熱帯医学への憧れ
私と医学の出会いは,おそらく小学校2~3年生の時の学習雑誌に連載されていた,野口英世の伝記からだったと思います.
野口英世は1876年に今の福島県猪苗代町で生まれ,1歳の時に囲炉裏に落ちて左手が不自由になってしまいます.その後15歳の時に友人らの援助で手術を受け左手が使えるようになったことから医学の道を志しました.
その後アメリカにわたり様々な研究を行い,1918年に南米で(当時で言う)黄熱病が流行していた際には,当地を訪れて研究,ワクチンの開発に貢献して,これによって南米の黄熱病は終息に向かったといわれます(現代の知見ではこの南米の黄熱病は,ワイル病だったと考えられています).しかし1927年にアフリカでワクチンの効かない黄熱病(こちらが今でも知られる黄熱病)が流行しているということで,現地入りし研究途中で自らも罹患してしまい,1928年5月21日にアフリカのガーナで亡くなっています.
幼少時にこの伝記を読んで,大いに感動した記憶があります.もちろん野口英世の生涯にはきれいごとでないことも多々あるんですが,それを抜きにしても,偉人であることに変わりはありません.
それ以来私は熱帯病や感染症に興味を持ち,小学校時代にはよく保健室に出入りして,そこに置いてあった医学的な資料を読み漁っていました.コレラやペストといった昔恐れられていた伝染病におびえていたものでした(当時の保健室のおばさんが面白い人で,「コレラがはやったら怖いぞ~」などと少年の恐怖をあおるような発言をしていました 笑).
とはいえ,自分が実際にそういう業界に入ってみると,当時あれほど興味があったコレラ,赤痢,ペストといった感染症に出会う可能性はほとんどなく,自分も実際にコレラやペストの臨床経験はありません.
で,なんでこんな話題かといいますと,先月からうちの医局にこんなポスターが掲示されていたのです.
現地で学ぶ熱帯感染症研修だそうです.しかも場所はタイとミャンマーの国境付近,ある意味感染症の巣窟のような場所です.このポスターを見た瞬間,少年時代の記憶がよみがえりました.
そこでポスターをさらに詳しく見ると… 参加資格として
熱帯医学や感染症診療に関心の高い若手医師とありました.
うーん,若手って何歳くらいまでなんでしょう.精神年齢なら十分若手だと思うんですが(笑).
その他にも感染症に関する業績の提出や,推薦状なんかも必要らしく,私が参加するにはハードルが高そうでしたが,久しぶりに少年時代のことを思い出させてくれたポスターでした.
追記: 野口英世って,漫画家の故・加藤芳郎さんに似てません?
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コメント
ビザ皇帝様 こんばんは!
私もマンガの伝記「野口英世」読んでましたよ!何かでもらった記憶があります。
きれいごとではない事も多々ある…ですか。
マンガではきれいごとばかりだったんで知りませんでした。野口英世も…「だって人間だもの(by 相田みつを)」って事ですなぁ。
感染症といえば、小さい頃はそんなに怖いと思った事はなかったんですが、今年金曜ロードショーでうっかり見てしまった「L」の映画で感染症の恐ろしさを見てしまって、それからすぐに体中にナゾの発疹が出て(あれはタイムリー過ぎる…)恐怖を感じました。
全然関係ないんですが「岩手」と「若手」って似てますよねー!(爆
そして確かに野口英世は加藤芳郎さんに似てる!!
投稿: まーうさ | 2009年6月 5日 (金) 15:35
ビザ皇帝様、おはようございます。
ああ・・☆ 皇帝様の原点はここにあるんですね・・・。 そしてその夢を実現させた集中力と向上心、見習いたいものです・・・ (←すでに手遅れさ)
医学といえば、私、やはり小学生時代に父が会社の健保組合(多分)からもらってきた「家庭の医学」にハマり1冊読破、夏休みの読書感想文に書いてやろうかと思ったことがあります(←やめましたけど/笑)
実は今でも結構スキです、家庭の医学(爆)
中学校の修学旅行は、会津・福島だったので、野口英世の生家跡へも行きましたが、今は記念館になってるんですね・・・。
投稿: 風雅 | 2009年6月 5日 (金) 23:59
ビザ皇帝様
私も会津に旅行した時に野口英世の資料館にいきました。
そして今年、野口先生ゆかりの大学で奥歯の抜歯手術(埋没した親知らずの)をしてきました。以外にも歯科の学校に勤務していたんですね。
投稿: 野島姓 | 2009年6月 6日 (土) 02:56
<まーうささん>
こんにちは.お返事が遅くなって申し訳ございません.
やっぱり野口英世は小学校の定番伝記でしたか.
野口英世は苦学したのは事実なんですが,意外にお金に無頓着で,結構知り合いに無心したり金を使い込んだり,よい子には言えないことも多いんです(笑).
コレラやペスト,赤痢といった昔怖かった感染症は見なくなりましたが,最近では抗生物質に耐性を持つ菌や未知のウイルス感染などの恐怖がありますね.
岩手と若手,確かに似てます.誠と試も似てますし,やっぱり野口英世と加藤芳郎さんは似てます(笑).
投稿: ビザ皇帝 | 2009年6月 7日 (日) 09:49
<風雅さん>
こんにちは.
単純な少年だったので,野口英世やシュバイツァーにはすぐに影響を受けました.
とはいっても,アフリカなどに医療活動に出て行くガッツはないんですが…
家庭の医学,面白いですよね.テレビなんかで病気が出てくるとよく調べ物をしてましたね.特に思い出すのが山口百恵と三浦友和の赤い疑惑,山口百恵が白血病になってしまうんですが、結構勉強しました.ただ今になって振り返ると,かなり変な設定なんですが(笑).
野口英世記念館は私も何度か行ったことがありますよ.
投稿: ビザ皇帝 | 2009年6月 7日 (日) 09:55
<野島姓さん>
こんにちは.
野口英世はいわゆる正規の医学校から医師になったというわけではないので,学費をねん出するために歯学校にいた時期もありますね.
とはいえ,最終的にはたくさんの学位を得ていますからやっぱり凄い人であるのは確かです.
埋没した親知らずの抜歯は確かに開業歯科医では難しいようですね.
投稿: ビザ皇帝 | 2009年6月 7日 (日) 10:02