ヨハネ受難曲演奏会当日!
ついに1月28日を迎えた.我が盛岡バッハ・カンタータ・フェラインの30周年記念「ヨハネ受難曲」演奏会の当日である.昨年1月にドイツ演奏旅行から帰国して以来約1年間の練習の成果が問われる重要な日である(2007年我が家の10大ニュースの上位に来ることは間違いない).昨日はまるで演奏会への嫌がらせかのように降っていた雪もやみ,天気は上々である.
オケ合せの初日である1月26日にはいろいろと問題点を指摘されたそうだが(私は都合で欠席させていただきました 泣),前日のゲネプロ(General Probeの略,日本語で言えば舞台総稽古)は予想以上にスムーズに進み,午後8時過ぎには終了となった.その後指揮者から演奏会当日はリハーサルなしの13時半集合と発表された.日本人的な感性から言うと,当日リハーサルがないというのは,何となく不安な気がするが,特に問題がない場合,無用なことをして声に負担をかけることはしないというのが,ドイツ人の合理性なのかと思った.
家で演奏会衣装に着替えて13時過ぎに会場入りした.13時半の集合時刻になり,全員で発声練習をした後,合唱指揮の佐々木正利先生,ヴィンシャーマン先生から最後の指示を受ける.この後は本番直前の14時50分まで,控え室で演奏会のパンフレットを読んだりして過ごした.控え室からは中津川が見える.遠隔地から参加している方に,盛岡と川の関係についてお話した(盛岡は北上川・中津川・雫石川という3つの川の合流点に形成された城下町で,川が天然の堀の役割を担った要害の地であるが,現代ではその点が仇になって,橋のところで慢性的な渋滞が起こっている).
時間になったため舞台袖に集合する.さすがに皆,緊張した趣である.本鈴が鳴りいよいよ入場する.チラッと客席を見渡すとかなりお客さんが入っている印象.気分が高まってくる.合唱団入場後,続いてオケが入場,その後チューニングとなる(私は子供のころから,このオケのチューニングを聴くだけで妙にわくわくするのだった).そして,ひときわ大きな拍手とともにソリストとヴィンシャーマン氏が入場してきた.
しばしの静寂の後,指揮者の手が動き,ヨハネ受難曲第1曲が始まった.テンポは意外とゆっくりである.弦楽器が重厚にリズムを刻み,その上にオーボエ,フルートが悲壮的な旋律を奏でる.緊張が徐々に高まり,それが頂点に達した時,”Herr(主よ)”という呼びかけとともに合唱が登場する.この冒頭の合唱は,これから始まる物語を期待しつつ進んでいく.
第2曲からは福音史家テノールによる聖句と,登場人物の語りを中心として展開し,節目節目に自由詩によるアリアやコラールが挿入される.コラールは物語の様々な場面で会衆がどのように感じるか,どうするべきなのかを歌い上げる賛美歌であり,ヨハネ受難曲では特に重要な役割を担っている(新バッハ全集ではヨハネ受難曲は40のナンバーから成っており,そのうち11曲をコラールが占める).一方自由詩によるアリアも感動的な曲が多くある.
短い1部と2部の間には休憩を入れずに演奏は行われた.物語はどんどん展開し,イエスと総督ピラトとの問答,磔を求める群集とそれを煽る律法学者たち,イエスに罪がないことに気付きながら,群集の要求に流されてイエスを引き渡してしまう,人間の弱さの象徴ともいえるピラト.そして十字架に架けられたイエスの死へと続いていく.第39曲の合唱,そして最後のコラールに入ると,元々弱い私の涙腺は決壊を起こしてしまった.そしてコラールの最後”ich will dich preisen ewiglich(わたしはとこしえにあなたをほめ称えます)”とともに2時間の演奏会はあっという間に終了した.しばしの静寂の後,会場は大きな拍手に包まれた(ひそかに,演奏が終わらないうちにフライングで拍手を始める人はいるんじゃないかと恐れていたが,この日は大丈夫だった).
演奏終了後,ロビーで聴きに来てくれた知人にあったが,みな素晴らしい演奏だったと喜んでくれていた.少なくとも我々が伝えたかった音楽は聴衆の方々の心にも届いたと思われた.
その後出演者一同,盛岡駅前のホテルに移動しレセプションとなった.ここでは共演いただいたソリストの先生方やオーケストラの方々,そして今回の演奏会のためにわざわざドイツからきて頂いたヴィンシャーマン先生のお話を伺いつつ,楽しいひと時を過ごしたのであった.二次会もあったのだが,1月29日から当たり前のように日常業務が待っている私は,朝早起きするために泣く泣く会場を後にした(最近休み明けの朝に酒気帯び運転の検問をやっていることが多いため,遅くまで飲んでいるのは極めて危険である).
ヴィンシャーマン先生は1920年生まれとは,とても思えないほどお若いです.
明日からまた日常の世界(って,このブログのタイトルが”日常の世界”じゃないか!! 笑)
| 固定リンク
コメント