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2016年11月 5日 (土)

14歳からのリスク学

14riku  今日は最近読んだ本のお話です.

 「14歳からのリスク学」,著者は山本弘さん.SF作家であるとともに,かつてと学会(いわゆるトンデモという言葉を世に知らしめた)の会長をされていた方です.自然科学全般に造詣の深く,科学的考察に基づく論理的なお話は非常に興味深く,自分も氏の著作には深い感銘を受けていました(本業のSF作品の方はあまり読んでないんですが… 笑).

 この本はタイトルからもわかるように,これから社会の荒波に船出していく14歳の子供(中学二年生か?)に,社会に存在するリスクというものにどう向き合うべきかを平易な文章で解説しているものです.

 私たちの周辺には様々なリスクがあります.ちょっと外出する時だって,交通事故に遭遇するリスク,変質者に襲われるリスク,他人にぶつかって損害を与えてしまうリスク,隕石が降ってきて自分に直撃するリスクなど枚挙にいとまがありません.リスクは少ないことに越したことはないのでしょうが,残念ながら不確定性の世界に生きている以上それは不可能です.ただリスクには比較的高いものと,非常に低いものがあります.外出の例でいえば,交通事故のリスクは比較的高いですが,隕石が降って来るリスクはおそらく極めて低いでしょう.ですから私たちは外出の際,交通事故には十分気を付ける必要がありますが,上から降ってくる隕石にはあまり注意する必要はありません.

 本書の主眼となっているポイントは,リスクを正しく評価し正しく怖がれというところです.世の中では実は対したリスクではないにもかかわらず,それをことさらに取り上げて大騒ぎする一方で本当に怖いリスクには無頓着というケースが多々あります.そんな例として本書ではこんにゃく入りカップゼリーや輸入中国食材のケースなどを紹介しています.

 前者は幼児がのどに詰まらせ亡くなった事件で大きな話題になり,その後法規制までされたケースです.実は統計学的なリスクでいえばこんにゃくゼリーよりも餅の方がはるかに危険な食材で,こちらは毎年のようにたくさんの人が亡くなっているんですが,なぜか規制しようという動きはありません.著者はそこには私たちの深層心理に「昔からあるもの=安全」,「新しいもの=危険」という根拠のない思い込みがあるからだと推測しています.

 後者は中国の工場で起こった食品偽装事件に端を発したメディア等での異常なまでの輸入中国食材バッシングのケースです.中国といえば大気汚染とか汚職とか,近年マイナスのイメージがありますが,そこにこうした偽装事件が起こったことで一気にバッシング,排斥運動になったものと推測されます.が,厚労省の輸入食品監視統計によると中国から輸入される食材の違反率は他の国に比べて実は少ないことがわかります(輸入量が多いために実数としては多い).中国国内で流通している食材に関してはもちろん注意が必要ですが,日本に輸入してくる場合は当然検疫があります.そこをクリアできなければ廃棄となります.輸入業者もバカではないので,そんな無駄になる恐れのある食材は最初から持ってこないからです(不良業者が一定数いるのは事実でしょうが,それは中国に限らず他の国,さらには国内業者も同じです).

 本書ではその他,アニメ・ゲームと犯罪の関係,2011年以降話題になっている放射線の話など広い分野でのリスクの評価とどう対応すべきか考察しています.14歳からとありますが,大人が読んでも十分に面白い内容になっています(というか,ぜひ読んでほしい大人がこの世に大勢いると思ったのは私だけでしょうか 笑).

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