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2014年12月 1日 (月)

珍しい血液型

 今日の日中,Yahooのトップページに出ていたニュースです.

 世界でたった43人の「黄金の血」

 なんのことかと思ってみてみたら,非常にまれな血液型の話題でした.

 血液型というとABO式が有名で,その組み合わせからA型・B型・AB型・O型の4種類に分類されることはよく知られています.

 しかしながら血液型というのはこのABO式だけではなく,ほかの分類法もあります.その中で,世間的にもよく知られているものがRh式です.これはもともとアカゲザルの赤血球の表面に発現している抗原(Rh因子)と同じものを持っているか否かによってRh陽性・Rh陰性とする分類です(Rhとはアカゲザルを意味する”rhesus monkey”の最初の2文字).

 もっともRh因子は1つではなく,主なものでD因子,C因子,c因子,E因子,e因子の5種類があります.このうちCとc,Eとeは対立因子になり,組み合わせとしてはCDe, cDEなどのようになります.そして人間は両親から一つずつ遺伝子をもらっていますから,結局はCDe/cDE などの組み合わせで因子を持つことになります.これを表現するとCcDEeという形になります.一方でこれらRh因子を持たないというケースも稀ですがあります.

 この5種類のRh因子のうちでもっとも重要なのがD因子です.仮にD陽性の血液を陰性のヒトに輸血した場合,血液の凝集や溶血が起こることがあります.一方で残りのC, c, E, e因子は抗原としての力が弱いため,臨床的には重要視されず,一般にRh陽性・陰性という場合はD因子のことを指します.

 で,今回のニュースで話題になっていたのは,上記Rh 5因子すべてが陰性というケースのことで,こういう血液型をRh null(null=ヌル とはドイツ語でzero=ゼロのこと)といいます.Rh D陰性が俗にいうRhマイナスのことで,日本人では約0.5%といわれています(白人だと約15%と結構多い).これがのこりの4因子もすべてマイナスということになると,どれほど低い確率なのか… 記事ではその血液型の人が世界に34人しかいないとなっていました.これだけレアなタイプになると,仮にその血液型の人が輸血を必要とした場合どうなるのか心配になりますが,実は過去に刑事ドラマ「太陽にほえろ」でこの話題が取り上げられたことがあります.

 Rh nullの人への輸血が必要になり,アメリカから緊急輸入された血液が盗まれ… という展開だったんですが,劇中で「Rh nullは世界に5人しかおらず,そのうちの2人がアメリカにいる」というようなセリフが出てきた記憶があります.この数十年で5人が34人になったわけではないでしょうが,仮にその血液型だったとしても,一般の検査ではただのRh マイナスとしか判定されないので,実際にはもっと多くの人がいる可能性もあります.

 血液型というと血液型性格判断が話題になりますが,これが人気なのは日本と東アジアの一部だけで,欧米ではほとんど話題になりません.これは日本人では4つの血液型が比較的バランスよく存在するのに対して,欧米人にはB型・AB型の人が極端に少ないため,こうした血液型による云々自体があまり意味を持たないからです.実際に血液型と性格の差異に関しては統計学的に否定されています(当たってるように思えることもありますが,これは当たっている事例がとりわけ強調されるからです).

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