現代の専制君主
ネットのニュースに出ていたんですが,アフリカ南部のスワジランドで,国王の退任を求めるデモが起こっているんだそうです.
スワジランドというのは,アフリカ南東部,南アフリカとモザンビークに挟まれた場所にある小さな国です.その面積は約17000平方キロで,これは岩手県の面積とほぼ一緒です.国全体が山と言う感じの国で海はありません.人口は116万人ということで,これも岩手県より2割少ない程度です.主だった産業は砂糖,木材,柑橘類といった一次産物やその加工物(清涼飲料やパルプなど)石炭の輸出で,それ以外の電力を含めた必要な産物はことごとく輸入に頼っています.貿易収支もほぼ赤字状態です.
同国の政治体制は憲法を有する君主制ですから,一応立憲君主制ということになります.しかし同じ立憲君主制でも近くにある同じくアフリカ南部の小国家レソトが君臨すれども統治せずという日本やイギリス型の立憲君主制なのに対して,スワジランドの場合は,立法・行政・司法という三権を実質的に国王が握るという国王による専制支配が行われているんだそうです.21世紀のこの時代に絶対王政の国があったとは,自分が不勉強でした(笑).
記事によると,この国王の贅沢な暮しに批判が集まっているようですが,これ自体は今に始まった事ではないようなので,思うに最近の中東民主化運動の影響がこんなところにも波及したということでしょう.今のところ革命と言えるような状況にはなっていないようですが,今後も目が離せません.
この21世紀の専制君主の記事を見て思い出したのが,今から35年前に一介の軍人からついには本当に皇帝になってしまった人物,中央アフリカ帝国皇帝ボカサ1世です.
もともとフランスの植民地だった中央アフリカは第二次地戦後独立し中央アフリカ共和国となりました.しかし,こういう地域によくある政権の腐敗から軍のクーデターが起こります(1969年).こうして権力を握ったのが軍参謀総長だったボカサです.権力掌握後大統領になったボカサ、ここでやめておけばおそらく,ある意味では歴史には残らなかったかもしれません.ナポレオンに憧れていたという彼はなんと,7年後の1976年に自ら皇帝に即位してしまったんです.そして,国家予算の2倍相当額の金をかけて豪華な戴冠式を挙行してしまいました.この時自分の戴冠式に箔を付けるために,当時皇帝の称号で呼ばれていた人物(日本の昭和天皇,イランのパフラヴィー2世)とローマ法王を招待したそうです(みんな丁重にお断りしたそうですが).
戴冠式自体もナポレオンのそれを意識したらしいんですが,いくらなんでも世界最貧国に近い国でこんなことをしたら経済はたまりません.その後の失政も重なって,当初ボカサを支援していた旧宗主国のフランスもあきれ果てて援助を打ち切ってしまいます.結局即位から3年後の1979年にクーデターが発生し,彼の帝国はわずか3年で崩壊してしまいました.
現代に英雄伝説を作ることの難しさを示したボカサ,彼の姿とニュースの国王が何となく重なって見えたのでした.
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