プラハ国立歌劇場の「ノルマ」公演
昨日,11月6日は来日中のプラハ国立歌劇場によるベルリーニの歌劇「ノルマ」公演に行ってきました.実はウィーン国立歌劇場も来日中なんですが,自分的には絶対「ノルマ」だろう,ということで楽しみにしていた演目です.
ベルリーニの歌劇「ノルマ」は19世紀前半のイタリアオペラの代名詞とでもいうべき,ベルカント・オペラの傑作です.ただ傑作とされる割には上演頻度が高くない作品でもあります.これはひとえにタイトルロールのノルマ(これは人名,別に販売ノルマなど達成目標のことではない 笑)をはじめとするキャストに高い技能が要求されるため,歌いこなせる歌手をそろえるのが難しいことに一因があります.なので自分も生観劇は初でした.
今回の公演でのノルマ役はこの分野の大御所,エディタ・グロベローヴァとディミトラ・テオドッシュウのダブルキャスト,この日はグロベローヴァの回でした.グロベローヴァといえば,自分が学生時代にサヴァリッシュ指揮のバイエルン国立歌劇場の公演ビデオで夜の女王を歌っていたのが初見でした.以来この系統の第一人者として活躍してきた人ですが,あれから30年,だいぶ年齢も重ねたしどうなんだろうと,楽しみに出かけました.
会場は渋谷のオーチャードホール,こうした海外歌劇場の東京公演といえば定番は上野の文化会館ですが,そっちはウィーン国立歌劇場が使っているのでこちらになった模様です.日曜日の公演ということもあってほとんど満員の入りでした.
15時になって公演開始,演出は巨大な壁のようなブロックを動かすだけのシンプルなもの(前列に座っていた年配女性が「牢獄みたい」といっていた 笑),もっともお芝居自体が神殿を中心としたものなので,その辺の地味さは気になりませんでした.序曲が終わって,ポリオーネのアリアを経ていよいよグロベローヴァのノルマが登場,さあ序盤のクライマックス「清らかな女神」です.
が… 音が安定していない (*ノωノ)
たしかに非常に難度の高い曲ではありますが,歌も途切れがちでかなり苦しそう(声自体は通るんですが).結局消化不良のままこの名アリアは終わってしまいました.その後はアダルジーザとの二重唱,ポリオーネを交えた三重唱と進んでいきますが,こちらも今一つ調子が上がらず.アダルジーザ役のスヴェダとポリオーネ役のトドロヴィッチが良かっただけに残念でした(グロベローヴァの調子がイマイチだったことから結果的にアンサンブルの声のバランスは良いという妙な結果になりましたが).
休憩後の2幕では特にアダルジーザとの二重唱の辺りはだいぶ盛り返してきましたが,全体的に彼女の全盛期を知る者としては寂しい感じでした(会場からは温かい拍手が起こってましたが).まあ年齢云々を言ってはいけないんですが,もう70近い年齢でこういう至難の曲を歌うことの難しさを実感しました(1960年頃に全盛だったヘフリガーなんかは一時衰えたなんていわれたものの,1980年代に再び盛り返した例もありますが,ベルカントオペラとドイツリートは違うしなぁ).
そんな感慨に浸った11月6日でした.
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