ボリビア&チリ旅行記⑤
6月の旅行から間もなく2か月,しばらく中断していたボリビア&チリ旅行記を再開します.今回はウユニ塩湖編その2です.
ウユニ塩湖での一夜が明け6月12日になった.この日も前日に引き続きウユニ塩湖の観光となるのだが,スタートはゆっくりである.これは今回はウユニ塩湖の観光はメインでないというのと,ロストバゲージとなった我々のためにガイドさんが街で下着やその他(特にウチのKのコンタクトレンズ洗浄用の生理食塩水)を購入してきてくれることになったからだ.
ゆっくりでいいとはわかっているが,体内時計はそれとは関係なく動いているのか,この日も朝5時に目が覚めた.しばらくウダウダしているうちに夜明けを迎える.7時30分ごろに朝食にするためにレストランへ.今はシーズンではないのか客の数は少なめだった.メニューは一般的なビュッフェ,夕食もそうだったがあまり特徴がない感じだ(ただしここボリビアでは特徴がないというのは食事のレベルは高いということを意味する).飲み物はこの日ももちろんコカ茶である.
朝食の後は部屋に戻り,何もせずに休息.考えてみたら9日の出発以来,ラパス到着の遅れ,ロストバゲージ騒動があって,さらに昨朝は4時起きと休む暇もなく活動していたわけだから,ここでゆったりと疲れをとるのも悪くないなと思った.
待ち合わせの時間が近づいてきたためロビーへ,チェックアウトを済ませてソファで待機する.外を見るとちょうど1台の4WDが出発していくところだった.その後しばらくして我々の車も到着,いよいよ出発となる.この日の予定は最初にコルチャニ村で博物館の見学,その後塩湖内に入ってインカワシ島の観光,その後ネタ写真タイムをはさんで塩湖の南岸を抜けて次の宿泊地サンペドロ・デ・ケメスに向かう流れである.
ホテルを出発してまずはコルチャニ村へ.向かった先はMUSEO DE LA LLAMA Y LA SAL(日本語に訳すとリャマと塩の博物館であろうか),2015年に来た時には入った記憶のない場所だ.ここは「地元の人たちがリャマと塩をどのように利用しているか」をテーマにして紹介展示している博物館だ.リャマや塩の利用がジオラマ(のようなもの)で表現されているコーナーもあるのだが,日本だと結構精密なジオラマが展示されていて見入ってしまうことがあるが,ここのジオラマはその辺で売っているおもちゃを適当に組み合わせた感じで,リアリティが全くないのが逆に面白かった.
(左写真2) リャマと塩の博物館,(右同3) なんか惹かれるチャチなジオラマ(笑)
博物館の見学が終わると,続いて塩湖に入っていく.この日はまず三角錐に盛られた塩山が並ぶスポットへ(スペイン語ではMontones de sal=塩の山というらしい).これは採掘された塩を乾燥させるためのものなのだが,その独特の景観も相まって,ウユニを扱った本には必ず登場する有名スポットとなっている.この日も多くの観光客が記念写真を撮っていた(一般にウユニ塩湖では他のグループが写真に写りこまないように,運転手やガイドが場所選びをするのだが,このスポットだけはそうもいかないらしい.
(左写真4) 塩の山は今回のボリビアで一番他の観光客を目撃したスポットかも,(右同5) 記念撮影
塩の山を後にして,我々の車は今度は西へひた走る.目的地は塩湖の中ほどにあるインカワシ島である.島と名付けられているのは,塩の湖に浮かぶ島だからだ.ウユニ塩湖は全体での標高差が数十センチと,ほぼまっ平なのであるが,湖内に何か所かこうした島が点在している.インカワシ島はそうした島の中でもっともよく知られた場所である(なお,一部ではインカワシ島を別名魚の島(Isla pescado)と記しているものがあるが,魚の島はインカワシ島から少し離れた場所にある別の島である).雨季の水が多い時期には訪問が困難な場所だが,乾季のこの時期は時速100キロで突っ走れるので問題はない.
(左写真6) インカワシ島の島影が,(右同7) ようやく到着
しばらく走っているうちに前方に島影が見えてくる.「おっ!そろそろか」と思わせるが,大平原で遠近感がマヒしているので,実はここから距離がある.それでも徐々に島影が大きくなり,その全貌が見えてきた.インカワシ島は横から見るとなんとなく前方後円墳を彷彿させる形状で,島全体に巨大なサボテンがニョキニョキ生えている.車はそんな島を回り込むようにして上陸ポイントに入っていった.
