岩手の秘境駅
今日も暑い.午前中にお墓参りに行って,実家で昼食をとってから帰ることにする.ただそのまま帰るのもツマラナイので,実家近くの秘境に寄ってみることにした.
数日前の記事にも書いたが,盛岡から北上山地を横断して宮古市に出る鉄道,JR山田線には俗に秘境駅と呼ばれる駅が存在する.秘境駅とは人家もほとんどなく,アクセスが困難な場所にある無人駅のことで,停車する列車も日に数本といったレベルであることが多い.山田線は地図で見ると判るが,盛岡市と川井村の境の区界駅から宮古寄りは国道106号線に沿って走っているが,区界よりも盛岡寄りでは国道を大きく迂回するように走っている(どうしてこんな経路になっているのかは不明).このため途中の大志田駅,浅岸駅は国道からも遠く,人家もほとんどない場所にひっそりと駅だけが存在するのであった.そして,この2駅こそが全国に誇る山田線の秘境駅である.今日はそのうち大志田駅を訪ねることにした.
(地図1)山田線の図.区界までは106号線とは別ルートになっている.
(地図2)大志田駅付近の地図.林道以外なにもありません.
大志田駅はなんと!1日に上下あわせて3本しか列車が停まらない(普通列車すら通過する,だから秘境駅なわけだが).列車で行くと下手をすると丸一日放置状態にされてしまうため,今回は車で行くことにした.国道455号線の外山というところから,大志田駅11kmの標識に従ってわき道に入っていく.道幅2~3mの未舗装の林道である.急勾配,急カーブの連続(いわゆるキック道)で,ところどころ土砂崩れを起こしている.本当にこの先に駅があるのか不安になるような道を走ること30分(こんな道路のため11kmの行程でも30分かかってしまうのだった.もちろん冬季は閉鎖になる),ついに大志田駅に到着した.
大志田駅は単線の線路(列車交換用の待避線はない)にホームが1本だけの構造で,ホーム上に待合室が付いている.この駅は国鉄時代は,当時でもめずらしいスイッチバック方式の駅で駅員も常駐していた.列車本数も今よりはずっと多く,1日に何本も停まっていた(母親の生まれ故郷が川井村なため,小学校時代には,夏休みになると毎年山田線で出かけていたものである).
(写真2)秘境大志田駅に佇む私
(写真3)大志田駅の発車時刻.なんと!下りは1日1本しかありません.
駅構内を見渡すと,ホームから浅岸側に本線からスイッチバック用の引込み線が錆びた状態で残っていた.たしか昔の駅はこの引込み線上にあったはずである.見ると昔の駅舎かと思われる建物が朽ち果てて残っていた.ホーム上で写真を撮ったりしていると,不意に警笛が,見ると盛岡方面から列車がやってくるではないか.顔に快速と書いてある.13時46分盛岡発の,宮古行き快速リアスであった.列車は排気ガスを撒き散らしながら,決して速くはない速度で通過して行った(この辺は勾配がきついため,ディーゼル車は喘ぎながら走っていくのだった.列車には結構乗客も乗っていて,ホームに立っている我々に手を振ってくる人もいた(こんなところで何しているんだろうと思ったかもしれない).
快速列車を見送った後,我々も駅を後にする.帰りは線路に沿った林道(こっちは舗装されている)を走って上米内駅に抜けた.
短い間ではあったが秘境気分を楽しめた探検であった.同行していたKに感想を聞くと,こんな近くに秘境があるとは思わなかったと感心していた.アフリカや南米だけが秘境ではなく,こんな身近(盛岡市内)にも秘境が隠されているのである.
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