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2010年8月28日 (土)

ベネズエラ旅行記4 ~8月9日~

 一夜明け8月9日になりました.この日の予定はまず午前中にロライマ山のヘリコプターツアーに参加,その後再びセスナ機でギアナ高地観光の拠点カナイマの村に移動する流れです.

 ギアナ高地の存在を世界的に知らしめたのが,コナン・ドイル原作の冒険小説”The Lost World”(邦題 失われた世界)です.この舞台となったテーブルマウンテンがロライマ山であるといわれています.古くからギアナ高地に住む先住民であるペモン族はテーブルマウンテンをテプイと呼びますが,なぜかこのロライマだけはテプイと呼ばないんだそうです.ロライマはテーブルマウンテンの中では登山がしやすい場所と知られ,乾季にはトレッキングツアーも行われますが,雨季の登山は困難で,代わりにヘリコプターでのアプローチが行われます.

 前夜の夕食時にヘリコプターに乗車する座席についてくじ引きが行われました.これは雨季のロライマは天候が不安定でヘリが飛ぶか飛ばないかぎりぎりまでわからないからです.私とKは最初のフライトになりました.

Lostworld_476 (写真) 早朝の様子

 まだこちらの時差に慣れていないのか,この日も早く目が覚めました.外に出ると天気はまずまずです.はるか東の方向にロライマ山がありますが,今は雲がかかっています.朝食を摂って,いよいよ私を含む第1陣が飛行場に向かいます.今日ここでオートバイのレースなのか大会なのかがあるらしく,朝っぱらだというのに途中の道路は混雑していました.

 飛行場につくとすでにヘリは待機していました.どうやら飛べるとのことで,あらかじめくじで決められた場所に座って,さあ出発です.ロライマ山頂は標高2800メートル,ヘリはぐんぐん高度を上げていきます.しばらく飛ぶとロライマ山の岩肌が見えてきました.山頂は雲がかかっていましたが,その切れ目から進入します.山頂のごつごつしたむき出しの岩が見えます.そんな山頂にヘリは着陸しました.

Lostworld_553Lostworld_562 (写真) ロライマ山の山肌と山頂の様子(左),幻想的な山頂の景色(右)

 ヘリを降りて周囲の散策を始めます.赤道からわずか500キロの熱帯地方とはいえ,標高2800メートルのこの山は大量の降雨に栄養分が流されてしまうため生き物の生息には過酷な環境です.樹木はおろか,背の高い草すらない荒涼とした光景が広がっていました.特に印象的なのが岩で,まるで誰かが掘った彫刻作品のような造形を見せていました.気温も低く上着がないとちょっと辛い感じです.

Lostworld_572 (写真) 沼がありました.「失われた世界」に出てきたグラディス湖のモデルでしょうか

 前述のように過酷な環境ですが,それでもやっぱり生命は存在しています.可憐な高山植物や,食虫植物に交じって私たちの目をとらえたのは小さなカエルでした.

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(写真) 山頂の植物

 これはオリオフリネラという名の恐竜時代の形態を今に遺すといわれる極めて原始的なカエルです.どこが原始的かというと,手に水かきがなく飛んだり跳ねたりもできないというおよそカエルとしての能力に乏しいカエルなんです.そんな不思議な山頂の景色を堪能したのち再びヘリに乗り込み下山となりました.

P8090095 (写真) 太古の姿を今にとどめるカエルです

 下界に戻ってしばらくすると雨になりました(われわれの後次のグループが飛ぶ予定だったんですが,この後天候の急変したため中止になってしまいました.本当に運次第だなぁと思いました).この後はセスナでギアナ高地観光の中心地,カナイマ村に向かうことになります.前日同様5人乗りと7人乗りの2機に分乗して出発です.サンタエレナは雨降りでしたが,徐々に晴れ間も見えてきます.地上を見ると一面ジャングルが広がっています.そしてその間に川が蛇行するように流れていました.

P8100231 (写真) ジャングルと川,向こうにはテプイも見えます

 しばらく飛行していたら,操縦士が外を指差しました.その方向を見ると巨大な山肌から滑り落ちる大きな滝が見えます.「エンジェルフォールだ!」と歓声が上がります.どうやら天候がまずまずなのでエンジェルフォールに寄ってくれたもののようでした.予期していなかった光景に感動した一同でした.