(写真8) ウユニ塩湖内にはこうした島がいくつもある
さすがに有名な場所なので上陸ポイントには結構多くの車がいる.我々もここから島に入っていく.まずは受付を済ませて,その次にトイレへ.昨日のプラヤブランカよりもさらに辺鄙な場所なので,トイレ環境はどうなんだろうと思ったが,予想以上に普通で安心した.
(左写真9) 受付&トイレ棟,(右同10) 上陸ポイント
ここでガイドさんから案内があった.インカワシ島にやってきたが,頂上まで登るかどうかはオプションだとのこと.塩湖自体が標高3700メートルであり,そこからさらに30分近い山登りは体力的にもきついので,どうするかは我々の判断に任せるということだった.せっかくここまで来たのだから,登らないという選択肢があるはずもなく,二つ返事で「登ります」と答える.すると今度はレストランの方を指さし,先に昼食を済ませてから登るか?それとも登ってきた後で昼食にするか?とのこと.これに関しては文句なしに後者を選択した.食事後の山登りは胃腸に血液が集まるため非常にきつくなることをかつてマチュピチュで実体験していたからだ(このように過去の教訓を生かしている我々である 笑).
(左写真11) 珊瑚性の岩がありここがかつて海の中だったことがわかる,(右同12) 振り向けば絶景!
そんなわけで,さっそくインカワシ島の山頂目指して登り始める.標高3700メートルは地上に比べて酸素濃度は約6割である.高地3日目ということで少しは順応しているはずだが,やっぱり息切れするので休み休み登っていく.周囲には巨大なサボテンがたくさん生えている.車から見たときはあまり感じなかったが,とにかくデカい! この地のサボテンの成長速度は1年に1センチ程度だそうだが,優に10メートルは越えているような個体もある(ということは1000年以上生きていることか).登山道には珊瑚性の岩があちこちにみられる.これは太古の昔,ここが海だった証拠であり,改めて大自然の偉大さを感じた.
(左写真14) 山頂にて,(右同15) 向こうに見えるが魚の島(Iala Pescado)
そんな登山道を登ること20分,ようやく山頂に到着した.そしてここからの眺めの素晴らしいこと! 地平線の果てまで広がる一面の塩,塩,塩,雪原または雲海を彷彿させる光景である.まさにウユニ塩湖を独り占めという感動を味わったのだった.
(写真16) 山頂にあった祭壇のようなもの
しばし山頂の景色を堪能したのち下山の時間となった.山頂付近は一方通行になっているため,帰路は往路とは異なる風景が楽しめる.途中で道が二股になっているところがあり,ガイドさんがこっちは楽なコース,あっちはハードなコースと言ってたので,「なるほど,じゃあ我々は楽な方に行くんだな」と思ってたら,どんどんハードコースに入っていくではないか(笑),仕方ないのでそのままついていったが,たしかにちょっとハードだけど珊瑚の門と呼ばれる天然のアーチなど変わった景色が見られたので良しとしよう.
(左写真17) 珊瑚の門,(右同18) 門から塩湖を望む記念撮影
そのまま下って行ったら,一人の白人のおじさんが崖の方をじっと観察していた.我々が近づいていくと,「静かに」というようなジェスチャーをしている.何だろうとその方向を見てみたら,なんと!ビスカーチャが佇んでいた.耳が長いのでウサギの間違われるが,実はネズミに近い動物である(チンチラの親戚).天然物が見られてちょっと感動である.
下山した後は麓のレストランで昼食,さすがに登山の後でおなかが空いている.この日はインカワシ島レストランの名物リャマステーキ,脂身の少ない牛肉といった味わいで美味しかった(前菜は野菜のスープ,デザートはやたら甘いイチゴゼリー).ちなみにリャマの肉は高タンパク低カロリーなのでヘルシーだそうだ.
(左写真20) 島のレストラン,(右同21) 名物リャマステーキ
昼食後インカワシ島を後にして再び塩湖を突っ走る.乾季のウユニ塩湖といえば真っ白い大地に六角形の亀の甲のような文様であるが,コルチャニ村付近など塩湖の東側は車に踏みつけられているため,なかなかきれいな文様にはお目にかかれない.しかしインカワシ付近など奥の方はやってくる観光客も少なく,きれいな文様が見ることができた.そんなウユニ塩湖の奥深くを走りながら,周辺に何もないところで停車,ここでネタ写真の撮影タイムとなる.
(左写真23) きれいな塩の文様,(右同24) ウユニ塩湖お決まりのジャンプ
3年前にもいろいろ写真を撮って遊んだ自分,今回もジークフリート対ファーフナーなんていうネタを考えて準備していたのだが,ロストバゲージのために残念ながらそれらはすべてボツになってしまった.というわけで今回はあまりアイテムを使わずにできるネタ写真に挑戦,ガイドさんに促されるままにいろんな写真を撮りまくった.
