マリの政情
旅行好きの私,行ってみたいところはそれこそ世界各地にあるんですが,その筆頭格に挙げられるのが西アフリカのマリ共和国北部,サハラ砂漠の最南部に位置する街トンブクトゥです.
ここは中世から近世にかけてサハラ交易の拠点としておおいに栄えた街です.14世紀にこの地を治めていた王マンサ・ムーサがメッカに巡礼した際,旅の途中でたくさんの黄金を惜しげもなく喜捨したため,アラビア世界での金相場が暴落したのはよく知られた話です.同時期にこの街を訪れた旅行家のイブン・バトゥータによって広く世に知られるようになり,ヨーロッパでは黄金の都として人々の憧れの街となったのです.
(写真) イブン・バトゥータの大旅行記,今では電子書籍でも読めます.
しかし,16世紀以降サハラを介さない海路による通商が盛んになるとこの街は衰退,19世紀にヨーロッパ人がようやくこの地に入った時には往年の繁栄はもはやなく,砂と泥の街になっていたのでした.
その後この街は世界遺産に登録され,私もいつか行ってみたい場所になっています.とはいえ,近年治安の悪化からトンブクトゥを扱う旅行会社がなくなり(大手はもちろん,道祖神のようにアフリカ専門の会社でも取り扱いが中止になっています),政情が安定することを祈ってたんですが…
なんと!マリ北部で武装勢力が決起,急速に勢力を広め,この地域で唯一政府側の拠点だったトンブクトゥが陥落したというのです.先ほど外務省の海外安全ホームページを見たら,マリ全域で危険度が引き上げられていました(外務省 海外安全情報).
マリでは先月下旬政府に不満を持つ軍がクーデターを敢行,その混乱に乗じてマリからの独立を要求する北部のトゥアレグ族武装勢力が決起,急激に勢力を伸ばしているようです(ちなみにこのトゥアレグ族がトンブクトゥの街を築いた部族です).
こうなってしまったら旅行なんて論外,黄金の都への渡航は夢のまた夢にになりそうです(現在マリへの観光はトンブクトゥを含まない,バマコやジェンネなど南西部を中心とした商品が出ているんですが,今回の件でそちらも中止になりそうな予感だなぁ).
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