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2017年10月20日 (金)

金銭入試

 世に裏口入学という言葉がある.これは正規の試験では合格がおぼつかない生徒(とその保護者)が,学校関係者とのコネやお金の力などを使って入学することを指す用語である.

 一般には裏口入学という言葉はネガティブな意味で使われる.それは,学校側が公表している入学者選抜方法とは異なるやり方,すなわち不正な方法による入学であるということと,こうした際に動くお金が大学の正規の会計には乗らず,あっせん者や学校関係者の闇マネーとなるからだと思われる.最近ではどうなのかはわからないが,特に保護者が自分の子弟を何としても入学させたいという動機が強い,私立医学部などではかつてこの手の入学はあったとされている.

 ちなみに自分が現役だった頃の医学部入試はほぼペーパー試験がすべてだった(面接や小論文を課する大学もあったがウエイトは大きくない).しかし近年では,AO入試とか地域枠の推薦入試学士入学制度など学力試験絶対ではない入試枠も存在している.であるならば,多額の寄付金の納付を前提とした入試枠があってもいいんじゃないだろうか.すなわち金銭枠入試である.

 先に出した裏口入学が問題なのは,大学が公表している選抜方法と異なることが理由だ.であるならば,あらかじめ定員の一部を規定の金額を納付することを条件に選抜すると公表していれば,そうした入試があっても良いことになる.

 こういうことを言うと,「金持ち優遇だ!,不公平だ!」という声が聞こえてきそうだ.だが,待ってほしい,不公平というなら地域枠だって不公平だ.これは特に地方の医師定着率の悪さが背景にあるのだが,特定地域出身の生徒を特別枠で優遇することは,他の生徒にとっては不公平そのものである(おまけに地域枠で入学した生徒が100%その地域で働いてくれる保証はない).地域枠がありなら,金銭枠があったっていいだろう.特に近年は国立大学でも独法化されて財政が厳しいのである.お金をたくさん払ってくれる保護者は有難い存在だ(裏口入学と違って,この金銭枠で得られた収入はすべて大学の会計に組み込まれる).

 もちろんこの金銭枠,「お金を払う=合格」という意味ではない.いくらお金を積んだとしても,大学の授業についていける基礎学力のない生徒は入学させるべきではない.特に医学部は修業年限6年と長い上に,最後は国家試験という学力以外に頼ることができない関門が待っている.入学段階で,明らかにそれにパスできそうもない生徒を入学させることは,その生徒や保護者にとっても不幸なことである(医学部は順調に進級しても卒業段階で24歳になる.途中で留年などをすると30歳近くになってしまうこともあり,その段階で進路変更というのも酷である).

 すなわち金銭枠とは言っても当然学科試験は行われるのであり,枠以上の応募があった場合の選考は学科試験の成績で決まることは言うまでもない(仮に応募者が定数以下の場合でも大学の設定した最低点をクリアしていないと入学は許可しない).この制度のメリットは一般枠に比べると合格最低点が低くなることにあり,大学の授業についていけるだけの学力はあるものの,一般枠での合格最低点に届かない生徒を金銭で救済するのが主眼である.もちろん入学後は一般枠・地域枠・金銭枠といった区別は全くなく,授業や試験によって進級・留年が決まっていくことになる.

 そんな入試制度もあっていいんじゃないかと思ってみた.もっとも自分が高校生の頃にこの制度があったとしても,当時の実家の経済状況から金銭枠での入学など夢のまた夢だったのは言うまでもない(それどころか私立の医学部自体が考えられなかったからなぁ 笑).

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