ネタ写の後は車に乗りそのまま塩湖を南下していく.徐々に前方に山が見えてきた.あそこが塩湖の南岸ということになる.それまで真っ白い大地だったのがあっという間に茶色に変わる.ウユニ塩湖とお別れかと寂しく思うと同時に,これから待ち受ける高地帯への期待が膨らんでくるのだった.
(左写真34) まもなく塩湖の終わり,(右同35) あっという間に地面は茶色に
塩湖を抜けてしばらくは南岸の山沿いを走行する.この辺は完全にオフロードだ.我々のランクルは土煙を上げながらそんな大地をひた走った.30分ほどで遺跡のような場所に到着した.ここが銀河の洞窟(Cueva de las Galaxias),悪魔の洞窟(Cueva del Diablo)と呼ばれる,名前の通り2つの洞窟が並んでいるスポットだ.地球の歩き方など一般のガイドブックには載っていない場所のためか,この時駐車場には誰もいなかった.
(左写真36) 日本ではあまり知られていない観光スポット,(右同37) まずは銀河の洞窟へ
車を降りて受付を済ませてまずは銀河の洞窟に入った.ここは2003年8月22日にNemecio CopacとPelagio Huaytaという2人の地元の人間によって発見された洞窟である.太古の昔ここが海だった時代に火山活動で噴出した溶岩が海水によって冷やされてできた地層といわれ,鍾乳洞のようである.洞窟の天井岩に混在している水晶がきらきら光る様子から銀河の洞窟と名付けられたと思われた.発見者の2人は本来は宝探しをしていたらしい.
(左写真38) 銀河の洞窟の案内,(右同39) 鍾乳洞のようです
続いてはその隣にある悪魔の洞窟へ.こちらは一転しておどろおどろしい名前であるが,昨日訪問したトゥヌパ山と同様数多くのミイラが安置された洞窟となっている.トゥヌパ山の方はミイラと人間が同居した住居だったが,こちらは墓地だったようで,安置されたミイラを小さな穴から見ることができた.このミイラの人々がどのような文明の人たちであったのかはわかっていないが,なんとも厳かな気分になる場所だった.
(左写真40) 悪魔の洞窟,(右同41) 十字架はもちろん発見後に置かれたもの
2つの洞窟の見学が終えて車に乗り込み,そのまま南下していく.周辺には荒涼としたアルティプラーノの大地が広がっており,時々ビクーニャの群れに遭遇したりする.約1時間でこの日の宿泊地サン・ペドロ・デ・ケメスに到着した.
(左写真44) アルティプラーノの荒野,(右同45) ビクーニャの群れ
ここは人口100人程度のごく小さな村であるが,19世のチリとボリビアの戦争時には最前線となった場所であり,ボリビア人ならだれでも知っている村らしい.ここにあるホテル・タイカ・デ・ピエドラがこの日の滞在先となる.
(左写真46) ホテル・タイカ・ピエドラ,(右同47) 山荘風のフロント
見た感じは山荘風,フロントやロビーも質素だがいい感じを醸し出していた.村があるとはいえかなりの辺境地区であり,電気は自家発電,お湯は太陽光を利用して昼間の間に貯めておいたものを使うというスタイルである.そのためシャワーのお湯は夕方から夜にかけてしか出ないとのことだった(溜まっている分がなくなったらお終い).部屋に入ると山荘風の部屋であるが,なんか寒い.一応ヒーターが付いているのだがあまり威力はないようだ.このまま夜になるとシャワーを浴びること自体が試練になりそうなので,夕食前にさっさと利用することにした.
一休みして18時過ぎから夕食となる.やっぱり山荘風のレストランでのコース料理だった.スープ,チキン,チョコムースのデザートという流れだが,メニュー選択の余地はない(まあこんな場所だから当然だが).飲み物としては例によって赤ワインを選択,思えば初めてのアンデスでクスコ(標高3000メートル)に入った時は用心してアルコールを飲まなかった我々が,標高3800メートルのホテルで平気でワインのフルボトルを開けるまで高地慣れしていることに感動を覚えた(夕食が終わるころに地元の人たちの踊りのパフォーマンスもあった).
(左写真49) 夕食風景(我々の他ドライバーのモセスさんとガイドのアンドレアさん),(右同50) メイン料理のチキン
食事後部屋に戻ったが,日が暮れたせいか一段と寒い! 結局この日は昼間の格好のまま就寝することになった(さらにエクストラ毛布を重ねた).
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