寝台車あれこれ
長距離の移動に最も便利な乗り物は飛行機であるが,私は夜行の寝台車も風情があって好きである.割高であるとか,安眠できないとか敬遠される向きもあるが,元来朝寝坊の私にとっては,朝現地に到着し,強制的にそのまま活動を開始させられる寝台列車は,一日を有効に使えるようで,得した気分になるのである(ホテルで一泊だと遅くまで寝ていることがある).
10月7~9日に山陰地方に行った時,行きに利用したのは東京~大阪の寝台急行「銀河」だったが,帰りには出雲市~東京の寝台特急「サンライズ出雲」を利用した.
従来東京から山陰地方へは,京都から山陰本線に入って,福知山,城崎,鳥取を経て出雲市に行く特急「出雲」があった.しかし,山陰本線の一部が電化されていないため途中で牽引の機関車を付け替える手間がかかる,速度が遅いなどの問題があった.このため,1998年にルートを大幅に変更(京都からさらに東海道・山陽本線経由で岡山まで行き,そこから伯備線で米子に抜けるルート.このルートだと,全線電化されている)した,「サンライズ出雲」が運行を開始したのである.この時,東京から四国に向かう列車として「サンライズ瀬戸」も運行を開始,両列車は東京~岡山間を併結して走っている.
サンライズは従来のブルートレインのように,機関車に牽引される客車ではなく,電車である.このため高速走行も可能(東京-出雲市間が「出雲」では13時間40分だったのが,12時間と1時間以上短縮された)であり,また新造車両のため内装も「出雲」とは比較にならない程立派と,当初から人気のある列車となった.そのあおりを受けて「出雲」の利用率は低下し,ついに2006年3月に廃止になってしまったのである.
特急「出雲」が走っていた山陰本線の名所”餘部鉄橋”です.残念ながら今年中に無くなるそうです.強風が吹くと良く,列車が止まる処です(昔ここで風にあおられて列車が転落した事故がありました).
サンライズは全寝台が個室の列車であるが,今回私が乗ったのはA寝台個室の「シングルデラックス」である(以前,サンライズ瀬戸に乗った際はB寝台「シングル」だった).シングルデラックスという名前の客室はJRの多くの寝台列車にあり,値段も一緒(13,350円)なのだが,その内実は列車によって大違いである.主として列車の製造時期によるのだが,例えば最も古い特急「はやぶさ」のシングルデラックスなどは1両に14室もあるため,1室がとても狭く,まさに鰻の寝床状態なのだった(内装も殺風景で独房といった感じ.もちろんテレビやシャワーもついていない).
これが,特急「あけぼの」のシングルデラックスになると,1両の客室は11室に減り,その分部屋のスペースは広くなる.また,シャワー室はないものの部屋にテレビ(ビデオ放送のみ)が付くなど,サービスが向上している.さらに,特急「日本海」になると,1両の客室は10室と余裕を増し,ついに!シャワー室が登場する(A寝台の客は無料で使用できる)のだった.ちなみに「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」にあるA個室ロイヤルは値段も高く別格である.
さて,「サンライズ出雲」のシングルデラックスであるが,部屋に入ると「おー,ホテルだ」とまず感動.たしかに列車であるため,決して広くはないが,ベッド・机・洗面台・椅子(「はやぶさ」のようにベッドと椅子が兼用なんてことはない)がコンパクトにまとまっている.内装も木を基調にしたつくりで,暖色系の照明と相まって落ち着いたホテル風である.窓からの展望も良い.うーん,これで「はやぶさ」のシングルデラックスと同価格はサギだよなと思った私であった(サンライズのシングルデラックスは全6室しかない).
図の地点AからBを眺めた構図です.中央の黒い四角いものがテレビです.
室内にはテレビ(ビデオ放送だけではなく,なんと衛星放送も受信できる.もっとも米子-倉敷間は山間部でトンネルが多いため,しょっちゅう写らなくなるのだが)もついている.洗面台も,「はやぶさ」や「日本海」のそれのように,とってつけたようなシロモノではなく立派な造りであった.当然シャワー室もあるが,ここもシングルデラックス専用のシャワー室(つまり使用者は最大で6人)であり,ほとんど待ち時間もないのだった.これでLANが付いていたら全く文句なしである.
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