アストロ球団
私の少年時代には数多くの野球漫画が存在した.有名どころとしては「巨人の星」,「ドカベン」,「キャプテン」などが挙げられるが,最強の野球漫画といえばこの「アストロ球団」にとどめを刺すであろう.
当時いわゆるスポ根モノというのが流行っていて,漫画では「巨人の星」,「エースをねらえ」,「アタックNo.1」などが該当する.
だがこれらの作品も気合の入り方という点でいえば,「アストロ球団」の足元にも及ばない.
いくら「血の汗流せ,涙を拭くな(巨人の星)」,「苦しくたって,悲しくたってコートの中では平気なの(アタックNo.1)」,「コートでは誰でも独り独りきり(エースをねらえ)」といっても,所詮は部活であり家に帰れば普通の生活が待っている(星飛雄馬の家が普通かどうかは議論の余地があるが).よく命がけで試合に臨むというが,これも比喩的な表現に過ぎず,実際に試合に負けたからといって殺されるわけではもちろんない.
しか~し,アストロ球団は正真正銘掛け値なしの命がけである.なにせ試合中に選手が続々息絶えるんである(死なないまでも廃人になってしまう選手もいる).その試合たるや死闘と呼ぶにふさわしく,魔球あり殺人打法あり,試合中の切腹ありと正に命がけであり,試合についても一球一球が濃厚に描きこまれているために「アストロ球団」のコミックス全3500ページ以上で描かれる試合はわずか3試合に過ぎない(その3試合とはアストロ球団VSブラック球団,アストロ球団VSロッテオリオンズ,アストロ球団VSビクトリー球団 実に1試合平均1000ページ!).本当に全編「凄い! すごい! スゴイ!」のオンパレードである.
アストロ球団のポリシーが一試合完全燃焼らしいので,死んでも悔いはないのかもしれないが,野球という競技にここまでするか!という意味でも非常に面白い作品である(アストロ球団は,太平洋戦争終盤のフィリピン戦線で戦死した伝説の名投手沢村栄治の薫陶を受けたフィリピン人の実業家によって結成される).
今では愛蔵版も発売され,入手しやすい作品となったこの「アストロ球団」,昭和50年ごろの時代の空気(レインボーマンを放送していた時代)を感じることができるこの作品を是非ご鑑賞あれ.
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