« ベルホヤンスクへの憧れ | トップページ | アーノンクールとヴィンシャーマン »

2006年10月30日 (月)

岩手の秘境駅4

 先週末薮川にそばを食べに行った折,ついでにと早坂峠を越えて反対側の岩泉まで足を伸ばした.

 岩泉町は総面積992k㎡と,実に大阪府全体(1894k㎡)の半分にもおよぶ広さを持った町である(本州で1番広い町らしい).もっとも総面積の94%が森林であり,人口は12000人余りに過ぎない(大阪府の人口が880万であるから,人口密度はなんと372分の1である).

 この町はまた,鍾乳洞を多く持つ町としても知られており,日本三大鍾乳洞のひとつ”龍泉洞”をはじめ,安家洞,氷渡洞などがある.また,岩手短角牛や牛乳,さらにはモンドセレクションで度々金賞を受賞しているという,名水”龍泉洞の水”や,その水を使った缶コーヒー,烏龍茶なども有名だ.

 町の中心部は,県内の主要地点からかなり離れていて,近くには高速道路や空港はないが,唯一の公共交通機関としてJR岩泉線がある.岩泉線は,盛岡から太平洋岸に向かうJR山田線の途中,茂市駅から分岐して北に伸びる,全長40kmの路線である.終点の岩泉駅から先には線路はなく,いわゆるどん詰まりの”盲腸線”である.1日の運行本数も全区間往復が3本,部分往復が1本と極めて少ない.起点となる茂市駅のある,JR山田線自体が屈指のローカル線であり,さらにその支線というわけで,いかに凄い路線であるかが良くわかる(ここに匹敵する盲腸線としては,昔北海道にあった美幸線,相生線であろうか).

 そういうわけであるから,当然かなりの赤字路線である.しかし,それでもなおこの路線が廃止されないのは,並行して走っている国道340号線が凄い山道(キック道)であり,道の狭さとカーブのきつさから,路線バスを運行できないからである.この岩泉線にあり,牛山隆信氏の”秘境駅へ行こう”でも,堂々の第4位に挙げられているのが,ここ押角駅である.

 押角駅の凄さは地図を見てもわからない.地図では岩泉線と国道340号線が並行して走っており,所々に集落もある.メイン国道沿いの駅はどう考えても秘境っぽくない.しか~し,この疑念は現地に行くと氷解する.地図で見るとメイン国道に見える340号線は,この区間(岩手大川-岩手和井内間)は幅員2~3m,急カーブと急勾配の連続するキック道なのである.そんな山道(いまにも熊が出てきそうな)のそばに,この押角駅は存在する.

Osikado7 山の中を縫うように走る国道340号線.これでは代替バスは運行できません.

Osikado4 刈屋川にかかる橋です.昔の写真ではもっとボロく,今にも崩れそうでしたが,改修されたのでしょうか?

Osikado1 見ての通り川の水はとても澄んでいます.

 国道から西に草むらの中を歩いていくと,刈屋川に出る.周囲は生活臭がまったくないため,川の水もとてもきれいだ.川にかかったボロイ橋を渡ると,対岸に短いホームが1本あるだけの駅が現れた.板のホーム上には駅舎はなく,時刻表などもフェンスに直接くくりつけられていた.地図を見ると秘境っぽくはないものの,実際に行ってみると,本当に山奥の秘境駅であることがよくわかる駅であった.

Osikado5 ホームに佇む私

Osikado3 フェンスに付けられた時刻表.1日3往復しかありません.

 ちなみに盛岡駅から山田線,岩泉線を直通する,”快速 秘境号”が時々運行されているようです.普段は普通列車にも無視される山田線の大志田,浅岸両駅や岩泉線の各線にのみ停車する凄い汽車です(途中,押角駅には20分くらい停車するようです).

Osikado2 昔のスイッチバック時代の名残の引込み線です.

|

« ベルホヤンスクへの憧れ | トップページ | アーノンクールとヴィンシャーマン »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 岩手の秘境駅4:

« ベルホヤンスクへの憧れ | トップページ | アーノンクールとヴィンシャーマン »