片頭痛の薬
頭痛は神経内科医にとって重要な症状である.外来には毎日多数の頭痛を主訴にした患者さんがやってくる.患者の多くは頭痛というと,脳に何か問題があるのではと心配してやってくるが,実際には頭痛患者(新患)のなかで脳病変に伴う頭痛の割合は極めて低い(1%程度ではないか).大部分は検査をしても明らかな異状がない頭痛(一次性頭痛)である.
一口に一次性頭痛といっても種類は様々だが,実際臨床現場でよく見るのは
① 片頭痛
② 緊張型頭痛
③ 群発頭痛
であろうか.ただし③の群発頭痛は圧倒的に少なく,現実には大半が①と②である.
②の緊張型頭痛は頭頚部の筋肉の緊張が亢進して頭痛がおこるもので,一般に痛みの程度は強くはない.しばしば「後頭部や頭全体が締め付けられるように痛い」と表現される.肩こりを伴うケースや特定の姿勢で仕事をする人が多い.対策としては体操などの筋緊張の緩和のほか,薬物療法として筋弛緩薬,抗不安薬,消炎鎮痛剤が使われる.命には全く異常ないが,なかなか完治させるのも難しい疾患である.
一方①の片頭痛(古い文献では偏頭痛と表記される場合もある.間違いではないが,医学用語としては現在は「片」の字を使う)は,典型例ではⅰ) 頭の片方が(一側性),ⅱ) 脈打つように(血管拍動性)に痛み,ⅲ) 痛みは強く,ⅳ) 日常生活に制限が出る.またa) 吐き気や嘔吐を伴ったり,b) 光や音によって痛みが増す(光・音過敏)ことがある.
上記の中でⅰ)~ⅳ)のうち2つを満たし,またa)かb)のどちらかがあれば片頭痛である可能性が高い(その他いろいろ考慮すべき点もあり,実際には医師の診断が必要).
イミグラン注(一般名スマトリプタン 唯一のトリプタン注射薬です)
片頭痛は痛みの程度も強く,市販の鎮痛剤を服用しても良くならないケースが多い(私自身も頭痛持ちで,中高生位から時々強い頭痛に悩まされてきた.これが片頭痛と解ったのは医学部入学後である).近年ではトリプタン系と呼ばれる片頭痛発作頓挫薬が使われるようになり,効果を上げている.私自身もトリプタンを使ってみて,こんなに効くんだと感動した覚えがあるが,内服で1錠1,000円(健康保険を使えば3割で300円)という値段の高さが欠点であろうか(トリプタンは最近の薬であるため,いわゆるジェネリックは存在しない).ただ,頭痛で一晩苦しんで仕事や学校を休む苦労を思えば,1000円(保険で300円)は高くはないのではとも思う.
トリプタンの内服薬.左がイミグラン(一般名スマトリプタン),右がマクサルト(一般名リザトリプタン)です.この他にゾーミック(一般名ゾルミトリプタン)とレルパックス(一般名エレトリプタン)が日本で使用可能です.
4種のトリプタンはそれぞれ微妙な違いがあり,人によって効果も様々である.従って,1種類を試して効果がイマイチでも,他の薬剤を使ってみる価値はあると思う.
注) トリプタン系薬剤は一般の薬店では買えず,医師の処方箋が必要です.
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