暗黒流砂
最近空き時間に鑑賞している1977年の森村誠一シリーズ.第2弾は「暗黒流砂」,国土庁による国有地払い下げを巡る政財界の巨大な汚職と,それに立ち向かう若い元刑事という内容である.この主人公である元刑事中瀬を演じるのが北大路欣也,若い熱血漢である(そういえば彼は同じ年映画「八甲田山」で雪中行軍で遭難死する神田大尉役をやっていた).
権力・財力をを持つ巨悪に蟷螂の斧よろしく立ち向かっていく若者という構図は,いかにも森村誠一的なストーリーだ.
以下ネタバレ注意
「国土庁が管理する国有地がいつの間にか民間に払い下げられ,しかもそこに豪邸が立てられて国土庁長官の愛人が住んでいる」.この匿名の情報の裏に巨大な汚職の影を感じ取った若き刑事中瀬は捜査を始める.しかし上層部からは捜査を打ち切るように圧力がかかって来た.それでも直属の上司の黙認によって中瀬は捜査を続けるのだった.
そんなある日,中瀬は地下鉄内でチンピラに絡まれていた和装の女性を救う.なんと,その女性こそ国土庁長官の愛人久田芙美代だった.お礼をしたいからと中瀬は芙美代に誘われる.躊躇するが,汚職事件の関係者とコネクションができることに惹かれ誘いに乗る中瀬,だがそれは罠だった…
婦女暴行の罪で告発された中瀬は警察を懲戒免職となる.だがそれでもあきらめない彼は友人や恋人の協力を得ながら必死に個人として捜査を続けていく.そんな彼に敵は第2の罠を仕掛けてきた.匿名の電話で赤坂のホテルに呼び出された中瀬は,そこで起こった殺人事件に遭遇する.実はこれは彼を殺人犯に仕立てる罠だったのだが,ちょっとした偶然によってその危機は逃れることができた.いよいよ敵は本格的に自分を排除しようと乗り出してきたことを知った中瀬だが,もちろんそんなことでめげる男ではない.
だが,彼が真相に迫ろうとすると,その関係者や証言者が謎の死を遂げたり行方不明になったりする.すべて巨悪が我が身を守るためのトカゲのしっぽ切りである.それでも最後,殺人事件の謎が解け,汚職の方も政財界の中ボス(笑)が自白することで,巨悪政治家の逮捕に至るのだった.
ちなみに原作では中瀬の他に,部下の些細な汚職に連座させられて公務員をくびにされた梅野の二人が軸になるのだが,ドラマ版ではほぼ中瀬単独でストーリーが進んでいく.信州方面の山々が舞台に登場するのは腐食の構造と一緒だが,巨悪が裁かれることなく終わる腐食に比べて,とりあえず逮捕に至る暗黒はまだ報われるラストではあろうか.
そんなことを考えた暗黒流砂だった.
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