P8100223 (写真) この旅行最初のエンジェルフォールです

 その後セスナは高度を落としてジャングルの中にある小さな飛行場に着陸しました.ここがギアナ高地観光の拠点となるカナイマ村です.拠点とはいえ,人口2000人に満たない小さな村です.ここは周辺からアプローチできる道路がなく,空路でしか来られないというまさに陸の孤島なのでした(先日見たカロニ川をずっと遡るといずれはここにつくので,舟でなら来ることが可能か?).

 今回のツアーはこのカナイマにじっくりと腰をすえて観光しようという趣向でした.大抵のツアーはこのカナイマに2泊または3泊なんですが,私たちはここに4泊してゆっくり見て歩く予定です(日程的にかなり余裕がある企画でした).カナイマの村はカナイマ湖の畔に広がっています.私たちが宿泊するウカイマ・ロッジも湖畔にあり,まずは送迎バスに乗ってロッジに向かいます.バスとはいってもトラックの荷台を改造したワイルドなバスです.村内の道路を進んでいきますが,雨季で川も増水しているこの時期,場所によっては道路が浸水しているところもあるんですが,かまわず走っていきます(笑).道路の終点から今度はボートに乗り換えて5分ほどでロッジに到着しました.

P8100264 (写真) トラックバス

 ロッジはメイン棟と宿泊棟が独立したリゾートによくあるタイプの形式でした.まずは遅めの昼食を摂って各自部屋に入り荷物整理です(ちなみにスーツケースはここまで来るセスナに積み込めないため,ここに滞在するのに必要な荷物は各自ボストンバッグなどにコンパクトに収納しなければなりません).

Lostworld_643Lostworld_648 (写真) 湖畔に立つロッジ(左),ウェルカムドリンクです(右)

 本当はこの日はその後はゆったりタイムで予定もなかったんですが,現地ガイドさんの案内で湖の対岸にテプイを見に行くことにしました.ボートに乗って対岸に渡りサバンナを歩くんですが… 虫が来るわ来るわ(笑),蚊やら小バエやらがウンカのごとく襲ってきます.特に現地の言葉でプリプリと呼ばれる,刺されると猛烈に痒い虫には閉口でした.よく手で虫を追い払いますが,日本では手で払っても手には空気の手ごたえしかありません.しかしここでは手を払うと実際に手に虫がビシバシ当たってその手ごたえを感じます(生まれて初めての感触だな 笑).こんな時重宝したのが実は扇子や団扇でした.日本ではこれらは風で涼をとるのに使いますが,ここでは虫を追い払うのに最適なのでした(意外な使い方だ).

Lostworld_708Lostworld_1743 (写真) サバンナとテプイ(左),扇子の意外な使い方(右)

 虫には悩まされましたが,サバンナに浮かぶテプイの光景は見事でした.

 さて明日はカナイマ周辺の散策です.

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コメント

ビザ皇帝様 こんばんは!

すごいですねー!過酷な環境でも生命はあるんですね。でもある意味過酷であるからこそ生き延びてこれたのかもしれませんよね。
こちらではアマガエルが窓の明かりに来る虫を食べる為に窓に張り付いてます。このアマガエルの先祖にあたる種類のカエル君が生きてる事、何だか感動します。
エンジェルホール見れたり、今回のフライトはビザ皇帝様ラッキーでしたね~!
扇子が虫払い(虫除けでなく払いなんですねー)に役立つなんて…。虫のあたる手ごたえがあるだなんて想像するだにゾクゾクします。虫除けの何かも効かないような状態なんでしょうね。
続き、楽しみに待ってます!

投稿: まーうさ | 2010年8月28日 (土) 15:55

まーうささん

コメントありがとうございます.
ギアナ高地はまだ地球上の大陸がひとつにつながっていた時代に大陸の中心に位置していた場所だそうで,長い地球の歴史の中で気候があんまり変化しておらず,だから大昔の種類の生物が現存しているのだそうです.
この先祖のようなカエル君もしぶとくこの地で生きてきたんですね(写真で見て解るように,敵に見つからないように地面にそっくりな体表をしてますよね).

サバンナの虫はすごかったです。一応虫除けを塗っていきましたが,虫の数が多すぎてとても防ぎきれませんでした.やっぱり最終的には手や扇子で物理的に追い払うしかなかったです(っていうだけで,あの手に虫がバシバシ当たる感触を思い出します 笑).

投稿: ビザ皇帝 | 2010年8月30日 (月) 13:50

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