先週末の一関の学会(あまり気合が入っていない)の際,行きには宮古市のとどヶ埼に寄ったのだが,帰りに寄ったのがここ,住田町上有住(かみありす)である.住田町は岩手県の沿岸南部,大船渡市の隣町である.これといった特徴も見当たらない町だが,この住田町唯一のJRの駅が,ここ上有住にある.とはいっても,ここが住田町の中心部というわけではない.中心部は世田米(せたまい)といって車で20~30分離れたところになる.しかもこの上有住駅,上有住という集落の中心にあるわけでもない.上有住の集落へは駅から車で10分位ある.ではなぜにこんな所に駅があるのか.
上有住駅周辺の釜石線.急勾配を登るため,北に向かって強く屈曲しています.
上有住駅のあるJR釜石線は内陸の花巻市(宮沢賢治の出身地)から民話の故郷遠野市を通って沿岸の釜石市に行く路線である.大昔は岩手軽便鉄道といって宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のモデルになった路線でもある.この釜石線最大の難所が遠野-釜石間の仙人峠で,あまりの勾配のキツさに線路をループ状にして距離を稼ぐことで,やっと汽車が走れるのだった.上有住駅は遠野市の足ヶ瀬駅と釜石市の陸中大橋駅の中間の山の中にある.
上有住駅前です.
実際に上有住駅に降り立って見ると,駅周囲には人家もなく,完全に秘境駅の面影である.しかしここが秘境駅とされていないのは,駅前に滝観洞(ろうかんどう)という観光スポットがあり,路線バスも走っているからなのであった(つまりここに駅が存在する必然性があるということ).
気仙川に架かる太鼓橋を渡って行きます.
岩手県内陸部の北上山地は西側の奥羽山脈と違って火山性の山地ではなく,安定した古い地層からできている.このため地震に強く(実際,三陸沖で地震が起きても盛岡に比べて,震源に近いはずの北上山地の方が震度が小さいことが良くある),山中には大型の鍾乳洞が良く発達している.日本三大鍾乳洞に数えられる龍泉洞や規模では日本一といわれる安家洞がとりわけ有名だが,ここ滝観洞も洞内落差日本一の滝を持つ鍾乳洞として知られている.ただ,龍泉洞など全国区の鍾乳洞と違って,全ての観光客が安全かつ簡単に探索できるわけではなく,内部は水が滴り,低い天井からは尖った岩があっちこっちに飛び出しているため,入洞に際してはレンタルのゴム長を履き,ヤッケを着て,ヘルメットを被らなければならない(特にヘルメットは必須,被らないで入ると確実に頭部外傷で病院送りになります).
滝観洞の内部です.
そんな曲がりくねった鍾乳洞をある時は這い,ある時はバシャバシャと水溜りを歩いて進んでいくと,最深部のちょっと開けたドームに到着する.ここの天井の大理石の裂け目から落差29mと,鍾乳洞内としては日本一の滝(天岩戸の滝)が流れ落ちている.
そしてここが幻想的な,最深部の天の岩戸の滝です.
実はこの滝観洞,昭和52年公開の映画「八つ墓村」のロケ地になったところである(渥美清が金田一耕助を演じ,「たたりじゃ~」というCMが一世を風靡した作品である).横溝正史の原作にも鍾乳洞が登場し,ここでの冒険が物語の重要な要素になるのだが,そのロケ地に選ばれたのが,この滝観洞なのだった.あまり俗化されず,狭い曲がりくねった感じが原作の雰囲気を出すのにピッタリだったのかもしれない.洞内ところどころに,ロケについて記されたプレートがあった.
八つ墓村について記されたプレート.字体が昭和50年代っぽくていいです.
こんな滝観洞も岩手の隠れた名スポットなのだった.
私が参加した学会の様子.あくまでも学会参加がメインです(笑).
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