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2007年1月20日 (土)

納豆ダイエット騒動

 最近某テレビ番組で「納豆にダイエット効果がある!」という説を取り上げたことから,放送直後から全国の店頭で納豆が品薄になるという現象が起こっていた.

 しかし本日のネットニュースによると,番組内で紹介されていた臨床データ等にねつ造があったことが明らかになり,放送局の社長が陳謝したそうだ(納豆ダイエットで誇張).この話題がでた直後から眉唾っぽいなーと感じていたが,まさかデータ捏造までやっていたとは思わなかった.

 冷静に考えればわかるはずだが,特定の食品を食べるだけで痩せるという話は自然科学の法則に反している.食品には普通カロリーが含まれており,摂取したカロリーはエネルギー保存則にしたがって,必ずどこかに残るからである.痩せるためには,摂取したカロリー以上のエネルギーを消費する必要があり,たとえ納豆でも摂取すればカロリーになる事実には変わりがない(納豆はたんぱく質が主体だから,1グラムあたり4キロカロリーになる).よく”こんにゃく”がダイエットに重宝されるのも,こんにゃくにはほとんどカロリーが含まれていないから,こんにゃくを食べて満腹感が得られれば,食事量を減らすことが期待できるからである.

 納豆中心の食事がダイエットに適しているというのは事実であろう.納豆(特に醤油で味付けした納豆)は少量でたくさんのご飯を食べられるため,結果的に少しのおかずで食事を完了できる(=摂取カロリーを減らすことができる)からである(脂質を大量に含んだハンバーグをおかずにするのと,脂質をほとんど含まない納豆をおかずにするのとどちらがダイエット向きかは自明の理である).ダイエットするには摂取カロリーを減らすか,消費カロリーを増やすしかない.良く運動してダイエットとも言われるが,運動でカロリーを消費するのもなかなか大変である(ショートケーキ1個分のカロリーを運動で消費するには30分はジョギングしなくてはならない).

 今回の納豆の話の中では,基礎代謝を高めることでカロリーを消費するという話があったようだ.たしかに基礎代謝を高めれば,運動しなくても消費カロリーは増える.ただ,基礎代謝が亢進すれば体温,心拍,血圧なども上昇するから今度は別な問題が発生するだろう(納豆に基礎代謝亢進効果があるのか,私は知らないが仮にあってもわずかなものであろう).もし純粋に基礎代謝を高めたければ甲状腺ホルモンを摂取するという方法があり,一定のダイエット効果は得られるかもしれない.しかし一方で様々な合併症が起こるため,健康面を考えると絶対にお勧めできない(甲状腺機能亢進症の状態).

 結局ダイエットの方法は,適度に運動しつつ,消費カロリーをセーブするという至極当たり前の結論に落ち着いてしまうのである(私も人のことはいえないが‥‥).

 ところで,このねつ造騒動で納豆の消費が沈静化し,当初増産に踏み切ったはずの納豆メーカーが大量の在庫を抱えて途方にくれるという事態が起こるかもしれない.その場合,メーカーが被った損害を件の放送局が賠償するのだろうか.いずれにせよマスコミ各位には自らの社会的影響力を鑑みて,良識ある報道をしていただきたいものだ.

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