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2006年11月16日 (木)

オーストリアとオーストラリア

 昨日,とあるブログを見ていたら,在日オーストリア大使館が「Österreich」の日本語表音表記を 「オーストリア」 から 「オーストリー」 と変更する旨を発表したとの記事が書いてあった.

 そこにあったリンクからオーストリア大使館のHP(Österreich日本語表音表記の変更について (PDF) )に入って行くと,

 残念ながら、日本ではヨーロッパに位置するオーストリアと南半球のオーストラリアが混同され続けております。

この問題に対し、大使館では過去の文献などを参照し検討を行った結果、Österreichの日本語表音表記を 「オーストリー」 と変更する旨、ご連絡差し上げます。

 とのことであった(原文をそのまま引用しました).

 これまで幾度となく「オーストラリア」と間違われてきた屈辱が,ひしひしと伝わってくる文章である.たしかに「オーストリア」と「オーストラリア」はよく間違われる.しかも「オーストラリア」を「オーストリア」と間違う事例はほとんどなく,一方的に「オーストリア」が「オーストラリア」と間違われるのである.オーストリア旅行に行ってきたと知人に話した際,「カンガルー見た?」と聞かれた経験のない人は皆無だろう(逆にオーストラリアに行ったのに,「モーツァルトでしょ」と言われた人はいないと思う).おそらくオーストリア大使館員やその家族もことあるごとに,”カンガルー”や”コアラ”の話題を振られて,屈辱的な思いをしてきたに違いない.

 しかしながら,大使館が宣言したからといって,直ちに「オーストリア」表記が「オーストリー」に変わるのだろうか.大使館は,「暫くの間はオーストリアとの併記が行われますが、徐々に「オーストリー」の名前は日本の皆様の間に浸透し、定着していくことと存じます。」と自信満々だ.まずは文科省あたりが,学校の教科書を変えていかないと駄目だろうと思った.数年後「オーストリー」の表現が定着するかどうか見守っていくことにしよう.

Austt 今年ウィーンで購入したTシャツ.「オーストリアにはカンガルーはいません」と書いてあります.これから察するに,「オーストリア」と「オーストラリア」の間違いは日本だけでなく,国際的な広がりを持っているようです.

 ついでに,だいぶ昔になるが在日ニュージーランド大使館が,「アメリカやイギリスなど主要国には漢字による国名(アメリカ=米,イギリス=英 など)があるのにわが国にはないのは遺憾である(特に隣国オーストラリアですら”豪国”という表記があることに焦りを感じていたらしい)として,検討の結果「乳国」という表記(ニュージーランドの”ニュー”に引っ掛けて.また乳製品の国という意味もあったらしい)を考え出して,普及させようと頑張っているという新聞記事を見たことがある.しかしその後「乳国」という表記にお目にかかっていないことから,この計画はうまくいかなかったようである(これに従うと,日本とニュージーランドの首脳会談は”日乳首脳会談”,ニュージーランドを訪問することは”訪乳”ということになってしまう).

 ちなみに漢字表記のある国は,上記の米英のほかには,フランス=仏,ドイツ=独,イタリア=伊,オランダ=蘭,オーストリア=墺,スペイン=西,トルコ=土,カナダ=加,オーストラリア=豪,メキシコ=墨,フィリピン=比などがある.旧ソ連はカタカナの”ソ”表記が多かったが,戦前は”蘇”も使われていた.またロシアは昔は”露”だったが,ソ連崩壊後のロシアはカタカナの”ロ”表記されることが多い.

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