歌劇 ラ・ボエーム
一昨日の木曜日(11月17日),東京初台にある新国立劇場でプッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」を観劇してきました.
19世紀末から20世紀前半にかけてのイタリアオペラを代表する作曲家として有名なプッチーニの諸作品の中でも,トスカ,蝶々夫人と並んでひときわ人気の高い演目です.
プッチーニが活躍した時代のオペラ界は19世紀後半に吹き荒れたワーグナー旋風が一段落して,オペラの新しい可能性を模索していた時代です.すなわちそれ以前のヴェルディやワーグナーにおいて物語の中心人物だった王侯貴族に代わって,市井の人々の日常などを中心とするよりリアリティの高い題材を取り上げていった時代です.レオンカバッロの「道化師」やマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」といったいわゆるヴェリズモオペラがその代表で,プッチーニの作品もその延長上にあります.
このラ・ボエーム,主要登場人物は6人で,王侯貴族はひとりもいません.すべて芸術家の卵など一般の人達です.そんな彼らが描く群像劇がこのオペラです.
全4幕構成の作品は典型的な起承転結のスタイル,第1幕では貧しい若者たちの他愛のない共同生活から始まり,詩人ロドルフォとお針子ミミの出会いと恋の始まりが描かれます.続く第2幕はクリスマスイブ,大勢の人出で賑わうカルチェラタンの場面です.若者たちがカフェで飲み食いしているうちに,画家マルッチェッロのかつての恋人ムゼッタが登場,いろんなドタバタがコミカルに描かれる楽しい幕です.
第3幕は打って変わって,寒い雪の早朝.若者たちに恋するというだけでは生活ができないという厳しい現実が突きつけられる幕です.すでに病に侵されているミミを,どうしてあげることもできないロドルフォは彼女との別れを決意します.そして最後の4幕は,元の共同生活に戻った芸術家たちの生活が描かれる前半,愛するロドルフォのもとに戻ってくるミミのいじらしさと悲しい死別が描かれる後半に分かれます.全編とにかくプッチーニの甘美な音楽と合わせて本当に泣けます(プッチーニの音楽って今でいう映画音楽の走りみたいな感じなんですね).
今回の新国立の演出は2003年以来何度も再演されているもので,私も何度も見ているんですが,今回はここでは初登場となるミミ役のフローリアン,ロドルフォ役のテッラノーヴァが良かったです(あとは合唱も.新国立の合唱は個々の技量が素晴らしいのに加えて人数が多いこともあって迫力満点です).
ちなみにラ・ボエームは自分にとっても思い入れの深い作品で,弘前時代に市民オペラでこの作品のステージに乗ったことがあります(20年以上前のことだけど,面白かったなぁ (^。^))
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