世界の治安
最近日本の治安が悪化したと感じる人が増えているのだそうだ.凶悪犯罪の発生率自体の変化はよくわからないのだが,地域社会の崩壊による犯罪検挙率の低下や銃犯罪の増加などが人々をそうした思いに駆り立てているのだろう.
しかし,世界レベルで見れば日本の治安はかなり良い部類に入る.今の世界で治安の悪い場所としてはアフガニスタンやイラクが有名である.外務省の海外安全ホームページでも退避勧告が出るほど治安が悪い.現に事件に巻き込まれて亡くなった日本人もいる.しかしイラクやアフガンの場合は国内の情報が外部に知られるだけまだましともいえる.これが国家そのものが崩壊してしまったソマリアになると,治安が悪すぎてジャーナリスト(さらにはソマリアの政府関係者さえ)も立ち入ることができず,国内がどんなひどいことになっているのかすら皆目分からない状態である.
こういう桁外れに治安が悪いところはともかく,今現地が紛争状態にはない,我々一般人が出かけるような場所で治安が悪いところはどこだろうか.我々の親の世代の旅行者に恐れられていたニューヨークやロサンゼルスなんかは世界レベルでは治安の悪いうちに入らないだろう.考えられる場所としては南アフリカのヨハネスブルクやケニアのナイロビなどが挙げられる.ケニアも南アフリカも観光地としてメジャーなところであるが,これらの国の観光地は大自然だったり郊外だったりで,ナイロビやヨハネスブルク自体が観光地なわけではない.しかし移動の関係などでこれらの町に宿泊する場合などは注意が必要だ.
地球の歩き方シリーズに東アフリカ編があり,ナイロビについての案内も載っているのだが,これがなんと「~してはいけない(must not)」のオンパレードなのである.近年貧困による失業者の流入によってナイロビの治安は極度に悪化しているのだという.スリや置き引きは当然として,凶器を使った集団での強盗なども日常茶飯事化しているらしい.路地裏などの人気のないところや夜間以外にも,たとえば白昼の高級ショップが並ぶ商店街も危ないし(ほとんどの店のショーウィンドウには鉄格子がはめられているらしい),さらにはメインストリートを横断することすら危険なのだそうだ.曰く,「ダウンタウンへは行ってはいけない」,「○○公園には行ってはならない」,「レストランに行く際は必ずタクシーを利用すること(たとえ近距離でも)」,「街中の安宿には泊まってはいけない」等々,滞在中はホテルから出るなと言っているのに等しい状態である(要するにどうしても行かなければならないときはdoor to doorでなければならない).実際にはバックパッカーなどでこれらの場所に出向いて無事に帰ってきた人もたくさんいて,行ったからといって100%犯罪に巻き込まれるわけではないだろうが,高い確率でトラブルにあうのは確かのようである.「○○するな」と言われるとやりたくなるのが人の習いだが,じゃあナイロビのダウンタウンに潜入してレポを書けといわれると,やっぱり困るのだった.
一方の南アフリカ・ヨハネスブルクは「世界最悪の犯罪都市」と恐れられるところで,今紛争状態にない場所としては世界でもっとも治安が悪いと言われている.南アフリカは元々アフリカの中では経済的に恵まれた国だったが,アパルトヘイト(人種隔離政策)の撤廃後国内はもとより周辺国から多数の非白人が職を求めてヨハネスブルクに流入 → 失業者の一部が犯罪に走り治安が悪化 → 企業が治安の悪化を嫌って郊外に脱出 → ますます職がなくなりさらに治安が悪化 という悪循環に陥っている.その結果現在ヨハネスブルクでは住民の死因の第1位が殺人ではないかと言われ,当局ですら年間の犯罪発生件数を把握できない状況らしい.もちろん外国人が一人で街をフラフラ歩いていたら殺されても不思議はないし,ナイロビと違って車に乗ってても危ないという話である(ダウンタウンではリアル北斗の拳と呼ばれる光景が繰り広げられていると言うウワサ).車でも赤信号で停まっていると襲われるので,赤信号でも停まってはいけないのだそうだ.
そんなヨハネスブルクで,2010年にサッカーワールドカップの決勝戦が行われることになっている.大丈夫なんだろうかと不安を抱いているのは私だけではないだろう(まあ日本チームが決勝に残っていることはないと思うが…).
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そんなヨハネスブルクに行かれた方のレポです(頭が下がります).
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