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2010年12月24日 (金)

浪士組の草第九

 日本ではなぜか年末になると,ベートーベンの交響曲第9番いわゆる第九のコンサートが各地で行われます.チケットぴあなどで探しても,それこそ全国各地でいったいどれだけあるんだろうと思われるくらいの演奏会があるようです.この曲,合唱が入る第四楽章がとりわけ有名で,中にはこの部分だけが第九だと思っている人もいたりします(笑).演奏頻度が高いのと,中には「○△市民の第九」みたいな市民を全面に押し出した演奏会も多いので,なんとなく比較的簡単に出来る曲なのかと錯覚してしまいますが,実際には相当難易度の高い曲です.私も学生時代から何度かステージに乗っていますが,いつも苦労して上手く歌えません(泣).

 で,そんな第九の第四楽章を歌ってしまおうという企画が昨日当地で行われました.場所は市内の大型ショッピングモール,呼びかけは地元の合唱の先生です.この企画,参加は自由で合唱経験の有無は全く問いません.ただ,とにかく歌が好き,音楽が好きな人ならオーケー,練習は当日のお昼に1回のみ,場合によっては練習無しのぶっつけ本番もありという恐ろしいものです.

 まさに以前記事にした,リハーサルと本番だけのリハホン状態です.普通に考えたらこんな企画絶対にありえないんですが,別にコンサートホールに聴衆を集めて入場料を取るわけではなく,ショッピングモール内の一角に特設ステージを設けてそこで歌うというスタイル,聴衆は通りすがりの買い物客です.いってみればストリートミュージシャンの合唱版というわけです.ストリートミュージシャンの演奏水準に文句を言う人がいないように,こういう形なら何でもありともいえます.

 12月23日のお昼,指定された会場に行ってみると大勢の人が来ています(ざっと50人くらいでしょうか).それぞれ少人数のグループで来ている人もいるらしい様子でしたが,もちろん私の知っている人はいません.まさに烏合の衆です.時間が来て(唯一の)練習の始まりです.練習をしてくれるのは呼びかけの合唱の先生,こんな烏合の衆を前に,「練習でみんなの歌う心が一つになればいいんです」と語っていました.第九の四楽章には合唱のほかにソリストも登場します.さすがにソリストはド素人ではできないので,先生の縁で声楽を専門にしている学生等が参加していました.

 練習が始まって,私の脳裏に浮かんできたものがありました.それは…

 「この合唱団は浪士組だ…」

 幕末の文久三年江戸で,まもなく上洛する将軍警護を名目に浪士たちが集められて結成されたのが浪士組です.これは腕に覚えがあるものなら身分の上下を問わないという,身分制度が強かった江戸時代としては極めて画期的な組織でした.浪人・脱藩中の武士から,農民,商人,さらにはやくざ者まで、とりあえず尊皇攘夷の心と一旗挙げようという野心を持った者たちが寄り集まった組織でした.剣術に関しても,後に新選組の局長になる近藤勇芹澤鴨といった剣豪がいる一方,そうでない者も多数いるなど,まさに究極の烏合の衆といえます.

 翻って今回の合唱メンバーも,先にあげた音楽専攻の学生がいる一方で,私のような普通の人間もたくさんいます.小さいグループが混在しているさまも,試衛館グループや芹澤一派ら小グループが集まっていた浪士組そっくりです(さしずめ私は殿内義雄か 笑).こんな合唱団が1回の練習で第九の四楽章に挑戦するわけです.練習中も周囲からいろんな音が聞こえてきたり,リズムも様々といかにも浪士っぽい感じです(指揮者のリズムなしで,完全に自分の世界に浸って歌っている人はさしずめ芹澤鴨か).先行きが不安になりますが,音楽専門学生らの声は素晴らしく,ちょっとほっとします.そうこうしているうちに本番の時間となりました.

101223_145703 (写真) 特設ステージ

 ショッピングモールの特設ステージは狭く,全員が乗るとかなり窮屈でした.本来の第九はフルオーケストラですが,この日はピアノの連弾と有志の方の楽器(バイオリンやトランペットなど)です.見渡すと,何事かと思ったのかたくさんの買い物客が足を止めて聴いていました.演奏は練習1回のみなので,それなりではありますが観客の拍手は結構暖かいものがありました.よく草野球なんて言い方がありますが,そのノリでいえば草第九だなぁと思ったでした.

 演奏後は有志が集まって軽い打ち上げです.指揮者の先生の音頭で乾杯,その後はいろんな方とお話をして,最初は単なる烏合の衆だった集団がなんとなくそれなりになったんじゃないかと思いました.

 この浪士組の草第九(勝手に命名 笑),非常に面白かったのでまた参加したいです.

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コメント

ビザ皇帝様 こんばんは!

うおービックリしました!
25日にショッピングセンター行った時に、まさにクリスマスライブをやってたんですよー。で、第九もやってて手拍子もあったので、ニアミスったかと焦りました。
烏合の衆での第九、歌う新選組みたいな感じなんでしょうね。各々の個性が隠し切れなくて、歌う斉藤一とか、歌う左之助とか、勝手に命名すると違った意味で楽しくなりそうです。

投稿: まーうさ | 2010年12月26日 (日) 14:08

まーうささん

こんばんは,いつもありがとうございます.
ええっ! そちらでも草第九が行われていたんですか.
ホント,烏合の衆の歌う新選組という感じでした.指揮者の清河先生(仮名)の尽力でとりあえずまとってはいましたが….

齋藤や原田は,まだ浪士組の段階なのでそれほど目立ってませんでしたね(笑).

投稿: ビザ皇帝 | 2010年12月28日 (火) 14:44

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