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2012年2月15日 (水)

地虫鳴く 新選組裏表録

 先日ここで紹介した幕末の青嵐,面白かったので同じ作者(木内昇さん)の同じ新選組作品を購入しました.タイトルは

 地虫鳴く 新選組裏表録

 前作品が近藤,土方ら主として主要幹部の視線で見た新選組の物語だったとしたら,この作品はそういう人物ではない隊士の視線から見た新選組の動きということになります.

G1_064 今回そういう語り部的な役割を担うのは,篠原泰之進尾形俊太郎,そして阿部十郎の3人です.篠原は伊東甲子太郎の古くからの盟友でともに御陵衛士に参加する人物,尾形は新選組が結成された初期(八・一八の政変以前)からの隊士で主に監察方として活躍するなど知名度は高くないですが結構重要な仕事をしていた人物,そして残る阿部は元々大阪から谷三十郎,万太郎兄弟とともに文久三年に入隊した人物です.この三人の視点によって,慶応元年の大坂ぜんざい屋事件から戊辰戦争後明治4年の会津までが描かれる作品です.

 役柄からわかるように,篠原は伊東の傍にいて次第に佐幕化していく新選組からどうやって離脱するのか,尊攘派の志士たちとどうやってコンタクトを取るのか思い悩む甲子太郎の姿をあぶり出します.一方で尾形は主として土方の命で監察の山崎とともに伊東一派の動きを巧みに観察する役割を担っています.そして残る阿部ですが,彼はいったい自分は何のためにこんなことをやっているのかという目に見えない葛藤と戦いつつ,日々の暮らしを送っています.本作では3人の中でもこの阿部十郎がもっとも重要な枠割を担っているように感じます.当時の新選組の大多数の隊士は,みなそれぞれ思いはあったはずですが,当時の時流のあまりの速さについていくことができず,結果漫然と隊士としての仕事をコツコツやるだけのマシーンになってしまっていたのです,そういう幹部ではない隊士の鬱々とした気分が作品全体に漂っています.

 語り手3人のうち2人が御陵衛士になる人物ということもあり,物語は伊東甲子太郎とその周辺が中心になります.そういう意味では非主流派視線からの新選組物語ともいえます.出張のお伴にと思って読みはじめましたが,面白かったので一気に読んでしまいました.

 

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コメント

こんばんは、ビザ皇帝様。
なるほど、面白そうなお話ですね。
あまり知識も無い私ですので、
個々の人物を知る勉強にもなるかな?
と思いましたが、あくまでも小説でしたね

投稿: きらめき快男児!! | 2012年2月15日 (水) 19:40

きらめき快男児!!さん

いつもありがとうございます.
新選組を好きになる人って小説や映画
(最近ではゲームやアニメも 笑)
から入っていくパターンが多いですから,
知識の中身もフィクションとノンフィクションが
ごちゃまぜになってるケースが多いですね.
というか,事実と虚構の境目も実は誰も知らなかったりしますし.

投稿: ビザ皇帝 | 2012年2月16日 (木) 16:34

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