職場健診のデータ
企業などに勤める人間は必ず定期的に健康診断を受けさせられます.これは企業や団体などの管理者は従業員(労働者)の健康状態を把握してその増進に努める義務があるからです(逆に言えば,自営業の人はそういう義務がないため,自分で検診やドッグに行く必要がある).
私も一応労働者の端くれなので職場健診とは無縁ではありません.しかも病院ということもあるのか,健診が年に2回あります.
職場健診の項目としては身長,体重に腹囲(笑),血圧,視力,聴力に胸部写真,心電図,血液検査,尿検査といったところです.血液検査は一般検査(白血球,赤血球,血小板数など)に加えて,生化学検査として肝機能・腎機能・血糖・脂質,さらには病院らしくB型・C型肝炎ウイルスなんかも調べます.
若いころはともかく,中年に差し掛かるとだんだん異常値が出てきたりするんですが,何とかして正常値をたたき出したいと思うのが人情です.とはいえ,貧血や腎機能,糖尿病なんかは自分でちょっと頑張った程度では数字はごまかせません.しかし,数ある検査項目の中にはちょっとした工夫で何とかなる項目も存在します.それが,中性脂肪(TG)とγ-GTPです.
中性脂肪はその名の通り,脂肪分の一種です.一般の健診では脂質として中性脂肪(TG),HDLコレステロール,LDLコレステロールの3種を調べるのが一般的です.このうちコレステロールについては,もちろん食事の影響は受けますが,1日や2日手を加えた程度では大して変化はないんですが,残る中性脂肪は食事の影響を強く受けることで知られています.油分の多いものを食べた後はもちろんですが,大量に酒を飲んだ翌日なんかは著明に数値が高くなるんです.なので二日酔い状態の時に検査をすると,異常値が出て健診担当のドクターを困らせる事態になります.なのでよい結果を出したければ採血前夜は禁酒して臨んだ方がいいわけです.
一方のγ-GTPですが,これは肝機能検査の項目の一つに入れられているもので,具体的には肝細胞そのものではなく胆道系の酵素です.なので,たとえば胆石なんかがあると上がってくるんですが,一方で私たち医師の間ではこれを酒飲み酵素などとも呼んでいます.それは胆石がなくても酒飲みの人にはこれが異常高値を示す人が多いからです.もちろんこうした異常値を修正する方法はただ一つ,禁酒しかないわけです(一般に肝炎など肝臓そのものが痛んだ状態になると,AST/ALTといった酵素も上がってきます).
なので,酒飲みでいつもγ-GTPが引っかかる人は一定期間禁酒をしてから採血に臨めばある程度はデータをコントロールできるわけです(自分の経験では1週間の禁酒でγ-GTPは半分に下がります 笑).
というわけで,秋の職場健診,昨日禁酒した私は満を持して今朝採決に臨んだのでした(結果は来週かな).
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コメント
我が家は自営なので、先日夫婦揃って組合の健康診断を受けて来ました。
私はいつもコレステロールが低い意外は正常値なのですが、主人はまさしく中性脂肪とγ-GTPが高く、後日呼び出しを食らっています。
検診の際の注意書きにあるので前日はお酒を我慢して行きますが、その程度ではだめなのですね。
でも1週間も禁酒なんて・・できるかな?
投稿: パンダ子 | 2011年12月 3日 (土) 08:14
こんにちは、ビザ皇帝様。
私もかつて総務部で衛生管理者として検診をまとめていました。
でも、担当の大きい病院では毎回、
要再診→胃カメラ→異常なし
の人が多く出てまして「これはヤブ?」って思ってしまいましたよ。
投稿: きらめき快男児!! | 2011年12月 4日 (日) 07:13
パンダ子さん
こちらにもありがとうございました.
パンダ子さんのところは自営だったんですね.
ご主人はTGとγ-GTPが引っかかるんですか,私と全く同じです(笑).原因はほぼお酒なので,休肝日を増やしていくしか方法はないですね.
1日の禁酒ではあまり成果はでてきませんが,1週間やれば確実に出ます(本当の病気でない限りは).次回ぜひ取り組んでもらってみてはいかがでしょう(健康にもいいですし).
投稿: ビザ皇帝 | 2011年12月 5日 (月) 10:00
きらめき快男児!!さん
こんばんは,コメントありがとうございます.
おおっ,衛生管理者をされていたんですね.なかなか大変な業務ですよね.
>要再診→胃カメラ→異常なし
これって胃透視ですね.たしかに異常を過大にひっかけているんでしょうけど,逆(所見を見逃す)よりはずっといいように思います.もしかしたらそこの施設で過去に見逃した事例があるため,疑わしきはひっかける方針にしてるのかもしれません.
投稿: ビザ皇帝 | 2011年12月 5日 (月) 10:04