楽劇 ワルキューレ
先日の10月12日新国立劇場に出かけてきました.演目はR. ワーグナーのワルキューレ,大作ニーベルングの指環の2作目にあたります.新国立劇場では昨年のラインの黄金から新しい演出(とはいってもフィンランド国立歌劇場でやったプロダクションなので,ピカ新ではなくゾロ新という感じか 笑)による指環が始まりましたが,その第2弾ということになります.
前作ラインの黄金では,ニーベルング族のアルベルヒがラインの乙女たちから黄金を奪って作った,世界を支配する力を持つ指環が紆余曲折の末,巨人族のファーフナーの手に渡り,一方で神々の長ヴォータンは完成したヴァルハル城に入場したところで終わりました.
今回の第一夜「ワルキューレ」では,いよいよ英雄ジークフリートの物語が始まります.とはいっても,まだジークフリートは登場せず,今回は彼の誕生に至る物語が展開されていきます.
この作品は指環四部作のみならず,ワーグナー全作品の中でも傑作の誉れが高い作品です.言ってみればもっともワーグナーらしい作品ともいえます.それだけに濃厚なドラマが展開されるんですが,特に濃いのが第2幕後半のジークムント,ジークリンデとブリュンヒルデのからみと第3幕最後のブリュンヒルデとヴォータンの二重唱で,あまりの濃さにめまいがします(音楽としては第3幕冒頭でワルキューレたちが走り回る場面が,一般にワルキューレの騎行と呼ばれ,特に有名な場面です(映画「地獄の黙示録」で使われた).
(写真) 幕間に見に行ったら指揮台に指揮棒が3本も置いてありました.これって指揮中に興奮して棒を曲げてしまった場合の予備なんでしょうか(笑).
登場人物が少ないのもこの作品の特徴で,第3幕にワルキューレが8人(ブリュンヒルデも含めると9人)出てくる以外は,ジークムントとジークリンデ,ヴォータンとブリュンヒルデのメイン4人にフンディングとフリッカを加えた6人だけで物語が進んでいきます.それでいて演奏時間は4時間ですから,配役ひとりひとりに与えられた役割や歌唱が極めて重要で,それがために仮に歌い手がイマイチな場合,聞いているのが拷問になることもあります(一般的なオペラ作品で定番の合唱がこの作品にはない).
が,今回はジークムントのグールド,ジークリンデのウェーバー,ヴォータンのグリムスレイ,そしてブリュンヒルデのテオリン(前回の指環のブリュンヒルデもこの人だった)と歌手陣の出来が非常によく,ともすれば睡魔に襲われかねない(笑)2幕のヴォータンの独白や3幕の後半もぐいぐい引き込まれていく感じで時間を感じさせませんでした.
そんなワルキューレの公演,なにせ長いのでこの日は幕間に劇場内のレストランで夕食を頂きました(幕間に食事ができるほどワーグナーは幕間も長い.歌手の休憩のためと思われる).メインはローストビーフ,赤ワインとの組み合わせが最高です.
で,この日開演のちょっと前に自分の近くの席にいた若いカップルがいきなりケンカを始めました((;゚Д゚)).ケンカと言っても女性の方が一方的に男性に詰め寄って小突いている感じだったんですが,ちょっと怖かったです(何があったんだろう…).
それはともかく,次のジークフリート公演は来年6月の予定です.
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