はなさかづき
先週末江戸表に出向いた最大の目的は5月のひの新選組まつりでお世話になったエル・プロダクツ(エルプロ)の公演を見に行くためであった.エルプロは主に時代ものを取り上げて活動している女性ばかりの劇団である.私は今年のひのパレで思いがけなくも六番隊隊長井上源三郎の役をやらせていただいたのだが(ひのパレのレポートについてはホームページの方にアップしてあります第9回ひの新選組まつり参戦記録),この時六番隊の隊士を務めていただいたのがエルプロの皆さんなのであった.パレードの合間に行われた殺陣のパフォーマンスも見事で,これは是非公演を見に行かなくてはと思っていた次第である.
今回の演目は”はなさかづき”,これは戊辰戦争における会津藩がテーマである.会津藩といえば幕末に京都守護職であった松平容保公の治める藩である.孝明天皇の信頼も厚く,最も勤皇でありながら戊辰戦争では朝敵の汚名を着せられた悲劇の藩として知られている.維新後も不毛の地”斗南”(今の下北半島)に移封され辛酸を舐めさせられている(最もこの斗南移封については,会津藩士自身が猪苗代と斗南のうち斗南を選択したともいわれている).そんな会津の戦いをテーマにした作品であった.
8月6日11時の公演を観に行くため東京は銀座へと向かう(山高シャッポにロイドめがねではなかったが…… って誰もわからないか 笑).会場は銀座みゆき館劇場という小さな劇場,最初に入った時はあまりにこじんまりとしていてちょっと驚いた.
さて,舞台である.物語は慶応4年1月の鳥羽伏見の戦いから9月の会津藩降伏までの出来事が演じられている.会津藩家老で,北越戦争に参加し鬼官兵衛と恐れられた佐川官兵衛とその側近,桜庭百太郎を中心とし,それに会津で小料理屋を営む結城孫八という無駄に男前な店主と,情報屋の田所一矢が絡む形で進んでいく.基本的には史実にそって話は進んでいくのだが,所々に創作やお笑いも交えていた.飯盛山での白虎隊自刃の場面では独自の解釈(城下の炎を城が燃えていると誤認して自刃したとされている部分を,まだ城は燃えていないことを知りつつ,帰還が困難であることを悟って魂となって城を守ろうと自刃したことにした)を出して白虎隊隊士の純粋さを高めるのに成功していたと思う.また会津の伝統芸能である彼岸獅子が所々に登場して演出効果を上げていた(彼岸獅子については,日光口の戦闘で大鳥圭介とともに善戦していた家老の山川大蔵が会津に帰還した際,鶴ヶ城が既に敵に包囲されていたため,彼岸獅子を舞って敵の目を欺いて入城したという話が有名である.このエピソードは昭和55年のNHK大河ドラマ”獅子の時代”でも描かれていたのを覚えている).役者もみな個性的で良かったと思う(特に佐川や山川のキャラクターが良かった).
とにかくあっという間の2時間であった.私は昔から涙腺が弱く,ちょっと感動するとすぐに涙が出てくるのだが(ハクション大魔王の最終回や赤毛のアンのマシューが死んだ回などは未だに涙なしでは見られない),今回も大いに感動した次第であった.
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コメント
この度は猛暑の中、遠方より起こし頂きまして有難うございました。
この感想を読んで皇帝の豊富な知識に驚きました。流石です隊長!
当方の芝居を楽しんで頂けたようでホッとしております。
また機会がありましたら是非ご来場下さい。
チラシは京都で撮影したと聞き及んでいますが・・・。
投稿: 蒼野 | 2006年8月11日 (金) 07:16
こちらこそ素晴らしい舞台をありがとうございました.気候よりも皆さんの舞台にかける熱意の方がよっぽど熱かったと思います.私たち東北の人間にとって会津戦争は,とても悲しい気分になるお話なのですが,今回の舞台を見て,こういう演出も素敵だなと感じています.なにより題材に入っていき易いですよね.江戸時代の日本人というのは実はかなり洒落っ気があったそうです.会津藩士だって,決して生真面目一辺倒ではなく,仲間内では冗談を言い合う場面だってあったでしょう(何せ彼らは5年も京都にいたのですから).
次回の公演も是非伺いたいと思います.
投稿: 管理人 | 2006年8月14日 (月) 16:13