ヘンデルのメサイア
今日の「毎日モーツァルト」はモーツァルト編曲のオラトリオ・メサイアであった(オラトリオを日本語に訳すと聖譚劇なんだそうです).メサイアはバロック時代の有名な作曲家G. F. ヘンデルの代表作ともいえる名曲である.
ヘンデルは元々ドイツ人で,ハノーヴァー選帝侯の宮廷楽長をしていたが,オペラの作曲をやって活躍したいとロンドンに渡り,そのまま居ついてしまったという(選帝侯の許可を受けたのかは不明),なんとなくモーツァルトにも似ている人生を歩んだ人である(旅をしてあちこち走り回っていたのも似ている).ドイツ時代の上司だったハノーヴァー選帝侯が,後年イギリス国王ジョージ1世として海を渡ってイギリスにやって来た時は,ヘンデルもさぞ驚いたに違いない.この時,過去のいきさつから,国王との気まずい雰囲気があり,これを解消するために水上の音楽を作曲したという説があるが,これは事実ではないらしい.
ロンドンでのヘンデルの人生は浮き沈みが激しく,一時はオペラ劇場の経営に失敗して破産してしまう.こんな失意の時代に作曲され,大評判となり,ヘンデルの名を再び有名にしたのが,このオラトリオ・メサイアである.新約旧約両方の聖書の言葉から,主イエス誕生の預言から受難,復活までを劇的に描いた音楽劇である(第2部終曲のハレルヤ・コーラスはあまりにも有名).
この曲は当時から非常に人気が高く,同時代人であるJ. S. バッハのマタイ受難曲が,19世紀にメンデルスゾーンによって再演されるまで,人知れず埋もれていたのと対照的である.もっとも有名すぎたために,当時からヘンデル自身による多くの編曲版があって,いったいどれがオリジナル版なのかわからない状態になっているが‥‥(これはメサイアの人気が凄くて,ヘンデルも当時,各地の演奏に引っ張りだこだった.しかし,演奏場所によってオーケストラの人数や編成,歌い手の力量が異なる(ロンドンのような大都市ならフルオーケストラOKで,楽員の技量も問題ないが,地方では規模も小さく,また管楽器がいない,歌手が難しい曲は歌えないなど多くの制約がある)ため,オケ編成や場合によっては曲そのものが違ったいろんなバージョンがあるのだった.
モーツァルトが編曲したメサイアは,モーツァルト版として知られており楽譜やCD,DVDも出ている.DVDではヘルムート・リリング指揮のものがあり,なかなかいい演奏である.アマデウス・ブログ にも触れられているが,この編曲は18世紀末のテイストで書かれており,本来トランペットだったところがホルンになったり,弦が厚くなったりしている(初めて聴いたときは,「おお!魔笛だ」と思った私だった).
これがヘルムート・リリング指揮のモーツァルト版メサイアです.合唱曲の一部が四重唱になっているなど,ヘンデル版と比較するとなかなか楽しいです.
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