上高地の駐車場
先日掃除をしていたら懐かしいものが出てきた.
(写真1) 上高地駐車場の整理券.1987年9月28日というのが時代を感じさせます
実はこれ,上高地にある駐車場の整理券なんです.
整理券なんて珍しくも何ともないじゃないか,と思う向きはちょっと甘い.今では絶対に手に入れられないものだからです.
上高地は日本を代表する山岳リゾート地として知られています(ミシュランの旅行ガイドで二つ星らしい).ここは北アルプスの山中に,まるでそこだけが別世界のように広がる平野です(標高1500メートルの高地にこれだけの平野が広がるのは日本では珍しいんだそうです).
江戸時代には地元の人が薪の伐採に入る程度でしたが,明治になってイギリス人のゴーラントやウエストンがここを日本アルプスと紹介し,山岳リゾートとしての上高地の歴史が始まります.
昭和初期には上高地への自動車道である釜トンネルも開通し,帝国ホテルの営業もはじまりました.
第二次大戦後,国民の生活が豊かになるとこの地を訪れる人も増えていきます.さらに高度成長期を迎えてマイカーが普及すると,元々交通不便のこの地に多数の自家用車が殺到することになったのです.元々昭和初期に造られた釜トンネルは急カーブ,急勾配,幅が非常に狭いトンネルだったため(通行に当たっては必ずローギアで走行することにされていた),対向車とのすれ違いは不可能で,常に青数分,赤十数分という片側交互通行が行われていました.このためいつも渋滞が途切れない有様でした.しかも狭い上高地に多数の自動車が入り込んだため,駐車場に収まりきれない車による狭い道路上への違法駐車も後を絶たず,これが渋滞にハ拍車をかけるという悪循環でした.
また大量の自動車が出す排ガスの環境への悪影響(上高地は標高が高く山に囲まれているため,いったん排ガスが溜まるとなかなか浄化されにくい懸念もあった.メキシコシティのようなものですね)も懸念されました.このため昭和50年頃から土日,祝祭日のマイカー規制が始まり,徐々に強化されていったのです.そして平成に入るとマイカーは通年禁止となり,さらに最近では観光バスの乗り入れも規制され始めています(入れるのは路線バスとタクシーのみ).
この整理券は,秋の平日にはマイカーでの乗り入れが許されていた1987年に友人と出かけた際のものです(ちょうど試験明けの休みだった).秋の平日ということで,混雑もそれほどではなく,静かな上高地を探索した思い出があります.
最近は新しいトンネル(新釜トンネル)も開通したらしい上高地,また行ってみたいなと思ったのでした.
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