歌劇「松風」
南アフリカ旅行からほぼひと月が経過しました.季節外れに休暇を取ったこともあり,帰国後はほぼ職場でひたすら仕事の日々だったんですが(余暇は2月6日に宇宙戦艦ヤマト2202を観に行ったくらいか),2月18日日曜日に新国立劇場で上演された歌劇「松風」を観劇してきました.
松風は日本の古典芸能である能の有名な演目を細川俊夫がオペラ化したものです.そのオリジナルは「撰集抄」や「源氏物語」中にある説話や「古今和歌集」にある歌をベースに室町時代の観阿弥が猿楽としてまとめたもの,罪を得て須磨の地に流された在原行平が愛した地元の娘,松風・村雨姉妹の物語です.
オリジナルが能とはいえ,歌詞はドイツ語で,楽器も風鈴が用いられる以外は基本的に西洋の楽器です.能の面が登場することもありません.しかし,セリフ回しや構成は普通の西洋オペラとは異質な能の空気に満ちています.語り手たる旅の僧,亡霊である松風・村雨の未練から狂気を経て(おそらくは)成仏していくという一連の流れが,途切れることなく緊張感の高い音楽と踊りでつながっていきます.1幕モノの狂気作品ということでR・シュトラウスの「サロメ」を想像したんですが,エログロなど世紀末的退廃が前面に出ているサロメと違って,もののあわれに代表される日本的な美しさが際立つ作品に仕上がっていました.シンプルな言葉と音楽,そして踊りが融合する舞台は,いわゆる歌劇とはことなる総合芸術作品だなと感心しました(和風のワーグナーか? 笑).
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