続いて玉串の奉納,その後は地元の人たちによる墓前でのナニャドヤラへと進みます.これは当地に伝わる盆踊りの一種で,「ナニャドヤラ、ナニャドナサレノ」という不思議な歌詞が有名なんですが,キリスト伝説によるとこれはヘブライ語で「御前に聖名をほめ讃えん」という意味になるのだそうです.
ところでキリスト祭りが神式で行われ,神主さんが登場するのに,キリスト教の神父さんや牧師さんが登場しないのはなぜなんだろうと不思議に思う向きもあるようなので解説します.先のお話でも分かるように新郷村のキリスト伝説ではイエスは十字架上で死なずに日本に逃れてきたという設定になっています.ここがミソで,そもそもキリスト教とはイエスが十字架上で人々の罪を背負って死に,3日目に復活したという教義から発生した宗教です.新郷村伝説ではそこが完全に否定されているので,これは完全にキリスト教とは無縁の存在となってしまうのです.このためこの伝説はキリスト教の異端どころか,風変わりなユダヤ教のラビが迫害されて国外に逃亡しただけという話であり,キリスト教の聖職者にとっては関わってはいけない存在となっているのです(だから当慰霊祭が神式であるのは必然です).キリスト教では救い主イエスだが,新郷村では逃亡者イエスとなるわけですね.
VIDEO
(写真10)乾杯用のヨーグルト
踊りの後は全員乾杯でお開きとなります.乾杯といえば普通はお酒になりますが,なにせ新郷村は交通の便が悪く,やってきた観光客の大半は車なので,なんと!地元の飲むヨーグルトが振る舞われて乾杯でした(濃厚で美味しかったです (^^)v).かくして慰霊祭は滞りなく終了しました.
(左写真11)キリストっぷ,(右同12)ロゴが素敵です!
お祭りの後を少し堪能した後は,公園そばにある売店に向かいます.ここが,その名もキリストっぷ というお店,ロゴは某コンビニチェーンを彷彿させます.開店時間が「十字架ら3時まで」とぶっ飛んでいます.以前来たときは平日だったので閉まっていたんですが,この日は開店営業中のキリストっぷが見られました.いろんなキリストグッズが売られていましたが,この日はステッカーやキリストの遺言手ぬぐいなどを購入しました(併設されたカウンターでは軽食も出されていて,外国人観光客がカレーを食べていた).
(左写真13)ラーメン亭えびす屋さん,(右同14)おすすめはキリストラーメン
キリストっぷを後にして我々が向かったのは地元では有名なラーメン屋さん,もちろん昼食のためですが,ここにはなんと!キリストラーメンがあるのです.出てきたラーメンは醤油味で山菜やキノコなど健康的なもの.どこがどうキリストなのかは謎でした(思うに2枚載った山芋スライスが2つの塚をイメージしているのだろう).こうして新郷村訪問は完了したのでした.
(写真15)これがキリストラーメン!
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